道路構造物ジャーナルNET

第77回 100年橋梁という幻想

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
政策参与

植野 芳彦 氏

公開日:2022.06.16

1.はじめに

 最近の世の中の話題は、持続化給付金問題だろうか? どうも「金・金」である。それはお金はあったほうが良い。しかし、まあ、これは、個人の価値観の問題である。経営者と言われる方々にはそれぞれのご苦労があり使命もあるので、考え方の相違もあろう。
 我々の世界では、できもしない仕事を、中途半端にやってお金をもらおうというのは、犯罪までは行かなくても、社会に迷惑をかける。長期にわたり、一般の人たちにも迷惑をかけることになる。一般の方々は気づかないかもしれないし、問題は起きないかもしれない。看板さえ掲げていれば皆出来ると思っている。教科書通りには誰でもできるが、我々には使命があることを忘れてはいけない。技術者のプライドも良心と誇りもあるはずである。

2.今月のトピック

 先日、金沢工業大学の環境土木工学科の3年生に、「地域地政学」の特別講義を2週に分けて実施した。同大学の木村教授は、大学の後輩であり、彼のセッティングによるものである。
 1週目は、反応が薄く困ったなあと思っていたが、2回目には積極的に質問などが出て、何よりも講義を聞く真剣な態度が良かった。こういった理工系の3年生になれば、真剣に将来の就職と自分のやりたいことの中で悩み、キャリア形成をどう積むか? を考えていると感じた。これは素晴らしいことである。おそらく先生方の指導が良いのだろう。社会人になっても何となく、就職し仕事を“やらされている”という者も多い中、自分の夢をどう実現するか悩むのは今の時期なのだろう。
 キャリア形成の重要性は、流されている者にはわからない。さらにいうなれば、自己満足をしてしまえば、そこで止まってしまう。我々土木技術者は、経験が重要である。しかし、土木の世界は広いし深い。金もうけに走っている暇はない。金もうけに行った段階で土木技術者はリタイアしたのだと思う。それも一つの道である。意外と才能を発揮するかもしれない。
 富山市の「植野塾」でも、キャリア形成については、職員の間から出てきた話題である。しかし、これは、他人が「やれ」と言ってできるものではない。自分自身でどうするかである。そのために、冷や飯を食う羽目になるかもしれないが、それでもやるか? である。この世界は、一朝一夕には結果は出ない。どんな天才でも。


毎月1回開催している「植野塾」。開催回数は60回に達した

 天才と言えば、三井住友建設の春日副社長が、国際コンクリート連合(fib)の会長になり、仏土木工学会「アルバート・カコー賞」を欧米人以外としては初受賞した。国際的にすごいことである。日本にはこういう方もいる。春日さんとは、様々な委員会や勉強会などの場面で、若い時から、ご一緒しているが、人格的にも素晴らしい方である。誇らしいことである。ここまで精進するには、相当なご苦労があったことであると思う。技術者として、こういう方を目指してほしい。
 土木技術の世界は広く深いと書いたが、専門性がある。インターネットで簡単に検索して済む話ではない。だから実績が重視されるのである。社会の風潮が安易であるが、安易に形だけできればよいと思っていると事故を起こす。相当気を付けていても事故を起こすのであるから、何も考えなければ危なくて仕方がない。
 しかし、それは今始まったことではない。社会に出てきちんと教育を受けていないと、不都合なものを計画し設計し施工している可能性がある。おそらくこれは昔からで、高度成長期の時などは野放しだったのではないだろうか? 発注者がそれなりの技術力があり厳しく監督し見ていればこれも問題はない。しかしこれもどうも疑わしい。その付けを払わなければならない時が必ず来る。
 皆さん一様に言うのは「人財」である。人材を育てるには、時間がかかる。課題もそろえてやらなければならない。指導する側の人間もいる。しかし、今それがどれだけできているだろうか? こういった大学生もそうであるが、新人をどう教育し、どう育てるのか?
 私は、大学を出て最初に就職した橋梁メーカーが弱小メーカーであったが、中身は一流であったと思う。部長はじめ先輩方は、実は寄せ集めであったが、ユニークでそれなりの方々だった。個性はあったが、勉強させてもらった。これはありがたい限りである。ただ、今日の私のような人間を作ってしまったという問題もある。おそらく私は組織としたら不適合者である。上司の言うことは聞かない。気の乗らないことはやらない。何をやっているのかよくわからない。しかし、なんとなく人脈は多い。やることは、その時々の結構世の中にニーズに合っている……。

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