道路構造物ジャーナルNET

長寿命化と生活道路の整備も重要

仙台市 震災復興とコンパクトシティ・プラス・ネットワークを推進

公開日:2017.09.26

床版防水 平成以降の新設橋は設置済み
 2橋で床版取替および床版打替え

床版 ①床版防水の実施状況
 床版防水は平成以降の新設橋梁は施してあると考えている。また、修繕工事を実施する際に、舗装を切削してみたら、過去の修繕工事で防水が施されていたというケースもあった。現在は橋面の補修時に必ず防水工を施工している。
 床版の下面状況をみれば防水工がされているかわかるが、930橋の実際の施工有無は把握していないのが現状であり、「これからの時代は、データの蓄積を一元化して誰でも確認できるようなシステム構築も必要だと考えています」(同)。
 床版防水工は、基本的にはシート系防水と塗膜系防水を施工しており、事前工として床版上面の不陸を丁寧に処理している。特別な基準はありませんが、現場に応じて切削時に脆弱部がはがれてしまったら、断面修復をかけ、切削機で不陸になったところは研磨までとはいかないが、平滑化するような処理をしている。

②床版取替
 なお、床版厚が足りない2橋について、過去に床版取替え工を実施したケースがある。国道286号の杵塚橋(平成27年度完成 単純鈑桁橋 L=30.0m 床版が1㎡程度著しい土砂化のため鋼板を埋設し応急補強していた。端横桁が雨水により錆が発生し減肉⇒交換)は半断面ずつ規制してグレーチング床版への取替えを行った。


杵塚橋のグレーチング床版への取替

 市道二大工事線の栗木橋(平成28年度完成 3連単純鈑桁 L=78.0m 床版厚が16cmで全体的に劣化。主桁は部分的な当て板補強を実施)は約9カ月間全面通行止めにしてRC床版への打ち換え(現場打ち)を施工した。


栗木橋床版裏面の損傷状況 亀甲状のひび割れや鉄筋露出が生じていた

栗木橋床版の撤去状況① ダイヤモンドカッターで切断

栗木橋床版の撤去状況② 小割にしてクレーンで吊って撤去する

栗木橋の床版打替え①桁も塗りなおした

栗木橋の床版打替え②現場打ちで新しい床版に打替えた

9橋で伸縮装置交換
 塩害対策 太白大橋で歩車道境界ブロックに損傷

支承・伸縮装置の交換
 支承交換は今年度に発注予定はないが、昨年度から引き続いて茂庭大橋の支承交換を行っている。伸縮装置交換については今年度9橋で実施する。鋼製・ゴム製の荷重指示型になるが、埋設型も部分的に採用している。東北地方特に日本海側では雪荷重の影響で止水材を踏み抜いてしまうこともあり、最近は、フェールセーフで止水ジョイントの下にさらに二重止水を行っているケースがある。仙台市の場合、降雪が根雪になることはあまりなく3日ほどで溶けるが,市内北部の橋梁で積雪の押し込み荷重に耐えられるジョイントを採用する予定だ。

凍結防止剤による塩害
 顕著な例としては、仲の瀬橋と太白大橋がある。仲の瀬橋は壁高欄内側にコンクリートのはく離が生じている。面積は全体の3割程度であったが、対策工はすべて完了済みだ。太白大橋はPC+メタルの箱桁複合橋で橋長600mとなるが、歩車道境界ブロックの劣化が目立っている。対策工は仙台方面の上り線が完了していて、下り線を今年度に施工する。塩害の対策工は、腐食した鉄筋の防錆処理と断面修復を行っている。また、歩車道境界ブロックなどの背面、目地についても防水を配慮している。


太白大橋における歩車道境界ブロックの劣化

鋼橋塗替え 今年度は3橋2,670㎡実施予定
 塗膜剥離や循環式ブラストなど採用

鋼橋の塗り替え
 平成28年度の実績は1橋で6,300㎡、今年度は3橋で2,670㎡を予定している。
 既存塗膜の分析でPCBや鉛の含有が確認された場合は、厚労省文書どおりにはく離剤による湿式はく離を実施している。現場条件が可能だったため、循環式ブラストでの作業も2例実施した。PCBについては、現在施工中の1橋でごく限定的に検出されたのみで、あとは未検出となっています。無害化処理は運搬,処分ともプラントの処理能力や経済性を考慮して適切に処理する予定だ。
 鉛についてはかなりの割合で検出されているが、基本的に湿式剥離方式および循環式ブラストにより除去し、既存塗膜については中和して無害化処理認定施設で処理をしている。
 仙台市の場合、基本的には1種ケレンを目指している。茂庭大橋の塗り替えでは基礎塗膜の状態が悪くなかったので、はく離までで済まし、ブラストをする予定はなかったが、鉄の表面に若干の凹凸があり,その部分に点錆が多数発生しておりそれを手工具で除去しようとすると大変な作業になるため、最終的にはブラストをかけた。ただ、投射量や時間に関しては、剥離剤できれいに仕上げましたので、少量で済ませることができた。


茂庭大橋での塗膜剥離剤を用いた既設塗膜の剥離/同橋でのブラストによる素地調整

実際には2種相当などいろいろある手法はあるが、状態の良い塗装をわざわざ1種で仕上げるということではなく、状態に応じてケレン種別や部分塗装にとどめるなどの運用をしている。

法面・自然斜面 要対策は108箇所で18箇所対策済み
 緊急輸送道路にかかる19箇所を30年度末までに施工

のり面防災対策
 平成8年と18年の全国的な道路防災総点検の際に点検をし、その後も24年に仙台市では独自に総点検を行っている。108箇所の要対策箇所が確認され、28年度末現在、18箇所の対策が完了している状況だ。108箇所のうち、緊急輸送道路にかかる要対策箇所が19箇所あり、これを優先して平成30年度までに完了させる予定。自然斜面も、モルタル吹きつけなどで人工的に改良されているところも、両方点検して、対策をしていく。

保全分野での新技術
 独自なものはないが、塗替え塗装工でバイオハクリX-WB、支承防錆工でMS工法、SIC工法、床版工でハイパーネット60、床版補強工でフォルカストランドシート工法を採用している。仙台市での技術開発の一例としては、龍沢橋でドローンを使った橋梁点検実験を行っている。東北大学と仙台市でさまざまな分野での新技術開発の話し合いをするなかでのドローンの活用実験であり、東北大学の久田真先生を窓口にして、大野和則先生が内閣府総合科学技術・イノベーション会議の「SIPインフラ維持管理・更新・マネジメント技術(管理法人:NEDO)」の研究テーマのひとつとして開発したドローンを使用した。ドローン本体の周りが殻に覆われている球殻ドローンなので、周囲の物などにぶつかっても落ちずに狭いところにも入っていくことができるため、「このようなものは積極的に活用していきたいと考えています」(同市)。実験を行った龍沢橋は、渓流に架かる橋であり、下から足場を組むのは難しく、また道路幅も広いので点検車も使用できない場所である。
 映像の解像度を見る限りは、目視分は網羅すると考えており、「スクリーニングでは使えるのではないか」(同市)としている。

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