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ミストブラスト、塗膜剥離剤などを試験施工

阪神高速 今年度内に塗膜除去方法マニュアル化へ

公開日:2015.07.01

塗り替え手法の変遷
 「文書」により環境は一変

 当初一般部は足場を完全防護した上で乾式ブラストにより塗膜を除去し、下地ケレンを行う予定だったが、先の文書が出て環境は一変した。現在ではブラスト系を用いた手法と塗膜剥離剤などを現場で試験施工し、その上でパワーツールなどを用いてケレンを行う手法などを検討している。同社では塗膜除去作業における作業者の安全と良好な下地性能の両立を「なんとか追及していきたい」考えだが、「要求性能の見直しも検討対象と考えている」としている。また、ケレンだけでなく塗膜の付着性の向上(塗料の性能向上)などの面で性能の維持を図ることも考慮していく。





塗膜剥離剤を用いた除去

自動遊間ブラスト工法を開発
 遊間幅40㍉以上が対象

 桁端部については、その性質上、(端部の簡易補修なども担当する)阪神高速技術㈱を中心に検討を進めている。
 桁端部は、ジョイントの劣化などにより漏水が生じ、漏水や漏水に含まれる凍結防止剤成分(主に塩分)が桁や橋台・橋脚の天端、支承などに悪影響を与え劣化を招き易い部位だ。改良の課題として、狭隘な個所で頻繁に塗り替えを繰り返すことはLCCの増大になるだけでなく、素地調整による騒音による近隣への環境影響や足場架設に伴う交通規制など社会的コストの点からも看過しえない。そのため桁端部塗膜の長期延命化を図るべく素地調整の施工性向上と、騒音や粉じんなどの近隣への環境影響の軽減を目的として施工技術の開発に着手した。比較的人家が少ない周辺環境の良い地域においては、遊間部の塗膜剥離、1種ケレン作業を容易にするため、ブラストノズルを狭隘部用に改良し(研掃材が2方向に発射されるY字型)、作業を自動化できる自動遊間ブラスト工法を開発した。


(左写真)自動遊間ブラスト装置の設置状況/(右写真)自動遊間ブラスト装置

 遊間幅は40㍉以上という制約があるものの、端横桁や主桁、ブラケットなどに固定し、上下方向および橋軸直角方向に移動できることやブラスト度合いを管理するため作動スピードを調整できる――などの仕組みをほぼ可能にした。設置は人力であるものの、設置以後は自動操作できるため、作業者への粉じんの影響を少なくすることができる。
 またその他の素地調整方法として、ミストブラスト工法、スポンジジェット工法、マクトルサンダー+ミストブラスト工法、剥離剤+サンダーケレン+ブリストルブラスターRPR電磁誘導塗膜剥離装置をそれぞれ現場で試験施工した。
 ミストブラスト工法は、ブラストの際、水をごく少量含ませることによって粉塵濃度を抑制する工法で、試験の結果、期待通りに粉塵濃度を下げつつ、隅角部や端部の塗膜を除去し、良好な下地を形成することができた。ケレン材は錆を生じさせないようスチールグリッドは使わず、非鉄金属系の研削材を用いている。水は塗膜滓と混在するが、「現場では防護シートから塗膜カス、水まで全て特別管理廃棄物として廃棄する」ことで法令に基づいた処理を行う。


(左)施工前・腐食損傷【支承部】/(中)施工前・腐食損傷【遊間部】/(左)ミストブラストの仕組み

(左)ミストブラスト噴射ノズル/(中)/(左)ミストブラスト施工中

 現場試験の結果ミストブラストは粉塵が少なく(施工時の)視界も良好で、除錆度もSa2.5以上及び表面粗さ測定も良好な結果を示した。加えて騒音抑制効果もあったことから都市内での施工にも耐えうることが確認できた。また、剥離剤+サンダーケレン+ブリストルブラスターも「部分的には適用可能」としている。ミストブラストを軸に厳格な騒音対策が必要な個所では、剥離剤+サンダーケレン+ブリストルブラスターを活用していく方向だ。


(左)ミストブラスト完了/(中)施工完了・腐食損傷補修【支承】/
(右)施工完了・腐食損傷補修【遊間部】

 桁端部や遊間部は施工面積が少ないうえに、下に橋脚があるため一般部に比べて防護しやすく、それゆえの「特殊解」として位置付けている。一般部への(特殊解の)適用は施工能力、水の処理や産業廃棄物量の増大など、克服する課題は多いとしている。
(2015年7月1日掲載)
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