道路構造物ジャーナルNET

第72回 私がコンサルに厳しいわけ

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
政策参与

植野 芳彦

公開日:2022.01.16

1.はじめに

 皆さま、あけましておめでとうございます。(少々遅いですが)
 私も、昨年11月に前期高齢者となり、のんびりゆったり、くらしたく思うのが今年の目標です。という思いもあり、富山で考えた、インフラ・マネジメントに関して前回述べましたが、残念ながら反応はない。
 今回は、いつも私が悪口?を、言っていると言われているコンサルのことを少々書いてみた。私は、構造・ハードバカで新技術やシステム開発の経験はあるが、デザインや景観などのソフト系は経験が薄い。考え方も普通ではないので、その辺は割り引いて読んでほしい。

2.私がコンサルにきびしいわけ
 頼りになる核となるコンサルが最低1社、補完できるコンサルが数社欲しい

 地方コンサルと言わず、日本のコンサルの技術力は、世界的に見れば“無い”というのが実態であろう。各自どう思うかは別物で、それが国際的評価である。個人的に、優秀で素晴らしい方々も大勢いる。しかし、全体となるとそうでもない。また、不快に思う方も居るだろう。しかし、まずは「己を知らないと」その先は出てこない。
 最近の私の評価は、地方の人間と言う評価がついてきているので、地方として言えば、「自治体の技術力=地場のコンサルの技術力」だと思う。つまり、地場のコンサルに技術力などが無いのは自治体のせい、なのである。だから、業務を本当に円滑に遂行するためには、自治体がしっかり指導できなければならないし、頼りになるコンサルも育てなければならなかったのだ。(これは過去形なのだろう)

 50代になったのころ、どうも会社で干されだしたので、次に何をしようかな?と日々を送っていた。
 次は政治の勉強をして、インフラの世界に生かそうと考えた。いわゆる「政経塾」の試験を受け4年間在籍した。夜学みたいなものだった。合宿もあった。この時の同期は50名ほどで、皆仕事を終えてから集合した。この時の同期で現在は国会議員も地方議員も何人かいる。現役の地方議員の方も数人居た。講師はいずれも超有名な方々だった。同期の連中は、皆、味わい深い方々で、休み時間やが宿の時などの議論は面白かった。ここでの勉強は、政治家の思考を学ぶ上で、財産となった。その時、この学費もあったし食べていくため、協会の事務局やコンサルの下請けみたいなことをして、コンサル等からの依頼事項などをやっていた。紳士的な企業もあれば、ぞんざいでまるで、小ばかにしているような横柄な接し方をする企業もあった。不思議とゼネコンには、そういう態度はなかった。実は、若かりし頃の裏設計時においても似たような経験をしている。まあ、お忙しいのかもしれないが、人間としてどうか?と思う。まずは人間性を疑う。これが、ここでの言動に潜在的につながっている。

 JICA沖縄研修所の途上国向けの研修コースの講師を依頼されている。私の講義は、「道路維持管理コース」の中の橋梁マネジメントであるが、ここで各国の官僚の人たちと話すと、やはり、コンサルの問題は万国共通である。JICAの研修に参加するので、恐らく日本のJICA事業やODA事業などで日本のコンサルとの付き合いが多いと思われるが、私の言っていることに、手をたたいて賛同するのは、やはり不満があるからでる。これは日本の大手コンサルであるはずだ。やはり日本のコンサルタントはおかしいのだ。これらは反省材料だと思う。欧米のコンサルタントは、日本のコンサルとは違って現場も理解している。一番重要な、経験値が圧倒的に違う。これは、多くの日本国内の“制度”の問題が大きいと感じている。例えば、示方書などに頼った仕様設計主義。積算と言う制度。発注制度。入札競争の在り方。など、すぐには変えられない法的な縛りが大きいのも民間の発展を阻んでいる。そんな中、民間の方々は、一生懸命やってこられたと思う。

 実は私の本音は、富山ならば富山に、頼りになる核となるコンサルが最低1社。それを補完できるコンサルが数社居てほしいと思ってきた。そうでないと地方は今後大変である。本当に難しい業務などは、無理でも通常の業務は地元でできないだろうか?文句を言って指をくわえているのではなく研鑽してほしい。現状では、通常と思われる業務ですら危うい。
 業務を発注するには、まず「要件」が居る。通常の指名競争入札では、本来は指名時に「指名要件」を明確にし、一般競争入札でもプロポーザルでも総合評価型でも最低の「要件」は本来明確にしなければならない。「個人の資格要件」と「企業の実績の要件」がそれである。これが、これまでは明確ではなかった。だから、できもしないものをやってもらっていたので出来が悪くても仕方がないのである。それは発注者が是正すべきである。ここで問題なのが地方の技術者は資格を持っていない。最低限、業務に合った部門の技術士は必要であろう。技術士は、とる気さえあれば、だれでも取れる。私でさえ持っている。問題なのはこれを取った後に如何に研鑽するか?なのである。あとは価値のない資格をこの国では作りすぎている。だから資格の価値を自ら下げていっている。資格主義が自分たちの首を絞めている。

 この要件は満たしても、実際にできるかどうか?という問題もある。しかし、役所はそこまでつかんでいないしわからない。監理技術者や担当者の経験や人間性にも大きく影響される。要件を満たし、業務を受注したら、「協議」は十分に行うことである。これも、役所が悪いのだが、発注時に内容が十分に固まっていない場合がある。この時は協議して決めていかねばならない。協議回数だけを見ても、東京のコンサルは意外にも平均で10回以上は来ている。しかし、地元コンサルは3回しか来ない。これは仕様書上は問題ないが、3回の協議で業務がまとまるはずはない。しかも、地元であるにもかかわらず現場も見ていない。先日笑い話で、伸縮継ぎ手の施工業者がコンサルの図面を見て現場を探したが見つからず、確認したら、「直橋のはずが斜がついていた。」と言うことを言っていた。(これは富山市ではないが)
 富山市でも、職員を見ていると、まじめで熱心に対応はしているものの、コンサルに頼りすぎで頼っている割にはきちんと、指示できていない。終わってから「出来が悪い」となるのだが、これは自分のせいなのである。自分が指示できていなかったということを言っている。しっかり技術力を高め、コンサルと十分に協議しながら、業務をまとめていく必要がある。かつて、官直営設計をやっていた時代には、官の技術力は結構あったという話である。
あとは役割分担であろうか?それぞれの役割をきちんと分担し、真摯に対応することが重要である。業務を無理して受注しても仕方がない。中身を十分に精査して(時間が無いかもしれないが)適切な人員配置で実施する必要がある。どうしても、地方のコンサルは、弱いところがある。経験も不十分である。この辺は、悪口ではない。事実なので真摯に受け止めるべきであり、それを挽回するように頑張ればよいだけである。コンサル業務を行う場合に、資格から言えば、本来複数の技術士が必要になる。RCCMでもよいことにはなってはいるが、これは是正措置である。RCCMも国家資格になると言われて久しいが一向にならない。

 どうしても地方にいると、知識や経験が、小さくまとまってしまう。(官も民も)それをいかに克服するか?これが問題である。最近では中央のコンサルを辞めて地方に移った方や、同様にゼネコンを辞めて地方に帰った方も増えてきている。そういう方を利用するのも一つの手であろう。中央がすべてではないが、やはり、情報量が違うはずである。中央では学会の活動や様々な研究会などにも、気軽に参加できるる。昨年ぐらいからはWEB会議の普及により、地方の方も問題なく、交通費もいらなく参加できるようにもなってきている。私が富山市に赴任するときの約束は、「自由に学会などに参加してよい。」と言うことであったが、いざとなると、「出張旅費が無い」となった。やはり地方は不利である。休暇を取って自腹でもよいのだが時間が無い。
 私の本音は、「早く頼りになる地元コンサルが欲しかった。」のであるが反発ばかり買ってしまったようで、あきらめた。これが私の育て方である。世の中全体が、甘い時代になっている。技術と言うものに対して緩い。最近も、ある所で話したが、「昔は通勤電車の中や、出張中に、道路橋示方書を読み込んでいる者と結構、会ったが最近は全然見ない。」世の中は甘くなっている。自分には厳しくしなければ、それなりにしかなれない。いずれにしても、若いうちである。私のような歳になってしまえばもう遅い。隠居の時期である。頑張れ!と言いたいのである。


 ほとんどの多くの職業がそうであると考えるが、実際の経験こそが力になる。簡単に言うと、例えば橋の話をするときに、実際に造ったことがあるか?管理運営したことがあるか? 非破壊検査は? 壊したことはあるか?……である。これもないのに、うわべだけの話をするのは、評論家であり、我々の世界では無意味である。我々は、「実行者」でなければならない。

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