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㉒架替えのモデルケース「八田橋」

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監
植野 芳彦 氏

「免許皆伝」の技術者はどれだけいるか?

 1.はじめに

 だいぶ涼しくなってまいりました。今年は雨の量が多く、だいぶ困っている方々も多いと思う。こちらでも、土砂災害が小規模ではあるが発生している。“土”の問題は、構造物以上に厄介である。これが出るころには9月議会の真っ最中である。このジャーナルのコラム(最近そう思っている)を書くのもすぐ訪れるが、議会も直に次の議会となる。まあ、民主主義の世の中では仕方が無いが、だれかこの議会に関して、真実を報道できるジャーナリストは居ないのだろうか? 誇大広告や批判やあら探しではなく真実を。それと、同様にインフラメンテナンスの真実を。

 前回「標準設計」について書いたが、数件意見をいただいた。意見をいただきました方に感謝申し上げます。いずれも、今後の維持管理の時代においては、標準化の思想が必要だと言う意見で安心した次第である。

 「標準化」での考え方の重要性と、ツールを如何に利用するか? という事を言いたかったわけであるが、どうも、「設計」という行為そのものに関する認識に誤解があるようである。最近は異常気象の関係で、「50年に一度の」と言う言葉を耳にする。今のような状況で、しょっちゅう50年に一度があるのであれば、それは50年に一度ではないはずである。一度決めてしまったらなかなか直さず、バージョンアップしないのも役所の悪いところである。「標準設計」に関しても、反省点として、その設計思想を時代の要請にあわせる検討を長期関しなかったことが挙げられる。世の中の変化に合わせた、変化を拒めば、滅び去る原因となる。

 「標準化」というと、どうしてもマニュアル化されてしまうと考えがちだが、マニュアル化も重要である。どうしても真相を理解しようとし無い者たちがいる。技術者としては中途半端なのだが本人達は気づかない。私の趣味である武道をふくめ、芸ごとの世界では、「守・破・離」という修行段階の言葉がある。マニュアル技術者は「守」の段階で、それを卒業したら次のステップに行けばよい。免許皆伝の技術者にはマニュアルや標準設計は必要なくてよいのだが、どれだけの数がこの国に“いる”(居ると要る)のか?

 最近不安なのが、災害時に耐える構造物を守ることも重要である。作ったときから欠陥があり、老朽化が進めば、異常な外圧にはとても耐えられない。そのような構造物が、どれだけあるのか?


世界初 プレビーム合成桁ポータルラーメン橋を採用

2.八田橋のその後

 八田橋が上り線側の上部工の架設を終えたのでそれについて書く。7月末から上部工の主桁の架設工事を実施、8月の上旬で架設を終えた。1日1本のペースで、朝から桁の搬入地組、架設を行った。期間中には多くの見学者に来ていただき感謝する。富山県庁の方々、石川県建設コンサルタント協会、全建富山市会員、富山市ドボジョの会、中でも富山市議会の議員の方々にも多数参加していただき、ありがたかった。しかし、不思議なのが、富山市の建設業協会と同建設コンサルタントの協会の地元の建設系の民間団体からの申し出が無かった。「興味が無いのかな?」と疑問に思う反面、「お金にならないことには参加しないのかもしれない。」という、あきらめの感触である。八田橋は、「プレビーム合成桁ポータルラーメン橋」であり、おそらく世界初の形式と成る。桁の架設が終わり、今後は隅角部の配筋、コンクリート打設と進んでいくが、ここも肝である。




八田橋の施工(下部工)

 本橋の架け替えに関しては、構造的な維持管理への配慮とともに、地方都市の都市部における、長期的な老朽化対策のさきがけとなるべく検討したものであり、今後の指標ともなるべきものであると考えている。と言うのは、現在「長寿命化」「予防保全」と言われ、架け替えが敬遠されがちであるが、自治体のトータル的な長期のインフラ・マネジメントを真剣に考えた場合、「架け替え」「更新」「統合・廃止」というメニューが必要である。地方自治体の橋梁は元々新設時の出来が非情に悪い状況のものが多数ある。元々の施行不良が、劣化を著しく進行させる要因になっていることは否めない。という事は、予防保全による長寿命化にはかえって予算が必要となり、実際にあまり維持管理に取り組んでこなかった方々の机上の理想論であるという現実がある。



 おそらく、富山市においても今後、八田橋と同様な事例が想定されることから、八田橋は早々、架け替えとし、今後の検討課題を抽出していくこととした。一番大きな技術的問題は、元々がTL-14で設計され老朽化しているにもかかわらず、町の中心部において多くの交通量を抱え、大型車も規制無く通行させていることである。さらに、複雑な添架物を有する橋梁であり、これも地方自治体の街中の橋梁の共通する課題であり、モデルケースと捕らえている。老朽化した橋梁は、「長寿命化や予防保全」を施しても、いつか必ず、「架け替え」をしなければならない時期が来る。長寿命化という言葉に皆さん誤解を抱いているようであるが、たとえば、80年経過した橋梁を長寿命化しても、その後100年持つわけではない。せいぜい10~20年程度であろう。それをわざわざ、お金をかけて直していくのか?という事である。

 ましてやその橋梁が、重要な位置に架橋されていれば、10年ごまかしても、税収が減った後に何とかしなければならない状況に陥ってしまう。このような橋梁が多数存在する。ただし、歴史的に価値があり、保存する価値のある橋梁は別である。この場合は、全体のマネジメントとは別に個別案件として検討する必要がある。幸い、今のところ富山市にはそのような橋は無いと考えている。

 少し話はそれたが、この八田橋架け替えの際に問題となったのは、町の中にある橋梁に共通する課題である、多数の添加物をどうするかである。この添加物、架け替えに伴い、実は移設するわけであるが、その補償費が馬鹿に成らない。当初驚いたのは、電力の移設費を電力会社に見積もらせたところ、橋梁本体の費用を上回ったことである。これでは、何の工事をしているのか分からない。これは、今後、市内の多くの橋でも問題となり、また全国の多くの自治体でも課題となるであろう。ということで、八田橋では先行し、「架け替えのマネジメント」を実際に検討しているわけであるが、それを、今後どのように捕らえていくかである。