道路構造物ジャーナルNET

第34回 阪神淡路大震災の復旧にかかわった経験(その3)

次世代の技術者へ

土木学会コンクリート委員会顧問
(JR東日本コンサルタンツ株式会社)

石橋 忠良 氏

公開日:2022.06.01

3.復旧

3.1 高架橋の復旧
 倒壊した高架橋の梁とスラブは健全なので、元に位置までジャッキアップします(図-3)。100tジャッキを柱の数だけ用意して、梁にかけて押し上げます。柱のコンクリートは粉砕されていますが、鉄筋は降伏してもつながっているので、そのままでは鉄筋がジャッキアップの邪魔をします。鉄筋を切断して持ち上げます(写真-1)。


図-3 ジャッキアップ/写真-1 柱の鉄筋を切断し、曲がっているものを熱して直線状に直した

 各施工会社でさまざまな方法でジャッキアップをしていました。橋梁の架設会社さんが入った現場は、各ジャッキを連動させて慎重に持ち上げていました。親方と作業員の組み合わせの現場では、親方が台の上に乗り、口頭で各人に手動のジャッキアップを指示していました。見ていると、親方の指示でのジャッキアップの早いこと、見る見るうちに持ち上がっていきます。コンピューター制御のジャッキアップの何倍も速いスピードで作業が進むのを見て、職人の技術はすごいものだと感心しました。

 切断した鉄筋は、大きく曲がっているので約1000℃で熱して直線状に修正します。その鉄筋には新しく鉄筋を接合し、帯鉄筋を配置します。接合には、鉄筋の片側は欠陥の生じないように、熱間押し抜き工法の圧接で接合し、もう一方は重ね合わせてフレア溶接で接合します。多くの圧接部が切れていたことから、こぶの残る圧接工法は採用せずに、圧接は熱間押し抜き工法に限定し、復旧に当たっては欠陥が生じにくい工法に限定して採用することにしました(写真-2)。
 写真-3は柱の鉄筋の再配置が終えた状況です。


写真-2 熱間押し抜き圧接工法/写真-3 鉄筋の再配置

 六甲道駅は2層の高架橋で、2層の柱とも壊れていました。高架下は店舗などに利用されていたので、復旧に当たっては、それらを撤去することも必要でした。写真-4は2層の高架橋をジャッキアップしている状況です。写真-5は、柱の復旧途中の状況です。


写真-4 2層高架橋のジャッキアップ/写真-5 2層高架橋の柱の復旧途中

 地表までスラブが落下して、斜めに倒れている高架橋もありました(写真-6)。ここを担当した建設会社は、壊して作り直す方法にしたいと何度も言ってきました。責任は建設会社に問わないので、ジャッキアップの方法でするように説得して、ジャッキアップしてもらいました。


写真-6 スラブと梁が斜めになり地表まで落下した高架橋

3.2 落下したPC桁の復旧
 写真-7は桁を支持しているラーメン橋台の柱がせん断破壊して、PC桁が落下したものです。在来線ですので軌道はスラブ軌道です、レールにつられた状況のスラブ軌道のスラブ板が見えています。道路交通を開通させるために、早急に落ちた桁をどかさなくてはなりません。撤去するために、I型桁を建設時の状況に戻すように、1本ごとに分割している状況です。
 写真-8は、分割したI型桁を、道路上から移動させて仮置きしている状況です。ここで、主桁の補修を行います。


写真-7 桁を縦に分割し、クレーンで移動できるようにしている/写真-8 I型桁の仮置きの状況

 写真-9は、仮置きしたI型桁を元の位置に戻した状況です。正規の位置よりも高い位置に戻して、ここでI型桁を再度つないで橋梁とします。桁をつないで橋梁にする作業の下で、並行作業で倒壊した橋台を造りなおし、そこに桁をジャッキダウンして据え付けます。


写真-9 I型桁を横方向に接合して橋梁に復旧する途中

 写真-10は、復旧の終えた軌道の状況です。スラブ軌道を撤去してバラストにしたら高架橋がもつかどうかなど議論が続いていて、当初、軌道の復旧方針が決まらずに、構造物の復旧設計に入れなかったようです。ジャッキなどで高架橋の高さや位置の調整はできるので、スラブ軌道のままで復旧すると決めたことで、構造物の復旧設計が動き出しました。軌道スラブもそのまま利用しています。


写真-10 復旧後の軌道の状況(在来線)

 写真-11は 柱に耐震補強の鋼板が巻き終えた状況です。
 検査を終え、新幹線は4月8日(被災後81日)、在来線は4月1日(被災後74日)に全線で運転が再開されました。


写真-11 柱に鋼板巻きの耐震補強が終えた状況

 次回に続く。(次回は7月1日に掲載予定です)

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