道路構造物ジャーナルNET

ロードジッパーを用いて上下線合わせて4車線を確保しながら施工

NEXCO西日本 中国池田IC~宝塚IC間の大規模更新現場に着手

公開日:2022.01.19

既設桁の切断は乾式ワイヤーソーを使用
 床版防水 グレードⅡ基本も一部区間で改質グース採用も検討

 横梁の設置が完了した箇所から、中空床版の切断・撤去および鋼鈑桁、PCaPC床版の架設工が順次施工されていった。中空床版桁の撤去に当たっては、まず支保工および足場を設置した上で施工する。
上部工基本施工ステップおよびPCaPC床版の架設ステップ

桁架け替え施工イメージ(橋脚部横梁設置含む)

 今次は上下線の中央部を規制して施工するもので、中空床版桁のうち約10.8m幅を橋軸直角方向約2m×橋軸方向4~7mずつ切断して撤去する。撤去サイズは25tトラックで運べる重量になるよう配慮した。切断は、乾式ワイヤーソーを採用し、水養生や漏水による桁下への悪影響を避けた。850mmの桁を効率よく切断するため、切断箇所はボイド部分になるよう工夫している。中空床版桁撤去後は、支承を据え付け、鋼鈑桁(今回は5主桁のうち2主桁)を設置し、PCaPC床版を配置(さらに2期、3基施工ではPCa壁高欄(一般部はケイコン製PGF壁高欄、荒牧高架橋の遮音壁高さ4m区間は三井住友建設製EQ-Wallをそれぞれ使用)を設置)する作業を一定のブロック長ごとに繰り返していった。床版および桁の撤去・架設は、基本220tトラッククレーン2台を用いて桁取替え対象区間の真ん中から両サイドに開く形で施工を進めていった。

既設中空床版部の乾式ワイヤーソーによる切断と撤去状況


桁架設状況

床版架設状況


引いてみると中空床版のボイド部で切断されていることがわかる/横梁上の主桁配置箇所に支承が設置されていることがわかる
(井手迫瑞樹撮影)

 PCaPC床版の間詰部は、橋軸直角方向および橋軸方向とのループ継手を採用している。型枠を省略するため、ループ継手部はあご付きとした。なお、PC床版と既設中空床版桁の間に当面生じる縦目地については継ぎ目部上面に鋼板を設置して、両サイドをあと施工アンカーで止めることで対応する。PCaPC床版を全体に配置した後は、高性能床版防水(ニチレキ)を設置し、基層及び高機能舗装を施工し、完成となる。

床版の間詰コンクリート打設状況


PCaPC床版架設完了後の床版防水および舗装施工状況

 床版防水の施工面積は、全体で77,000㎡に達する。床版増厚などで、床版厚が原設計より厚くなっている区間も多く、そうした箇所では舗装厚が薄くなっている個所もある(50mm程度)ため、そうした箇所では現行通り高性能床版防水いわゆるグレードⅡで施工するが一部の区間で改質グースアスファルト防水を施工することを検討している。今次の施工は、ほぼ高性能床版防水でニチレキ製の『HQハイブレンAU』を採用した。

川西高架橋 支点部を連続化、下フランジ幅を広げて断面性能を確保
 空港間近は自走式床版取替機「Sphinx」をカスタマイズした機械を使用

 さて、川西高架橋(橋長643m、4径間連結合成鈑桁×7連+2径間連続非合成鈑桁+3径間連続非合成鈑桁)など単純合成鈑桁部(径間長は18m前後)では既設RC床版部のPCaPC床版への取替えと連結部の連続化を行う。合成鈑桁部では、馬蹄型ジベルなど既設桁と床版の切断が非常に難しい構造も予想されるが、幸いなことに同区間の桁と床版間はスタッドジベルによって施工されており、切断は比較的容易に施工することが可能なようだ。合成桁を撤去する場合は、既設桁の補強が必要であるが、その内容については稿を別にするとして、桁端部については支保工を設置して、支点(橋脚上)から左右に2mの部分を切断し、現行の鈑桁と同じ高さ(900mm)のビルドHの桁を架設、高力ボルトで締めて連続化する。脚上の支承点は2か所から1か所に代わるが、その分、沓にかかる荷重も大きくなるため、下フランジの幅を広げるなどして断面性能を確保した。連続化することで支間中央付近の曲げモーメントの低減も期待できる。ただし、固定脚部では既設の支承高に新設する支承高が収まらないため、一部の下フランジを切り欠き100mm程度桁高を変化させることで対応した。
合成鈑桁部連続化概要図

 桁の切断の際、既設塗膜の成分によっては、接合部塗膜の先行除去が必要となる。同橋梁ではPCBの含有は認められなかったが、鉛分の含有は確認された。本工事では鋼桁の塗装塗替えも併せて実施予定である。

 床版取替については、川西高架橋は特殊な事情を有する。伊丹空港が間近にあるため30mの高さ制限があり、クレーンでの施工が困難という点だ。そのため、IHIインフラシステムが開発し、中日本高速道路の床版更新の現場で実績も有する自走式床版取替機「Sphinx」を川西高架橋の現場にカスタマイズした機械を用いて、高さ制限を回避する形で床版の撤去・架設を行う方針である。

自走式床版取替機「Sphinx」(井手迫瑞樹撮影)

 元請は横河ブリッジ・三井住友建設・IHIインフラシステム・奥村組・横河NSエンジニアリングJV。以下、一次下請けは橋脚横梁WJ工がフタミ、ティ・ビー・シー・ダイヤモンド、コンクリートコーリング、光明工事。既設ワイヤーソーがナガタ工業、ティ・ビー・シー・ダイヤモンド、光明工事、コンクリートコーリング。橋脚横梁コンクリート工がオカモト・コンストラクション・システム、ササイナカムラ、江川工業。支保工・既設床版撤去・鋼桁架設・PCa床版敷設がミック、西和工務店、スガナミ、野田クレーン。床版防水・舗装がNIPPO、日本道路。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム