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中分に仮設RC床版を配置し3車線確保、ロードジッパーで朝夕車線を変動

NEXCO東日本 北陸道 栄橋・貝喰川橋の床版取替工

公開日:2021.09.08

床版取替 両橋梁とも2台のクレーンを使って中央から両端へ施工
 貝喰川橋 馬蹄型ジベルはコの字プレート部分を残し上部は水平切断

床版取替・プレキャスト壁高欄・高性能床版防水
 床版取替は両橋とも、工期を考慮して新床版の受け入れおよび撤去する既設床版の搬入をA1、A2両側から行う必要があるため120tクレーン2台を使用しての中央から両端へ同時施工する形で進めていった。床版取替の面積は栄橋が上下線合わせて8,395㎡、貝喰川橋が同3,557㎡に及ぶ。
さて、施工を完了した下り線(中分側の一部除く部分)について、栄橋は、185枚(1枚当たり橋軸2,000mm×橋軸直角9,400mm、重量9.8t)に分けて既設床版を撤去し、プレキャストPC床版を178枚(1枚当たり1,650mm×9,300mm、端部は地覆立ち上がり50mmまで一体施工、9t)に分けて設置していく。床版同士の継手構造はオーソドックスなループ継手(継手幅280mm)を用いた。プレキャストPC床版、間詰め部とも設計強度は50N/㎟としている。

両側にクレーンを配置し、撤去・架設していった/プレキャストPC床版概要

クレーン配置状況(井手迫瑞樹撮影)

 従来の既設床版撤去は既設床版の幅員中間部をロードカッターにより切断して撤去するが、本工事では両橋とも壁高欄をロードカッターで切断撤去することにより、既設床版は1枚でセンターホールジャッキを用いて引き剥がし、撤去する。次いで、上フランジ上面に残ったコンクリートおよび鉄筋を処理し、鋼材上面をケレンし、塗装を施したうえで、ソールスポンジを設置し、プレキャストPC床版を架設する。その後はスタッドを設置してモルタルを打設して桁と床版を一体化する。次いで壁高欄を設置するが、施工日数の短縮を図るためプレキャストRC壁高欄であるDAK式壁高欄を採用している。壁高欄の設置間隔はパネル2枚分(約4m)とした。壁高欄を設置後は、継手部の配筋・型枠を行い、間詰めコンクリートを打設し、最後に地覆と壁高欄間のグラウトを施工した。

栄橋の床版取替施工フロー① 舗装の撤去/センターホールジャッキによる引きはがし/既設床版の撤去

同② 新設床版の架設/プレキャスト壁高欄(DAK)の設置/床版防水工の施工①


同③ 床版防水工の施工②/舗装の施工/縦継ぎ目部のMMジョイントの施工

 貝喰川橋は76枚(1枚当たり橋軸2,000mm×橋軸直角9,300mm、重量9.7t)に分けて既設床版を撤去し、プレキャストPC床版を68枚(1枚当たり1,670mm×9,300mm、端部は地覆立ち上がり50mmまで一体施工、8.9t)に分けて設置していく。基本的には、栄橋と同様の手法をとるが、両側径間の既設合成桁部は、中分撤去時と同様、馬蹄型ジベルがある。そのため、ワイヤーソーで鋼桁(中分側を除く3主桁)直上の馬蹄型ジベルのうち、コの字プレートの直上部分をはねるように水平切断して桁との縁を切り、クレーンで撤去した後、残コンをブレーカーで斫り、さらにコの字プレートを溶断した。

貝喰川橋の床版取替施工フロー① 舗装の撤去/MMジョイントの撤去/既設床版撤去

同② 床版の架設/プレキャスト壁高欄(DAK)の施工

同③ 床版防水工の施工

同④ MMジョイントの施工および舗装工


 ワイヤーソーは朝7時から動かし、切終わるのが13、14時という状況であり、その後に残コンの斫り以降を施工するなど、「合成桁部については作業開始から夕方まで撤去に要した」(鉄建建設)ため、撤去・架設に1週間から10日を必要とした(非合成桁部に比べて支間長を考慮すると約半分に施工効率が落ちる)。
 8月下旬から上り線の床版取替(中分側除く)が始まるが、内容は下り線とほぼ同じとなる。次いで来春に拡幅している中分部の仮設RC床版を取り外し、橋軸 1,650(栄橋)ないし1,670mm(貝喰川橋)×直角 1,600mm、(1.63t、1.6t)のパネルを配置していき、既に架設しているプレキャストPC床版と横締めPC鋼材で緊張して一体化させる。次いで新たに架設した床版間を間詰めし、中分側のプレキャスト壁高欄の設置を行っていく。床版及び壁高欄の施工が完了した後に、横つなぎ材など桁下に設置した仮設鋼材を撤去する。
 高性能床版防水(本工事ではレジテクトGS-M工法を採用)や舗装は、中分まで全て床版取替を完了した後に行うのではなく、その都度施工している。継ぎ目部を丁寧に仕上げることによって対応する方針だ。

間詰め部 ひび割れ抑制に膨張剤を使用
 短い工期内で厳しい内容を施工

防食
 高欄・床版とも継手部分のみエポキシ樹脂塗装鉄筋を採用している。間詰め部のコンクリート及び現場打ちコンクリートは骨材径20mm、スランプ21cmを使用し、膨張材(デンカパワーCSA-S)を25㎏/㎥投入し、ひび割れの抑制、水密性の向上など耐久性強化を図っている。壁高欄は既に記している通り現場打ちではなく、実績が多いDAK式プレキャストRC壁高欄を採用、工期短縮だけでなく耐久性向上も期待している。

DAK式プレキャスト壁高欄の施工

 現在は両橋とも上り線側の既設床版撤去と新設プレキャストPC床版の架設を行っている。床版工事以外では、塗替塗装(約 9,850㎡)、高力ボルトの取替(F11T→S10T)約 26t(貝喰川橋)、支承取替(72 基(栄橋) 52 基(貝喰川橋))、などを合わせて行っていく。
 貝喰川橋の塗膜成分は鉛4.9~5.5%、クロム0.17~0.50%、PCB含有量0.10~0.81mg/kg、コールタール5.3%となっており、塗膜剥離剤などを使用した上で、ブラストを行い素地調整した上で塗り替える。塗膜厚は未測定のため現時点では不明であり、来年度に予定している塗替塗装実施時に測定を行う。

鉄建建設 栄橋作業所長 村田 浩平氏
「当社初の大規模施工ということもあり、今までの施工事例や他社も含めて様々な方から情報を収集し、それを基に想定して、NEXCOと相談しながら、工程ごとの設計や施工を行っているが、この厳しい内容を本当にこの短期間で施工ができるか? というプレッシャーは常に感じている。各工程とも走り出して4、5日でようやく段取りがスムーズになっていく。想定の範囲内に収まらない課題も実際にあったが、試行錯誤しながら何とか期日内に次の段階へ行くことが現状ではできている。今回は離れた2橋を施工している。そのため、目が必ずしも行き届かず、すぐ把握できない延長というのは、非常にプレッシャーを感じている。初施工、中央に仮設RC床版を設置する3断面施工、ロードジッパーの活用、既設合成桁の床版撤去など技術的な側面で苦労することは多々あるが、何とか今後もこなしていきたいと考えている」。

ロードジッパーの活用状況(井手迫瑞樹撮影)

 元請は鉄建。一次下請は架設工事佐々木組、鮎活(以上、床版取替工)、宮地エンジニアリング(支承取替工)、世紀東急工業(床版防水、舗装)、レックス(交通安全施設工)、青木重起、城西運輸機工、青木機工建設(クレーン工)、五十嵐建材(構造物撤去工)、テクノジェット(構造物撤去工)、北日本水研(床版補強工、床版防水工)など。二次下請は第一カッター興業、コンクリートコーリング(東京)(床版撤去工)など。

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