道路構造物ジャーナルNET

-分かっていますか?何が問題なのか- 第64回  道路下の空洞を調べるレーダー探査 ‐モグラの目を持つ探査技術の検証ポイント‐

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員

髙木 千太郎

公開日:2022.12.01

「謹呈」という悪しき慣習を廃止
 改善策が功を奏し販売数の減少スピードは多少緩まった

 新たなメンバーによる編集委員会を何度か開催するうちに、奇妙なことに気が付いた。問題の月刊誌販売部数である。書籍販売数と購読者数を合算したところ、当月の印刷部数と合致しないのである。これは月刊誌には良くあることで、寄贈数の上乗せ分が必ず何冊かはある。それにしても部数の差異が大きすぎるのでその理由をS氏に確認すると、「D誌は、これまで慣例として国の諸機関、地方整備局、事務所、出張所などに謹呈しています」との答えであった。

 国への送り先を調べてみると、想定外の部数を全ての国の関係する機関に送っていることが判明した。月刊誌販売数が、1万部を超え、国の支援の基、十分に収益が上がっているなら分かる。しかし現実は、実販売数はその5分の1程度、収益も大きくマイナス、国からの支援は全く無しである。ここに示すD誌の置かれている状況から判断すると、この悪しき慣習を廃止することがベストな選択である。私は改めて思った。月刊誌にも、旧態依然とする中央集権国家の悪習が残っているとは、驚きと同時にあきれ果てた。ここで示したD誌の改善策は一部であるが、改善策が功を奏し販売数の減少スピードは多少緩まった。

 しかし、新たな種々な企画が読者や関連企業に定着するには時間を要し、直ぐには販売部数が右肩上がりとはならなかった。手前味噌ではあるが、読者の反応は確実に良い方向に向かい、月刊誌広告の掲載を希望する企業も出始めた。D誌改善策をスタートさせてから3年が経過し、私がO教授に約束した編集委員会委員長の任期が満了となり、再選を拒むO教授から私に対し、編集委員会委員長交代案の相談があった。3月末の編集委員会でO教授から私への編集委員会委員長交代案が出され、満場一致で委員会決定がなされた時、A出版社の中で秘密裏に事が大きく動き始めた。

編集委員長に地方自治体出身者が就くことに反対
 未熟な私に対して、叱咤激励の天の声

 A出版社のS取締役社長(混同するかもしれないので、S社長とS氏とは頭文字は同じだが、別名別人である)と私に依頼したS氏は、編集委員会委員長を以前の国、幹部に戻す相談をし、我々編集委員に内緒で水面下の動きを始めたのである。それについて後日、A出版社の人から聞いた話では、S取締役社長は、由緒あるA出版社、品格と実績を積み重ねてきたD誌の編集委員長に地方自治体出身の私が就くことに反対したとのことであった。

 私は、水面下で行われた裏工作について関係者から聞き、さらにD誌の大改革を私にお願いしてきたS氏が裏工作に絡み、それを実行していることを知った時、私の心中は、落胆と何とも遣る瀬無い気持ちで一杯となった。裏工作が進んでいることを知ったO教授から私に、「髙木さん、本当に申し訳ない。髙木さんが中心に行ってきた、3年間に渡るこれまでの種々な取り組み大変でしたね、ご苦労様でした。しかし、このようなことがまかり通るとは、私も腹立たしく思っていいます。そこで高木さん、私を含め、現編集委員全員がこれを契機に編集委員を降りることにしましよう。心配なのは、A出版社が編集放棄による損害で我々を訴えないかですが、それを防ぐために半年後までの企画案と執筆依頼だけは完了させましょう。しかし、いやな世界ですね、未だにこのような悪癖が残っているとは、だから土木系雑誌は駄目なのです。これでは、学生を含め、当該部門へ就きたいと思う人はどんどん減りますよ」と私にとって暖かく、ありがたい慰めの言葉であった。

 その時の私の気持ちは、「3年半前のS氏の依頼に乗った私が悪かった。しかし、名誉あるD誌の編集委員長の座に就きたいわけではないが、このような事態となるのは私に対する外部評価は、まだまだ低いレベルにあるからだ。今回のことを教訓にして今後は、私に関係する数多くの技術を修得、多くのことを経験し、“当該分野に髙木あり”と社会に評価されるまで頑張ろう。今回の腹だたしい一件は、未熟な私に対して、叱咤激励の天の声である」と考え、更なるステップの決意を新たにした。

定期購読者数と販売数の落ち込みは加速度的に減少
 期待する土木系月刊誌を選別して購読者となり意見を送ってほしい

 その後のD誌は、A出版社が裏工作した国の幹部であったOBが編集委員長に変わり、全編集委員が辞めたことから当然、編集委員総入れ替えが実行された。私を含め、編集委員の多くが苦労して軌道に乗せた肝心のD誌紙面は、紙面のスタイルを大きく変え(我々旧編集委員会が創った紙面変更せざるを得なかったのかもしれないが、斬新さも失せ余白が異様に大きく読みにくくなった)、編集企画については我々のスタイルを踏襲して進めているようではあったが、所詮、企画に新鮮さや熱意が感じられない、読む意欲も湧かない昔の月刊誌に後戻りしてしまった。

 これまで示した信じ難い後戻り策によって、D誌の定期購読者数と販売数の落ち込みは加速度的に減少の一途を辿っていった。今思い返して考えると、編集委員会副委員長の私が中心となって新たな企画案の提案、依頼原稿の決定と執筆者への依頼、原稿の査読など、毎月編集委員会を夜遅くまで行った努力は何処に実ったのか、約3年間の取り組みは何に役立ったのであろうか? あの時感じた、出版社のプライドとは何であろうか? 月刊誌の販売数を水増して公表し、広告料も払っていないスポンサー(昔、スポンサーであった)広告を掲載したり、国の幹部(偉いと思っているのは極一部)を編集委員会委員長として据えたり、編集アドバイザーとして著名人を連名記載するなど、書籍の内容で勝負せずに、プライドを重視し、肩書で勝負するのは土木系の業界だけであろう。

 近年の技術者、技術習得者、学生の多くが書籍離れする理由は、リアルタイムで、しかも手軽に数多くの情報を目で捉えることが出来るインターネット系雑誌等に取って代わられたことも一因と言える。さらに、既存の読者にとっては、必要な技術情報や新材料の情報取得がマイニング技術の活用で精度高く出来るようになり、紙面を追う苦労をしてまで読みたいと思わないのも理由である。しかし、書籍や月刊誌の読者が全く無くなった訳ではなく、今でも書籍を購入し、月刊誌を読むことを楽しみにしている人も数多く存在する。そこには、紙面を読み、書かれている状況を想像する時間的な余裕があり、読み終えると何とも言えぬ満足感が満ち溢れる、WEB紙面、画面とは全く異なった世界がある。月刊誌を含む書籍を企画、販売する出版社は、書籍をWEB版とするだけの簡易な対応ではなく、根本的に、文字を読むことによるメリット、書籍として残すメリットなどを追求し、書籍でなくては出来ないことを売りにして、それを最大限活用して出版企画を立てる必要がある。それが無ければ、書籍を含む月刊誌の右肩下がりの現状を改善することは不可能である。

 そう言う私は近年、新たに書籍をかなりの数購入し、時間を作ってはそれらを読むこととしている。その理由は、書籍はWEBよりも目に優しく、何処でも読むことが出来、そして記憶に残る率が高いからである。私の連載を読まれている読者の方々に私からお願いがある。是非、貴方が期待する土木系月刊誌を選別して購読者となって頂き、沢山の意見を出版社に送り、月刊誌のレベルアップと援助をお願いしたい。そうしないと、国内の土木系月刊誌全てが廃刊となる可能性が高いからである。私からのお願いが出たところで、ビジュアル画像のほとんどない土木系月刊誌の話題提供から、読む気を誘う写真と図を交えた話題提供に移るとしよう。私が専門の橋梁とは異なるが、物を調べる手法に共通点がある、道路路面下に発生する空洞とそれを調査するレーダー空洞探査技術について話題提供をしよう。

 

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