道路構造物ジャーナルNET

㊸維持管理の重み(その4)  

現場力=技術力(技術者とは何だ!)

株式会社日本インシーク
技術本部 技師長

角 和夫

公開日:2023.04.10

(3)小規模吊橋雑感(連載)

  41号に引き続き、小規模吊橋の状況を探る旅を実施中である。今回は、京都府、大阪府、兵庫県の4橋を紹介する。

①もみぢばし(京都市右京区)(写真‐1参照)
  2022年12月初旬、福岡県OBで出向中にお世話になった当時の企画振興部空港対策課係長さんが京都にトレイルにやってくるという。トレイル(九州ではオルレ)とは、森林や里山などに設置された「歩くための道」のことを言う。私も九州オルレの内の三つ、佐賀県の「嬉野温泉コース」、「武雄温泉コース」、福岡県の「宗像・大島コース」をご一緒した(オルレとは、韓国・済州島の言葉で「通りから家に通じる狭い路地」と言う意味。海岸線や山などの自然、民家の路地などを歩くもの)。話を戻すと、京都には5つのトレイルコースが設定されている。そのうちの一つ、西山コースに出かけたときに見つけた人道吊橋を写真‐1に示す。清滝から嵐山(渡月橋)までの6㎞程のコースである。この途中に料亭への歩道吊橋である「もみぢばし」に遭遇した。長さは30mほどであり長くはないが、料亭用の専用吊橋であることからしっかりメンテナンスが為されていることに感心した。また、鋼製主塔の鉛直部材を繋ぐレーシングバーも凝っているなと感じた。

  ・所在地   京都府京都市右京区梅ケ畑
  ・建設年   不詳
  ・全長     30m
  ・幅員    1.0m
  ・橋梁形式   単径間無補剛吊橋
  ・用途     料亭専用歩行者吊橋


写真‐1 もみぢばし(京都市右京区)

②星野ブランコ(大阪府交野市)(写真‐2参照)
 2022年10月中旬、大阪府交野市の「ほしだ園地」に架かる人道吊り橋では日本7位、近畿地方の人道吊り橋では奈良県の谷瀬大橋(6位)に次ぐ長さを誇る「交野吊橋 星のブランコ」を訪ねた。20世紀末の1997年に完成した吊橋のためか、当時流行りであった耐候性鋼材が主塔や両サイドのプレートガーダーに使用されている。維持管理の配慮が為されている橋として印象が残った。半面、ケーブル定着構造(アンカーブロック)と端橋脚を兼ねるためと思われる両サイドの単純桁が非常に分厚いことから景観上はもったいないと思う(私だけかな)。
  ・所在地     大阪府交野市星田(府民の森 ほしだ園地)
  ・建設年     1997年
  ・橋長及び支間長 橋長 280m  支間長(支間割) 40m+200m+40m
  ・橋梁形式    単径間無補剛吊橋+鋼単純桁
  ・用途      人道橋  


写真‐2 交野吊橋 星のぶらんこ(大阪府交野市)

③原不動滝 かえで橋(兵庫県宍粟市)(写真‐3参照)
  2020年8月下旬、兵庫県宍粟市の原不動滝の「かえで橋」を訪ねた。支間長は76mとそれほど長くはないが滝見物の為によくぞ作った、と言う感じである。1990年完成と年齢も若いが山間部でもあり殆ど発錆も無い。有料(公園入園料として200円)ということで十分なメンテナンスが為されていると感じた。
  ・所在地    兵庫県宍粟市波賀町原(原不動滝)
  ・建設年    1990年
  ・橋長      橋長  76m   
  ・橋梁形式   単径間無補剛吊橋
  ・用途      人道橋


写真‐3 原不動滝 かえで橋(兵庫県宍粟市)

④北播磨余暇村公園の吊橋(兵庫県多可町)(写真‐4参照)
  2023年1月下旬、兵庫県多可郡多可町の北播磨余暇村公園入口そばの吊橋を訪ねた。支間長は35mとそれほど長くはないが無料公園の為によくぞ作った、と言う感じである。不思議なのは公園内の水路部を渡る吊構造部はロープ製の手摺。両サイドの非吊部は鋼製高欄。主塔が低いのは仕方ないにしても縦横の寸法比が悪いのが勿体ない。本四で最初に担当した大鳴門橋の主塔の様で残念である(大鳴門の主塔は中央支間長に比べてケーブル中心間隔が広い。6車線で作っている塔柱間隔が広い)。星のブランコと同様に両サイドに非吊区間を作ることでコンパクトにしたのではなかろうか、という感じである。山間部でもあり殆ど発錆は無い。
  ・所在地   兵庫県多可郡多可町中区牧野(北播磨余暇村公園)
  ・建設年   不詳
  ・橋長       橋長  35m   
  ・橋梁形式  単径間無補剛吊橋+鋼単純桁橋
  ・用途    人道橋


写真‐4 北播磨余暇村公園の吊橋(兵庫県多可郡)

(4)最後に

 トルコ・シリア大地震からほぼ2か月が経過した。死者は5日までにトルコ・シリア合わせて56,891人。余震は22,000回以上続いているという。何年か先の日本が同じことにならないように早めの対策が肝要である。公共事業の話を前号に続き取り上げた。福岡県の八女市におけるバイパス事業等が参議院決算委員会で取り上げられた。「影の力」「大きな力」が蠢くのは日本だけではないだろうが、未だにこういう議論が国会議事堂や日本中のどこかで行われていると思うと会計検査院は何をやっているのか、と言いたくなる。

 話は変わり、令和5年3月、国交省総合政策局が「インフラメンテナンスにおける包括的民間委託導入の手引き」を発出した。PPPで実施している有料道路の運営・管理などは海外で講演したこともあるが何ともはや……。例えば、旧国鉄の赤字路線を第三セクターに引き継ぐやり方に似てはいないか。管理者側が手に負えないインフラ設備を「民間にやってもらえませんか」というのが正解なのだろうか。税金で作った無料道路を民間の高度な点検技術や維持管理技術(?)を活用し予防保全型維持管理にしていこう、というのか。結局、今迄の垂れ流しの発注費用ではなくなるかもしれないが、相当な費用は請求される。これで良いのか日本。(次回は5月上旬に掲載予定です)

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