道路構造物ジャーナルNET

第38回 東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)(その2)

次世代の技術者へ

土木学会コンクリート委員会顧問
(JR東日本コンサルタンツ株式会社)

石橋 忠良

公開日:2022.10.01

2.津波被害線区の復旧

 津波被害では鉄道も流されてしまいましたが、町も流されてしまい、町の復興計画と合わせて鉄道をどうするかの検討がされました。鉄道構造物のみすぐ復旧しても、町が戻らないと意味がありません。鉄道をやめ、専用道路のBRT(バス高速輸送システム) に変えたり、経営の主体を変えたりが行われてきています。一般道に乗り入れることもできるBRTのほうが津波の時に車両に乗ったまま逃げるのに便利ではないかとも思います。
 当初、会社幹部と津波被害の復旧について、現位置で早急に鉄道を復旧するかどうか相談しました。町がなくなり、町の再建計画が決まらないとすぐに鉄道だけ現位置で復旧しても意味がないだろうということで、現位置での早期復旧という方針にはなりませんでした。
 津波被害を受けた線区のいくつかは線路の位置の変更がなされました。
 写真-13は津波被害を受けたので、仙石線の線路を山側に移設した区間の新しい高架橋です。


写真-13 移設した仙石線

 写真-14は常磐線の線路を山側に移設した高架橋です。海のそばの今まで駅前だった場所には商店などがあります。鉄道を移設してしまうと、 以前の駅前の商店なども経営が難しくなるようで、人の営みにも影響しています。


写真-14 移設した常磐線

 津波の被害を受けた地域では、多くの箇所で背の高い堤防が海沿いに造られています。地震直後は皆、このような津波被害を受けたくないとの思いで、このような計画が選ばれたのだと思います。しかし、海岸で海の見えない風景は寂しいですね。逃げるための道路をしっかりと整備して、高い堤防のない海岸のほうが、時間が経つと良かったということになるのでは、と感じます。
 災害で多くの方が亡くなった直後での復興の議論は難しいですね。過去の津波でも直後は皆、高台に住みますが、時間が経つと海の近くに住む人が増えてきています。人の寿命を超える期間での災害に対して、安全優先で、生活の利便を犠牲にする対策を何百年と続けるのはなかなか難しいのでは、と感じてしまいます。
(次回は11月1日に掲載予定です)

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