道路構造物ジャーナルNET

㉓東京駅に至る中央線の重層化の工事(その2)

次世代の技術者へ

土木学会コンクリート委員会顧問
(JR東日本コンサルタンツ株式会社)

石橋 忠良

公開日:2021.07.01

3.仮の軌道から、半日で本設の位置に線路と桁を移動させる

 約220mの日本橋川側の高架橋は、一時的に電車の運行を止めて、本来の線形の位置に戻します。桁を最大6.64m横移動させることになります。私は、1回で終わりなので、人間で管理したほうが確実だと思って勧めましたが、施工者はコンピューターでの管理を採用しました。
 図-4は桁断面の移動の概略図です。図-5は桁移動を行う範囲です。


図-4 桁の横移動

図-5 桁を横移動する範囲

 写真-7は桁の横移動の作業中の様子です。桁移動後、桁の仮固定を行い、この後、軌道や電気工事なども作業を終えて、新しい線路に列車を通します。横移動は、午前5時44分に始まり、午前9時32分に終了しました。この工事は中央線の東京―お茶の水間を、終電から翌日の午前11時まで運転を休止して行われました。


写真-7 桁を正規の位置に横移動(1996(平成8)年11月17日)

 この移動したままの状況では、桁式構造なので耐震性を上げるために、その後、桁のラーメン化を行います。
 写真-8に完成時の線路側からの状況を示します。写真-9は、丸の内からの完成時の状況です。日本橋川にかかっていた橋梁の親柱は、この中央線の線路の移動で支障するので撤去されました。東京駅近くの中央線高架橋下には撤去された日本橋川の橋梁の親柱が移設して置かれているのが見えます。


写真-8 線路側からの完成状況

写真-9 丸の内側からの状況(右側に元の日本橋川の橋の親柱)

4.終わりに

 デザインを尊重して構造を考えるには、設計基準などの根拠を知ったうえで、それを超えた構造として対応することも必要です。デザインのためにコストが大きく上がってしまっては意味がないので、コストの上がらない材料の組み合わせや、施工法を同時に考えなくてはなりません。鋼管巻きRC柱や、完成時に外観がそろうように移動量を変えて桁を一時的に据え付けて列車を通すなど、コストが上がらないように知恵を出しています。デザインにこだわる場合には、構造技術者が、構造検討にエネルギーをかけることも必要です。
 形状が難しいコンクリート構造物は、型枠のコストがかかります。型枠の転用回数が多くなるようにデザイン側で考慮することも大切です。転用回数が多ければ、形状の複雑なものもコストをあまり上げずに製作可能となります。
(次回は2021年8月1日に掲載予定です)

参考文献
1)大庭光商ほか:高密度軸方向鉄筋をスパイラル鉄筋で補強したRC柱の交番載荷実験、土木学会論文集、E2,Vol.68,No.1,93-105 ,2012
2)SED No.1 東日本旅客鉄道【株】構造技術PT.監修 1993-11
3)SED No.2 東日本旅客鉄道【株】構造技術PT.監修 1994-5

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム