道路構造物ジャーナルNET

門型油圧リフターで床版を上下に移動

NEXCO中日本 東名高速富沢第二橋更新工事で全断面床版架設機を採用

公開日:2021.01.29

標準目地幅は10mm ミリ単位で架設機の油圧リフターを操作
 撤去・架設枚数は1日に3枚 作業完了後に床版架設機をレールで移動

 床版架設機での架設は、まず床版を搭載したトレーラーが架設機内に進入。梁に設置された吊り金具に玉掛けをしてリフターで床版をせり上げた後、トレーラーが退出する。玉掛けは吊り金具側のフックを床版側のアンカーに掛ける方法で、8点支持とした。吊り金具で床版を橋軸方向に移動し、架設位置手前で90度回転させている。


架設状況(大柴功治撮影。以下=※)

 標準目地幅は10mmでシースの仕口合わせも行うことから、床版を所定位置に収める際には慎重な作業が要求された。1.3%の縦断勾配調整と2.0%の横断勾配調整を行いながら徐々に床版を下げていき、桁に床版が均等にタッチできることを確認したうえで架設済み床版側へと引き寄せている。橋軸直角方向の位置調整は吊り金具で左右それぞれ最大30cm可能となっており、架設機のリフターをミリ単位で上下左右に操作するとともに、レバーブロックを用いて人力での微調整を行った。
 シースの仕口を合わせた後は、目地幅が10mmとなるようにレバーブロックでさらに引き寄せていく。その際、作業員が水平器で床版の高さ方向の確認を行うとともに、メジャーで橋軸直角方向各点の床版間幅を計測して均一に引き寄せられているかを何度も確認しながらミリ単位での作業を行った。


計測をしながら慎重に引き寄せていく(左と右写真=※)

 シースジョイントが問題なく差し込まれているかの確認では、あらかじめシースジョイントに青線をつけておき、床版の確認孔からその青線が見えたら規定の位置に達しており、健全であることが分かるようにした。また、竹串にてシースジョイントの有無、状態を確認するといった工夫もしている。

 1日あたりの撤去・架設枚数はそれぞれ3枚で、作業が完了したら桁上に設置したレールで床版架設機を次のサイクルに備えて移動させている。レールは床版割付に合わせて長さ4.8m、2.4mと調整用の1.2mのもの、3種類を用意して、1サイクル(1日の作業分)となる7.2m(4.8m+2.4m)を敷設。移動時にはレールの継ぎ足しを行い、不要となったものは撤去した。



床版架設機の移動(下2枚写真=※)

 床版架設機について、NEXCO中日本東京支社は「本現場のような上空制限がある箇所や家屋が近接しているなどの制限がある箇所では安全に施工ができる」と評価した。
 施工全般では「試験施工で課題を細部まで洗い出し、それを踏まえて作業をしているので問題はなかった。施工当初は床版3枚の架設に約3時間半かかったが、位置調整や引き込み時のタイミングなどの習熟度があがることにより(完了間近の時点では)2時間程度でできるようになった。また、低い位置で床版が動くので安心感があり危険も少ない」(元請の三井住友建設・横河ブリッジJV)という。

クレーンでは1日に7枚撤去、5~6枚架設

 220t吊クレーンでの床版取替では1日あたり7枚(14ブロック)を撤去し、5~6枚を架設していった。本工事での架設総枚数は52枚で、そのうちの38枚をクレーンで施工している。P1近傍では高圧線との離隔に注意を払わなければならず、仕口合わせでの位置調整でも床版架設機での施工と同様に慎重な作業が要求された。



クレーンによる床版の撤去と架設

縦締めPCで工程短縮と接合部の耐久性向上を図る
 プレグラウトPC鋼材を採用 縦締め本数は標準部24本

 前述のとおり、床版間の接合は2方向PC構造を採用している。NEXCO中日本東京支社では2019年度冬施工の東名高速・下長窪橋(下り線)で2方向PC構造を採用しており、本現場が東京支社では2例目となる。採用理由は「天候による工程遅延リスク低減と接合部の疲労耐久性向上を図る」(NEXCO中日本東京支社)ためで、下長窪橋(下り瀬)工事では、ループ継手と比較して1日の作業時間の削減に寄与したという。
 さらに、「天候の影響を受けないために予備日を工程のなかに入れなくてすむことに加えて、PC緊張済みの床版上に重機などが乗り入れることができるため、壁高欄の設置などの次工程を早く進めることができる」(元請の三井住友建設・横河ブリッジJV)ので、全体として工程短縮につながるという。
 縦締めの本数は標準部24本、P1、P2の支点上を跨ぐ箇所はたすき掛けとなるため48本を配置。すべて1S28.6mmのプレグラウトPC鋼材を採用した。シースジョイントは内径55mm、外径64mm。材質は、中間部のホースが軟質塩化ビニール(外周)・硬質塩化ビニール(芯材)、両側のブッシュが高密度ポリエチレンとなっていて、差し込み時や仕口合わせ後の追従性を考慮して製作した本現場独自のものを使用した。



PC鋼材配置図

本現場独自のシースジョイント

 PC鋼材は床版架設状況にあわせて、まずA1~P1先の定着部に挿入、次にP1手前~P2先に挿入して緊張を行った後にA1~P1先を緊張、最後にP2手前~A2の挿入、緊張を実施した。


PC鋼材の挿入

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム