道路構造物ジャーナルNET

第73回 Ⅲ評価への現実的な対応とは

民間と行政、双方の間から見えるもの

植野インフラマネジメントオフィス 代表
(富山市 政策参与)

植野 芳彦 氏

公開日:2022.02.16

4.必要なハード技術者

 インフラ・メンテナンスにおいて、橋梁や構造物がわかる、ハード技術者が必要である。しかし、今の世の中は、ソフト技術者のほうが増えてしまっている。たまに、大学で講義を頼まれると、土木系の学生さんに「君たちは将来何をやりたいの?」と質問をすると、「まちづくり」「景観」「環境」となる。「橋は?」2名ほどで、悔しいので「どれもよいけど、やりたいことをやれる人は少ないよ。こっち側においで。」と言うのだが、反応は少ない。今、インフラの老朽化問題は国難である。

 ハード技術とは、構造などの基本となる技術である。橋の構造等を知らない者が多い。まあ、役所は仕方がない。異動があり、短期間しか接しない。やはり、一番の問題は自分で作った経験が無いからだろう。自分でやってみないとわからい。「図面が書けない」「図面が読めない」と言った問題もそうであるが構造が理解できていないからである。設計は、仮想の世界である、モノ作りは、現実の世界である。私が、富山で感じたのは、おかしな橋がいっぱいあることである。いちいち、言っていないが、これは経験不足からくるものである。ちゃんとしたハード技術が無いとメンテナンスなどはできない。
 前回の話もそうなのだが、コンサルには勉強してほしいから言っているのである。「机上論ではない」ということを。昔、部下が「たとえば、2mの鉄筋ってどんなもんなんですかね?」と言ってきた。これは、重さとか、感触、扱い方などを言っていたのであるが、「じゃあ、現場に行ってこい」と言ったことがある。設計するにしても、現場感覚が重要である。賢い人たちは机上で済まそうとするが、土木の世界は現場が重要である。また、現場の人たちが何で苦労しているかも見てほしい。そういう感覚を身に着ければ、考え方も変わってくる。私が昔から疑問なのは、設計と言うと計算書が重視されて図面が軽視される傾向にある。設計は根拠づけであり、その前には解析など実証があり、その結果が設計図である。設計図は設計図であり、その後加工図や施工図となっていく。それを一元管理しようというのがBIM/CIMである。

 鋼やコンクリートはまだよい。これから重要になってくるのは、「土」である。土質の分かる人間を私は、尊敬する。富山の小さな(失礼)ボーリング屋さんに、「杉山さん」と言う素晴らしい技術者がいる。話していて面白い。熱意を感じる。そこの社長が「困ったもんなんですよ、彼は興味のあるもの、気に入った相手の仕事は、採算抜きで、とことんやってしまう。でも許してしまう。」と言ってた。それは経営者も偉い。技術の世界とは本来そういうものだ。儲けたければ技術者はよした方が良いし、技術の会社はもうからない。「とことん突き詰める」ことが重要である。

「杉山さん」の仕事はとことん突き詰める

 インフラ・メンテナンスを実施していくうえで、まず重要なのが「点検」と言う行為である。手間もかかるので、なかなか完ぺきにこなすのは実は難しいと思う。そして、「診断」であるが、これはさらに難しい。皆さん簡単に診断というが、実は医師の誤診率は世界的にも30%から40%と言われているが、実際は70%近いとも言われている。つまり、診断し切れていないのである。ここで、「詳細点検」も必要になってくる。この時に、「非破壊検査技術」が必要であるが、これがわかる人間が少ない。そして、何よりも構造物を分かった人間が必要である。最近、いろんな企業から「鋼構造・コンクリート」の技術士を紹介してくれないか? と依頼される。しかも、できればメーカーに居た人と言うことだ。
 私は、橋の点検で現場に出て、まず全体を見渡す。その橋の架橋条件や全体感を、五感を使って感じる。そして、大きく息を吸って「匂い」を感じる。それで、想像がつく。これを言うと信じてもらえないが、そういうものである。「匂い」とはすべてを感じ取れる、橋の置かれている環境や、橋自体の問題。これで問題が有りそうならば、良く調査すればよいだけである。

5.おわりに

 最後に、添付の図表(橋梁点検による修繕実施状況)については、IHIインフラシステムの吉室様の作成したものが素晴らしかったので、加筆して使わせてもらった。こういう分析を独自にやって、シュミュレーションして考えることも重要である。
 どうも皆さん勘違いされているのは、私の身分は現在(2020年4月から)民間人である。身分保障もないし、健康保険も国民保険である。富山市の政策参与と言うのは、民間人として、富山市への協力やPRなどをする。(隈研吾さんや奥田瑛二さんもそうである。私とはレベルが違うが)政策参与となる時に言われたのは、「自分の収入源は別に作ってほしい。できれば個人事業をしてもらって、交通費は払います。あとは時給・・・。」市役所内に席は用意してもらっているが、月に1度か2回行ったときに結構、長時間居るからであり、暇な時間帯もある。嘱託職員でもない。机を用意すると言われたときに、「もう職員ではないので、末席のカウンタ越しで良い」と言ったのだが気を使ったようだ。市役所の卒業生は、国や県と違って、定年後の次の職が大変だというのも感じた。わたしは、もともと関東が出身で自宅もあるので、富山に居る気は毛頭なかったので、自宅に戻った。今、歳を取ってきたので、ダンダン富山に行くのもしんどくなってきた。まだ、夏は良いが冬がたいへんである。正直言って、最近、東京へ行くのも面倒になってきた。正直行きたくない。オミクロンもあるし・・・・。2年契約なのでそれももうすぐ終わる。これで、終わりにしようと今考えている。今後は頼まれたなかで適当に気に入った仕事だけしたい。あとはのんびり!

 身分が民間に戻った時に思ったのが、すごく気が楽になった。これは、退職された方々が、皆言うセリフである。公務員は世の中の人たちが思うほど良い職業ではないと私は思う。私の父は農林省→県庁職員だったが「公務員にはなるな。良い仕事ではない」と常々言っていた。今、個人事業主と言うのは気分的にすごく楽だ。一昨年、昨年と、これまでは、面倒なことも依頼されていたが、これからだんだんに面倒なことは断って行こうと思う。私も今年は66歳である。そんなに長生きはしない。コロナの症状で「倦怠感」と言うのがあるが、この年になると、毎日、倦怠感がある。熱が無いので安心しているが。好きにすごしたい。

 ちょうどいま、個人事業主の私は、令和3年度の確定申告書の作成をしている。それで、富山に赴任していた6年間の財政(お金)を見直してみて愕然となった。赴任前にも計算し、女房に「あんた、馬鹿じゃあないの!」と言われていたが、とんでもない赤字だ。マンション代、毎月自宅に帰る旅費交通費(富山⇔小山)。まあ、月2回、これが特定任期付きでは出ないのである。(これ、計算してみても簡単に出る)その他もろもろ、2重生活の費用。行く前のシュミュレーション以上!富山は6年間だったので、とんでもない。老後の資金の一部が、負の遺産になってしまった(笑)。60歳近くなってからだったので、洗濯・掃除・食事と不便な生活を強いられた。仕方がないと言えば仕方ない。儲けようとか稼ごうとして行ったのではない。信頼できる方に頼まれたから行き、自分でも試してみたかったことを、やってみた。まあ、あまりうまく行かなかった。やはり難しい。投資である。投資に失敗しただけだと考える。事業にはリスクも当然ある。(次回は2022年3月16日に掲載予定です)

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