道路構造物ジャーナルNET

橋長759m、有効幅員11.5mの鋼連続箱桁

愛知・岐阜県境の新濃尾大橋左岸の上部工架設が佳境

公開日:2022.09.02

 愛知県・岐阜県が共同で事業を進める新濃尾大橋(仮称)(橋長759m、有効幅員11.5mの5+4径間連続鋼箱桁(2BOX)橋)の架設が佳境を迎えている。同橋は愛知県と岐阜県をつなぐ新たな交通軸として木曽川渡河部に架けられているもので、交通混雑が著しい濃尾大橋の渋滞緩和を図るとともに、発生が危惧されている南海トラフ巨大地震に備えた広域的な防災ネットワークの形成からも重要な役割を担う。基礎及び下部工は、すべて完了し、上部工も左岸側(愛知県側、A2~P5間336m)の架設を進めている状況だ。P8~A2は2台の200t吊クレーンを用いたベント併用架設、P5~P8(鋼重約1,600t)は手延べ桁を用いた送出し架設で施工している。(井手迫瑞樹)

交通量は約1万台を想定
 濃尾大橋の渋滞を緩和すべく建設を進める

建設の経緯
 新濃尾大橋(仮称)は、木曽川上流にある県道大垣一宮線の濃尾大橋の渋滞が激しいことから、その緩和のために整備しているものだ。濃尾大橋は、愛知県一宮市と岐阜県の羽島市や大垣市を結ぶ主要地方道で交通量が多い。センサスでは旅行速度は最混雑時で10km/h程度。両市とも工場が多く立地していることや、両岸とも渡ったすぐのところに交差道路があるにもかかわらず、濃尾大橋には右折レーンがなく、右折車により直進車も進めず渋滞が発生している状況にある。交通量は約18,000台/日であるが、片側1車線であり、増える交通量をさばくには限界があった。
 一方、開通後の新濃尾大橋(仮称)の交通量は約10,000台/日を想定している。一宮市と羽島市間のバイパス機能が期待できる。また、岐阜羽島ICのアクセス性向上も期待される。


新濃尾大橋橋梁一般図(愛知県提供、以下注釈なきは同)

一部の橋脚で仮桟橋にはLIBRAを採用
 橋台部は鋼管杭、橋脚部はニューマチックケーソン

基礎工

 当地の地層は砂層が厚く、N値が最大で約30程度であった。支持層までの深さは河床からマイナス30m前後となっている。橋台部は鋼管杭(中掘、Φ1,000)を用い、橋脚部はニューマチックケーソンを採用している。鋼管杭基礎の長さは、A1が33.5m、A2が34.5m、ケーソン基礎の高さは22.5mから最大で30.0mに達する。橋脚高は概ね24~25mであり、ケーソンと併せての高さは50m前後となっている。


基礎の施工、仮桟橋はLIBRA工法を採用した


基礎及び橋脚の施工

 橋脚部は基本的に河川内での施工であるため渇水期のみしか施工できない。桟橋を用いた施工を採用しているが、規模が大きいため1渇水期では完成に至らない橋脚もあり、それらは2渇水期をかけての施工となった。そのため、「桟橋を1回解体して、翌年度の渇水期に再構築する必要があり、工程的には非常に厳しかった」(愛知県)。
渇水期が終わると仮桟橋を解体し、再構築する必要があるため、施工のしやすさや仮設の効率化を考慮して、2渇水期を要する一部の橋脚で仮桟橋にはLIBRAを採用した。
 ニューマチックケーソンの沈設深さは概ね水深40m程度となるため、土砂掘削は、深さによって無人施工と有人施工を使い分けた。

ひび割れ対策としてクラックセイバーを使用
 打継箇所の水密性向上のためCS-21Neoを塗布

橋脚・橋台工
 橋脚および橋台は現場打ちコンクリートを用いて施工した。
 規模が大きいため、確実な締固めを行うべく一本槍バイブレーターを使用し、脱型時のひび割れ防止のためシート養生による外気遮断やジェットヒーターを活用している。また、ひび割れ対策として、塗布型高性能収縮低減剤(クラックセイバー)を用い、さらに打継箇所の水密性を向上させるべく、コンクリート改質剤(CS-21Neo)を塗布、埋込型止水型枠保持剤(止水コンハイブリッド)も使用するなど工夫を重ねている。


橋脚の施工

出水期は仮桟橋を一旦撤去しなければならない

非出水期に再び施工を始める

橋脚の施工完了状況

橋台部の施工状況

止水コンの施工状況

クラックセイバーの塗布状況

CS-21 Neo の塗布状況


下部工施工状況写真(俯瞰)

河川内へのベントや桟橋は渇水期に限定
 支承設置、たわみ処理など架設を大きく工夫

架設工
 同橋は、橋長759m(岐阜県羽島市~愛知県一宮市)、有効幅員11.5mの5+4径間連続鋼箱桁(2BOX)橋だ。床版は合成床版で、今回は横河ブリッジのパワースラブを採用する。

上部工構造一般図(P5~A2)

 大河川である木曽川を渡河する橋梁であり、河川内へのベントや桟橋は渇水期に限定される。そのため、P8~A2に関しては、渇水期に高水敷に5基のベントを建てて、河川区域内に配置した200t吊クローラークレーンを用いてP8側から順に鋼桁ブロックの地組と架設を繰り返してA2側へ施工していった。最もA2寄りの部分について当初計画では、堤防斜面にベントを設置する計画であったが、ベント基礎部となるA2橋台前面護岸の撤去・復旧が渇水期内で完了できない。護岸に影響させず渇水期内で施工を行うため、A2側背面に200t吊オールテレーンクレーンを配置し河川内のクローラークレーンと同時架設した。架設方向は、P8側が固定、A2側が可動の支承条件であるためP8側から架設した。

P8~A2間の架設要領図


P8~A2の桁架設状況

P5~P8間の施工
 同径間を架設後は、P8~A2間桁上に軌条設備を配置し、軌条設備に設置した台車上に220tオールテレーンクレーンで桁を組み立てていった。最初に手延べ桁を地組みし、その背後に順次主桁をつなげていき、送り出していく。送り出しの推進力は台車に設置した500kNレールクランプジャッキと両端クレビスジャッキ(押し500kN、1,000mmストローク)とし、各橋脚上は2,000kN~3,000kNの送り装置を1主桁に2基設置した。P8~A2は桁上、A2背面は地上に軌条設備を設置しており、地盤条件が異なる。そのため各ジャッキ反力は操作室で集中管理した。
 台車反力は、P8~A2の桁のたわみの影響を受け、送出しの進捗に合わせて、その都度変化することから、その進捗に合わせた桁のたわみを解析し、出てきたたわみを台車の強制変位として入力することで送出しの台車反力を算出した。


台車設備(井手迫瑞樹撮影)


クレビスジャッキ

 手延べ桁は、架設時、先端に発生するたわみを処理するための両端クレビスジャッキを取り付けた。G1桁、G2桁にある手延べ桁は左右独立したセパレート式とした。河川内の橋脚(P6、P5)は手延べ桁到達後、送出し設備組立前に支承を据付ける必要がある。支承は、吊天秤にぶら下げる形で準備し、主桁先端に配置したトラベラークレーンでG1桁、G2桁間を吊り下ろした。手延べ桁下部で吊天秤を回転させ、セパレートになっている手延べ桁左右下部に配置した支承運搬台車で吊りなおし運搬することで橋脚上に据付けた。また、たわみ処理に使用した両端クレビスジャッキは送出しの台車で使用したものと同じ仕様で、最大3.5mのたわみ処理を行っている。


(左)側径間(P8~A2)架設完了/(中)側径間(P8~A2)軌条設備組立完了/(右)第1回送出し完了

(左)第2回送出し完了/(中)P7橋脚到達/(右)P6橋脚到達
(左)P5橋脚到達/(右)手延べ機撤去


支承設置状況① 支承を吊り上げて設置個所まで運ぶ

支承設置状況② 支承を回転させて縦にして桁間を通す

支承設置状況③ 下まで降ろしたら再度支承を所定の方向に戻して設置
支承設置状況④ 上沓も運び合わせている状況

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