1.はじめに
新型コロナウイルスの感染が収まらない中、オリンピックを開催する勇気に敬意を表したい。ますます、インフラメンテナンスの問題とコロナウイルスの問題は同様であると感じている。細かい話は抜きにして、日本と言う国が、全然進んでいないのであきれるしかない。第二次世界大戦において、様々な課題が露呈されているが、結局、何も変わってはいない。結果がどう出るかはわからないが、目的意識の不在、リスクへの挑戦であり、その勇気? には感心する。
同様にインフラメンテナンスに対しても勇気をもって、挑戦すればよいのだが、妙に慎重で妙に大胆である。
2.新技術等に関する現状
かつて一度書いたが、最近新技術導入の機運が高まっている。新技術を積極的に活用するということは非常に良いことだと思う。しかし、安易に使えば、効果が無い場合が考えられるので再度述べたいと思う。何が一番重要なのか、目的意識である。「何のために使うのか?」「それを使って、何がわかるのか?」「失敗した場合はどうするのか?」結局は、既存技術も新技術も、「道具」に他ならない。すぐに道具に過信してしまうのは敗北する過程の一つである。新技術は使う側の問題が大きい。昔から「馬鹿と鋏は使いよう」と言う。
新技術の公共事業適用に関しては、なかなか進展していない。SIP技術でさえも採用は限られている。なぜなのか?私自身よく質問を受ける。非常に厄介な質問である。なぜかというと、そういう質問をしてくる方々は「公共工事の何たるか?」「発注者の心理」「新技術の評価」など、本質の考えが間違っている方々が多いからである。発注者は、先例のあることを守りたがり、冒険を犯そうという者は、ほとんど居ない(特に自治体は)。逆に先例さえあれば、さほど有効でなくても、いつまでも馬鹿みたいに適用し続ける。第1例目と2例目では、ハードルの差が、全く違う。
個人的には維持管理に新技術を導入しコストダウンや手間の削減を目的に採用していくのは非常に良いと考える。私、個人的には、新技術を積極的に導入し、有効に活用し、コストダウンや耐久性の向上等、「持続可能な富山市」に寄与出来るものであれば、積極採用していこうと考えていた。それは「富山市橋梁マネジメント基本計画」の中でも繰り返し方策を設定している。ただし、ある程度の担保が必要である。
①技術認証の確認
その技術が、認証されているか?できれば、「技術審査証明」これが無ければ、土木学会や、NEXCOの認証等があればOK。NETISについては、それだけでは認めない。
しかし、まず「技術審査証明制度」が認識されていない。民主党政権時に制度が変わったが、旧の「大臣認定」である。「建築確認申請」とも比較されるがこれよりも厳しい。これに関する知識の無い方が、ほとんど。まずは、この辺の知識もないようでは、建設事業に精通しているとは言えない。
NETISに関しては、業者側から「国の認証を取りました。」という説明がしばしばあるので「技術審査証明ですか?」と言うと「NETIS」だと答えがほとんど。「NETISは認証ではありませんよ。」というと、ポカンとしている。NETISは「認証」ではない「登録」である。所定の書式の基づき申請があれば、登録される。その後、評価が行われるV型と言われるものもあるが、中には数年後に問題を起こし取り消される技術もある。
できれば、技術審査証明を取得していて、マニュアル等の整備がキチントされていて、問い合わせ等責任の所在が明確なこと。担当者が、後に困るのは、其の技術の信頼性である、後になってから、何もないと仮に会計検査等で指摘された場合にかなり難航する。何らかの担保が必要である。かつて、JICEに在籍中に、この技術審査証明を担当したが、担当者も申請者も大変である。費用以上に大変な労力を要する。私が担当した中で数件は審査途中で自ら審査を取り下げた。それだけのものなのである。
「特許」に関しては、建設業界では諸刃の刃である。取得までの努力は認めるが公共事業では、業者指定となりかねず、なかなか難しい。つまり通常は使えない。せっかく特許を取得しても、使えないとなってしまいかねない。公平性、競争性が保てないからであるが、最近、この辺の考え方も変わってきているのか、安易に特許工法を採用している事例も見受ける。発注者の、明確な考えがあってならばよいが、そうでないと危険な行為である。この辺も民間の開発者の方々は分かっているだろうか?
②フィールドは用意するが、やってみる気はあるか?
これは、開発者のやる気を確認するうえでも、「フィールドは用意するが、やってみる気はあるか?」と言ってみる。さらに、「金は試験施工と言うことで出ない。それでも、やってみるか?」ここまで言うと、ほとんどの業者は、帰って行く。金儲け主義ではないか?挑戦心があるか?確認している。あわよくば、お金だけほしいと言う業者が多い。さらには、挑戦心があれば、失敗しても、困難な現場でもなんとか実施できる。
時代のキーワードに乗っかれば、金儲けができるという、業者が多いので、其れを篩い分けるわけである。ほとんどは逃げる。私は、其の会社の覚悟を見ている。覚悟があれば、トラブルが起こっても、対処してくれる。飴として与えるのは、「うまく行ったら、富山市で実績がある」と言ってよい。「実績や施工結果を学会や技術雑誌に発表しても良い」とも言っている。しかし、この「自治体での実績」と言う価値がわからない方々が多い。