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ロードジッパーを用いて上下線合わせて4車線を確保しながら施工

NEXCO西日本 中国池田IC~宝塚IC間の大規模更新現場に着手

公開日:2022.01.19

 NEXCO西日本は、2021年8月23日から中国池田IC~宝塚IC間について交通混雑期を避け、約3年間の終日車線規制下で施工する大規模リニューアル工事を行っている。同区間4.9kmで対象となるのは、本線橋10橋とランプ橋1橋だが、昨秋のシーズン(~2021年12月中旬)は、安倉高架橋P9~P12、荒牧高架橋P5~P10、P21~P26、P36~P41のRC連続中空床版桁の鋼鈑桁への取替(約300m)施工を行った。同区間は新名神開通前(平成29年度)は9万4千台で大型車混入率は32%、新名神開通後も依然、7万3千台で同28%の交通量(令和元年度)を誇る。一方で池田IC~宝塚IC間は上下6車線あるため、ロードジッパーを用いて上下線合わせて4車線を確保しながら上下線の中分側の幅員約11m部分を施工する。ロードジッパーの仮設防護柵の初期配置はユニックを用いて約1か月かけて約1万個(1日約400個設置するペース)を設置した(西日本高速道路メンテナンス関西が施工)。なお、お盆や正月、GWなどの繁忙期は、6車線に戻し、施工を一旦中止する。施工は2024年度上半期までの長丁場となる。

ロードジッパーによる配置

仮設防護柵は1kmに渡って設置されている(井手迫瑞樹撮影)

終日車線規制を行うが4車線は確保する

施工予定箇所及び延長

RC中空床版橋 ボイドの浮き上がりによる床版上面の陥没など損傷発生
 単純合成鈑桁橋 桁がつながっていない支点上でひび割れ

 同区間は1970年7月23日に供用され、50年以上が経過している。同区間の橋梁は主にRC中空床版桁と、コンクリート床版が連結された鋼単純合成鈑桁構造である。RC中空床版橋は、ボイドの浮き上がりによる床版上面の陥没や舗装補修時における床版上面の切削による損傷、ボイド内への凍結防止剤の漏水浸透により、床版下面の鉄筋腐食・剥離による損傷、同様の漏水による張出床版下面の鉄筋腐食・剥離、桁掛け違い部の漏水による桁端部の鉄筋腐食・剥離が生じている。

中空床版桁の損傷状況(NEXCO西日本提供、以下注釈なきは同)
 鋼単純合成鈑桁部は川西高架橋などが該当する。基本的に単純合成鈑桁×4連構造で、川西高架橋ではこれが7連ほどある。既設の主桁は大型ロールH形鋼(桁高900mm)の鋼材を用いている。正曲げに対しては断面力が余っているが、支点上は桁がつながっておらず上フランジを添接板で連結し床版を連続化している構造であるため、負曲げに対して抵抗できず、ひび割れが生じ、走行安全性の面はもちろん、ひび割れから生じた漏水により桁端部の劣化を招いていた。


単純合成鈑桁部の損傷状況

中空床版桁→鈑桁への取替 下部工を改良し、桁や支承が入る空間を確保
 橋脚のはつりこみはチッパーとWJ用いる はつり量は500㎥に及ぶ

 さて、今回は主となる工事はRC中空床版桁の取替である。既設中空床版桁を鋼鈑桁に取り替えるものであるが、既設桁の桁高が850mmであるのに対して新設鋼鈑桁の桁高は1200mmとなるため現行の沓座位置では高さがとても足りない。そのため上部工の架替えを行う前に、下部工を改良する必要が生じた。

3柱式RC橋脚に横梁を設置する必要がある

横梁の設置概要図と施工の流れ

 同現場の中空床版部の橋脚は、基本的に3柱式橋脚となっている。橋脚は過年度にRC巻立てで耐震補強がなされており、今回は、巻き立て補強分をはつりこんだうえで、1200mmの桁高および支承高を確保した高さ位置の橋脚間および両端の橋脚に一部張り出す形でPRC製の横梁を配置する。横梁の高さは1200mm、厚さは既存橋脚の厚さに合わせて1700~1950mmとなる。PRCにしたのは、鉄筋量を減らし、過密配筋と橋脚への削孔数を減らし、既設橋脚への影響を最小限にするためだ。PC鋼材の定着部はRC橋脚本体と巻き立て直した鉄筋の中間に配置しており、橋脚に突起部などを設けることはなかった。
 橋脚のはつりこみはチッパーとWJを用いた。対象橋脚は上下線合わせて106か所、はつり量は実に500㎥に及ぶ。水の総使用量は実に4万tに達した。水圧は240MPaに設定した。こうした膨大な量を施工するため、WJはフタミ、コンクリートコーリング、光明工事、ティ・ビー・シー・ダイヤモンドの4社に割り振り、より多くの機械式WJを確保した。チッパーで70mm厚はつりこんで鉄筋を出した後、さらに180mmの厚さを3次元(XYZ)にはつることのできる機械式のWJを採用して施工した。
 中でも、フタミが担当した安倉高架橋は人家に非常に隣接しており、施工箇所のほど近くに営業している会社もある。そのためWJの騒音対策にはさらに留意を必要とした。具体的には、防音材や吸音材を二重・三重に配置すると共に、当初は55l/minのところを同45l/minに水量を落として施工した。これにより大きく騒音レベルを落とすことができた。ただし、水量を落とすことによるはつり力の低下により、工期を他の工区より3割程度余分に必要とした。

 その上で、橋脚間に横梁の配筋を行い、型枠を設置、コンクリートを打設して脱型後、PC鋼材(SWPR7BL 12S 12.7mm)を12本挿入して緊張した。橋脚のはつりおよび横梁の設置は今年の3月から開始し11月末に完了した。横梁はPRC構造にしたことでRCと比較して鉄筋量を約半分に減らすことができた。なお、横梁上の支承位置には据え付け用のアンカーボルトをあらかじめ設置しており、交通規制時の上部工施工が楽になるよう工夫している。



チッパーおよびWJで橋脚をはつりこんでいく

横梁の鉄筋型枠の組立て状況/同打設状況

両端からPCで横締めしてPRC構造にする

横梁の設置が完了した状況

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