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落橋防止機能付き粘性ダンパーとダイス・ロッド式摩擦ダンパーを設置

首都高速道路 11号台場線 ロッキング橋脚を有する橋梁の耐震補強工事

公開日:2021.05.27

橋梁下の街路では約40社の工事が輻輳して規制調整に苦労
 クレーンが使えず、足場床に開口部をつくって部材を荷揚げ

 本工事で大きな課題となったのは、足場の組立・解体や補強部材などの荷揚げ・荷下しだ。橋梁下の都道316号線(海岸通り)は、日中は交通量が多いことから夜間規制での作業となるが、下水道やガス、電気など約40社の工事が輻輳し、規制の競合が非常に多く、「(他企業と規制)調整をして工期を厳守していくことに苦労している」(元請の横河ブリッジ)という。


橋梁下の海岸通りと夜間規制状況(左写真:大柴功治撮影、以下=*)

 桁下空間も街路上から桁まで高さ5.5m(足場下までは4.8m)と低く、吊足場や既設構造物などが支障となってクレーンでの荷揚げ作業は不可能だった。そこで、足場内部に電動チェーンブロックやホイストを用いた吊上げ設備を組立て、足場の床に開口部を設けてワイヤーで、ダンパーや支承などの部材を吊上げていった。部材の足場内での横移動をできる限り避けるために取付け位置で吊上げをしなければならず、足場もその都度組み直しを行っている。


足場内の吊上げ設備

粘性ダンパー(左)と摩擦ダンパー(右)の荷揚げ作業

支承の荷揚げ作業

 海岸通りの夜間規制に加えて、台-44橋脚の足場組立と粘性ダンパー搬入時には1号羽田線の夜間規制も実施した。これは11号台場線(上り)が1号羽田線の上空にある2層構造となっており、海岸通りからの荷揚げが不可能だったためだ。


1号羽田線からの荷揚げ作業

 資材ヤードは高架下に確保できず、現場から約500m離れた埠頭のなかの民間地を借用した。このような条件下で、「遅滞なく部材を搬入、荷揚げするために社内で会議を行い、情報を共有しながら、メーカーと一緒に取り組んだ」(同)という。

ダンパーはブラケットを付けた状態で1夜間に1基荷揚げ
 ロッキング橋脚の転倒防止装置の施工では「VFORM」を活用

 吊足場はSKパネルを、昇降足場は歩道の幅員が狭いためクサビ式を採用した。昇降足場の外囲いは景観に配慮して白色のプラットウォールとして、一部を透明板にして歩行者と作業員の安全性を確保している。


昇降足場は景観と安全性に配慮した(*)

 粘性ダンパーと摩擦ダンパーは、両側のブラケットを一体化した状態で1夜間に1基の荷揚げを行った。これはブラケットを付けていないとダンパーに角度がついてしまい、取付けが困難になるためだ。所定位置に設置後、ジャッキで調整を行い、高力ボルトでブラケットを固定した。


粘性ダンパー(左)と摩擦ダンパーの設置状況

粘性ダンパー(左)と摩擦ダンパー(右)施工完了(*)

 ロッキング橋脚の転倒防止装置は、4つのブロックからなる鋼板をピポッド支承のまわりを囲うよう設置する構造で、19柱ある橋脚上部と下部に1基ずつ全38基を設置している。ピポッド支承の既設リングプレートを増厚したリングプレートに交換後、橋脚下部側はアンカーで転倒防止装置を定着し、橋脚上部側は横梁に設置した。


転倒防止装置施工前/増厚リングプレートの取付け(中写真:上部/左写真:下部)

アンカー定着のための橋脚下部の削孔/下部側の転倒防止装置の施工完了(*)

上部側の転倒防止装置と設置が完了したロッキング橋脚(*)

 橋脚によりアンカーボルトの設計位置と実際の削孔位置が異なるため、横河技術情報の写真計測・図化システム「VFORM」を活用した。同システムは、削孔位置に計測用ターゲットを設置してデジタルカメラで撮影すれば、その場でCAD画面が出力されるもので、従来の手作業と比べて計測・作図などの作業を大幅に短縮できることが特徴で、本工事では部材製作時にもVFORMのデータを反映させている。


「VFORM」の活用。ターゲットを設置してカメラで撮影/VFORMの出力図

 また、19柱のうち、中央分離帯にある台-43橋脚のみはダンパー設置後も上揚力を抑制しきれなかったため、橋脚下部側の支承台座と橋脚横梁をPCケーブル(外径61.6mm×全長4,013mm、引張荷重1,680kN)で連結して、上揚力対策を施した。


台-43橋脚の上揚力対策

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