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斜角が小さい端部は4枚のプレキャストPC床版を縦割りで配置

NEXCO西日本 中国道志路原川橋・壬生橋で床版取替

公開日:2021.08.24

WJは4社に施工を依頼
 中空床版橋の床版部の一部を連続構造に変更

補修エリア
 両橋の中空床版橋(志路原川橋A1側45m+A2側20.6m×2、壬生橋114.5m)および、壬生橋上り線の鋼鈑桁部(85m)、PCT桁部(19.2m)は高欄・床版とも断面修復を行った。また、壬生橋のP4(4+3径間連続中空床版橋の掛け違い部)は、伸縮装置からの漏水を原因とする劣化が桁端部、支承部、橋座部において著しい状態であった。そのため、中空床版橋の床版部を活荷重+温度による応力に対して抵抗できる補強を行って連続構造に変更し、ジョイントを無くして走行性、維持管理性の向上を図ることにした。


床版連結部のWJ施工状況

 斫り工は主にWJを用いているが、施工範囲が広いため、4社に施工を依頼した。
 鈑桁RC床版およびRC中空床版の上面は佐藤渡辺が担当し、コリジョンジェット(水圧225MPa、75l/min)で斫って断面修復した。コリジョンジェットを用いたのは、床版上面のコンクリートがぜい弱化していることが予想されるため、斫り深さを一定に保ちたいためだ。斫り深さは80mmで、鉄筋の裏側まで断面修復材が回ることを想定している。

コリジョンジェットを用いて斫った(佐藤渡辺施工)


WJで斫った後の床版断面。撮影日は豪雨だった(井手迫瑞樹撮影)

その後の床版断面修復状況

 今回、床版を連結する部分および中空床版桁下面、張出床版下面と壬生橋壁高欄内側、橋脚梁部の斫りはケミカル工事が担当し、施工している。斫り厚は最大で100~80mmに達する。中空床版部は桁高950mm、張出床版は根元が400mmで先端が200mm程度である。


橋脚梁部のWJ施工(いずれもケミカル工事施工)

 志路原川橋の壁高欄内側の劣化部の斫りと伸縮装置を撤去する際の斫りはコンクリートコーリング(大阪)が担当している。


上段:壁高欄内側のWJによる施工状況、下段:伸縮装置部のWJによる施工状況
(いずれもコンクリートコーリング施工)

 加えて、床版取替・補修と並行して行われている支承取替の際のWJの斫り込みは、ARTS KUNOが作業を行う予定だ。
 床版補修の断面修復は志路原川橋下り線中空床版部で全面積の約26%、壬生橋上り線で同14%、同下り線は10%で、全面積に占める割合は14%となっている。

塩ビ製L字型枠 ノロ止めと、型枠を合わせた機能を有するL型形状の型枠
 スーパー排水桝 FRPの排水桝をKKフォームを使ってプレキャスト化

施工上の工夫
①塩ビ製L字型枠
 床版設置の翌日、無収縮モルタルを打設し、床版と上フランジを一体化させるが、その時に使っているのが塩ビアングル枠と呼ばれる型枠だ。
同型枠はノロ止めと、型枠を合わせたような機能を有している型枠で、L型形状となっており、1面をフランジ側面に、1面をPCaPC床版下面に合わせてインサートで固定することで、全面に渡って型枠を通している。型枠には特殊な止水膨張テープを貼り付けており、ノロの漏出を止めている。間詰コンクリート部には木製の型枠を作り、同所からの溢出によりモルタルの充填を確認する。型枠は何度も転用できるため、廃材がなく環境にも優しい型枠材といえる。

塩ビ型L字型枠の設置

②スーパー排水桝の採用
 スーパー排水桝は、従来のFRPの排水桝をKKフォーム(コンクリート埋設型枠)を使ってプレキャスト化している排水桝である。
 床版取替工事の際には既設床版における排水桝の付近が、土砂化していることが見られる。排水桝は路肩にあり車が載ることはない。しかし床版と排水桝の高さに若干のギャップが生じることがあり、排水桝の縁に水が溜まって、それが呑み込めずに、凍結融解のもとになり損傷が激しくなっていったことが考えられる。それを防ぐには表面に出ている排水桝の縁を上に出してしまうことをやめて、埋めてしまおうというのがスーパー排水桝の発想の原点だ。

スーパー排水桝 FRPの排水桝をKKフォーム(コンクリート埋設型枠)を使ってプレキャスト化(井手迫瑞樹撮影)

 ところが、現在のFRPの排水桝では、部材が薄くて柔らかいため自立せず、コンクリートを打設したら倒れてしまう。コンクリートを打設しても変形しないようKKフォーム(埋設型枠)を使って、プレキャストとして最初からある程度固めて製作して置き自立させるようにし、その上にコンクリートを打設するようにした。床版上面に排水桝との境界が全く出ていないのがみそ。FRPの周りには珪砂をつけている。KKフォームで固めているのは上の部分のみで、下は珪砂を付着させ、FRPと後打ちコンクリートと一体化しやすいようにしている。
 この排水桝の開発に当たっては、川田建設の那須工場で実際にPC版を作り、従来品とスーパー排水桝の施工性及び耐久性を比較する実験も行っている。従来品は裏側から水が回って、漏水が生じるのに比べ、スーパー排水桝は施工後4カ月経過しても全くそうした漏水が生じなかった。

 面白い性状も見られた。従来品は隅角から乾燥収縮クラックが生じることが多いが、スーパー排水桝はそうした個所からクラックが出ていなかった。「クラックの原因は、プレストレス導入とコンクリートの収縮効果によるものであり、従来品はFRPがつっかえ棒のような形になって、コンクリートが縮まろうとしているのを邪魔し、角部からクラックが出る。しかし今回は、上は床版そのもの、下はモルタルであり、温度による挙動は上のコンクリートと一緒であるため、一緒に縮まるためクラックが出にくくなった」(川田建設)と考えられる。床版防水工も排水桝周りがネックになることが多いが、今回は床版上面、コンクリートで変わらないため、スムースに床版防水工を施すことが出来、境界面からの水の浸入を防ぐことが出来る。
 プレキャスト床版はスーパー排水桝を最初から想定した形で製作しており、本現場では全パネルでスーパー排水桝を使っている。

既設塗膜除去にネオハクリ工法を採用
 既存鋼製支承を新たなBP-B支承に取替、単純PCT桁上のみ機能分離支承を採用

今後の施工
 同橋では、床版の取替・補修と同時に耐震補強および支承取替工事も実施している。

支承取替の準備工(井手迫瑞樹撮影)

 耐震補強は落橋防止構造の設置、横変位拘束構造および段差防止構造の設置を行う。
 支承は基本的に既存鋼製支承を新たなBP-B支承に取替えるが、単純PCT桁上のみ機能分離支承を採用する予定だ。
 塗替え塗装は部分的に550㎡を施工する予定で、一部鋼材補修箇所において、塗膜剥離を行っている(ネオハクリ工法)。

塗膜剥離状況。ネオハクリ工法を採用した

 また、志路原川橋・壬生橋下り線の床版取替・補修については、来年度の同時期に施工する。

 一次下請は、大誠工業建設(床版架設)、吉村(クレーン)、コンクリートコーリング(カッター、WJ)、佐藤渡辺(防水・舗装、う回路、WJ)、ケミカル工事(床版補修・WJ)、月形(支承取替)。

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