道路構造物ジャーナルNET

②第三者影響度

山陽新幹線コンクリート構造物維持管理の20年を振り返って

西日本旅客鉄道株式会社
技術顧問

松田 好史 氏

公開日:2021.08.16

2、コンクリート構造物の維持管理の区分

 維持管理編(2001年制定版)では、維持管理の区分として、A:予防維持管理、B:事後維持管理、C:観察維持管理、D:無点検維持管理の4つを示し、構造物は、構造物あるいは部材の重要度、第三者影響度、供用期間、環境条件などによって定めた維持管理の区分によって適切に維持管理しなければならない、と定めている。
 なお、無点検維持管理は、2013年制定版では削除されて、維持管理区分はA(予防維持管理)、B(事後維持管理)、C(観察維持管理)の3つの区分に変更され、2018年制定版に踏襲されている。
表-3 維持管理の区分(コンクリート標準示方書〔維持管理編2001年制定版〕)

 RC構造物の維持管理においては、部材表面に発生しているひび割れや浮きなどの変状に着目して目視点検や打音点検を行い、その状態に応じて健全度を判定し必要に応じて補修などを行う事後維持管理が一般的に行われている。また、日常維持管理している既設RC構造物の大半は許容応力度設計法で設計されたものであり、曲げを受けるRC部材の設計では、部材の引張側に曲げひび割れが発生することを許容していることから、一般的なRC構造物では事後維持管理を前提としていると考えられ、予防維持管理を行っているRC構造物は稀である。

 これに対して、道路インフラメンテナンスにおいては、健全度判定区分として4つの区分を定め、判定区分Ⅱ(予防保全段階:構造物の機能に支障が生じていないが、予防保全の観点から措置を講ずることが望ましい状態)と診断された構造物に対して対策することを、予防保全という言葉を用いて推奨しているが、維持管理編に定められた予防維持管理(予防保全を基にした維持管理)とは概念が大きく異なるものである。維持管理区分と健全度判定区分の違いがあるとはいえ、異なる概念のものに、予防保全という同じ表現を用いることは、混乱を与えるもとになる。言葉は、その使われ方によって時には変化しつつ、次第に市民権を得て定着していくものと思うが、少なくとも技術用語は定義されたものである以上、乱用は厳に慎まなければならないと考えている。

 判定区分Ⅱのような軽微なひび割れが発生している状態は、劣化の進行過程でいえば加速期前期に相当するものであるので、判定区分Ⅲ(構造物の機能に支障が生じる可能性があり、早期に措置を講ずべき状態)を早期措置段階と表現するなら、判定区分Ⅱは予防保全段階という表現ではなく、たとえば初期措置段階(初期措置段階:構造物の機能に支障が生じていないが、ライフサイクルコストの観点から初期に措置を講ずることが望ましい状態)という表現の方が理にかなっていると思っている。

3、損傷と劣化

 維持管理編(2001年制定版)では、変状 初期欠陥、損傷、劣化について、それぞれ以下のように用語の概念を定めている。
 変状:初期欠陥、損傷、劣化などを総称して変状と呼ぶ初期欠陥:施工時に発生するひび割れや豆板、コールドジョイント、砂すじなど
 損傷:地震や衝突等によるひび割れやはく離など、短時間のうちに発生し、その変状が時間の経過によっても進行しないもの
 劣化:時間の経過に伴って進行するもの
 この用語の概念は、維持管理編(2013年制定版)では、用語の定義に格上げされて、多少の言葉の微修正が加えられて維持管理編(2018年制定版)に至っている。すなわち、時間の経過によっても進行しない「損傷」と、時間の経過に伴って進行する「劣化」を明確に区分している。
 土木学会が維持管理編で定めた用語の定義なので、当然、土木学会関係者や土木学会主催行事等では皆が意識して使用して当然と思うが、聞くに堪えないほど損傷という用語が氾濫している。たとえば、昨年11月から今年2月にかけて開催された「地方インフラを対象としたメンテナンス講座」全4回シリーズでは、主催者挨拶でも特別講演でもパネルディスカッションでも、正しくは劣化という用語を使用すべきところを、損傷という用語をたびたび使用していたし、誰もそれを指摘しない光景を目の当たりにした。決めたルールは守る、守れないルールは作らないことが基本と考えるが、用語の氾濫を拡散している当事者たちの猛省を促したいし、ルールを守れないのであれば示方書改訂小委員会で議論して改めるべきと思っている。(次回は9月16日に掲載予定です)

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