3.ドローン点検の課題・今後の在り方
ドローンによる点検が一般化すれば、点検車が削減することで、交通規制とそれに伴う交通整理員が削減できたり、危険作業(梯子)を減らしたりすることになります。1現場当たりの点検時間も点検車を比較すると、作業時間の短縮、夜間作業が結果、点検作業の生産性が向上します。
一方で、ドローンを導入する事で課題もあります。例えば、天候に左右されやすく雨が多い時期は予定がずれ込みます。また、触診や打音点検ができない点も弱点となります。橋梁の規模によっては、点検作業の工数も増える場合があります。
そのため、今後の在り方として、インフラの点検、維持管理をこれまで支えている、人材、特に地域の産業になるべくドローンを普及する。また、点検時に視診が必要となるような橋梁に対しては、それができる技術と組み合わせ、より適切な手法を検証しています。検証の結果については、別途ご紹介させていただければと考えています。技術が適材適所に組み合わさる事が、点検業務に対しても最も効率的な成果が得られています。
また、定期点検のような業務に関わる人材が、ドローンを活用していることは、災害時にも直ちに対応できることから、インフラ施設の維持管理という観点では、大きな効果があると考えています。
4.新技術導入フロー(案)と点検作業の効率化
道路橋の定期点検は、基本、近接目視による点検を行うこととされているため、自治体からどのようなプロセスを経て、ドローンに限らず新技術を導入していいか相談を受けることがあります。「新技術利用のガイドライン」には、その概要が記載されていますのでその運用の案として補足したいと思います。
定期点検が委託業務として発注されている場合、受注者が新技術の性能カタログを参考として活用し、技術を選定、発注者に対して技術活用につて協議します、その協議内容に対して、発注者が承諾するか否かを確認します。または、あらかじめ発注者から活用について検討することが示されていたり、受注後の協議段階でその旨が提示されていたりします。
ただ、具体的にどのような技術であれば(提案)承認できるか、これを判断した経験や身の回りに事例が公表されえおらず、その協議に躊躇している受注者や、具体的な進め方のイメージが持てない発注者もあるように感じています。
資料に中に新技術をどのように活用するか、点検業務の流れに入れ込んでいます。まず、定期点検が2巡目である事を踏まえると、計画準備段階で5年以内に点検した記録をチェックし現地踏査を行うことになります。その際、新技術活用の検討を行うことになります。例えば、点検車を用いることで交通規制による道路利用者への影響が大きい場合や、足場などの設置で過剰な経費が発生する対象の橋、まずは、そういう橋に点検記録から状態を推察し、新技術導入を図る事が多いと感じています。
また、健全性が損なわれるような劣化部が顕在化した場合、視診、打音しないと診断できない場合は、その段階で点検手法を切り替えればよいと考えられます。
5.デジタル化の必要性
定期点検を繰り返すことで、調書作成が上書していくことになります。繰り返し点検を進めるたびに、調書作成等の内業は徐々に非効率になっています。既に、点検の外業と内業の工数比率の実態は5:5程度となっていると感じています。
例えば、損傷図の作成では、前回との違い(または、劣化が進行していない事)を示すために、表記の色を区分したり、コメントを書き加えたり、点検を重ねる毎に煩雑になってきています。ドローンを活用することで、定期点検がデジタル化前提となれば、そのような記録のための手間も省かれ、前回の状態との対比も一目瞭然です。
また、点検記録は多くの様式を組み合わされます。点検調書を全て理解できる管理者も少なくなってきているように感じています。
近年の3次元化技術やAI分野の技術革新が著しい事を考慮すると、ドローンをはじめとするロボットが橋梁全体を網羅できる撮影を行い、損傷部分をAIにより検出する事ができるようになります。ドローンを活用することで、こういった、メリットも生まれてきます。
6.橋梁点検以外への展開
インフラの老朽化が進展していく一方で、それを適切に診断し守る技術者は減少していくと感じています。限られた人材で支えるには、これまでと同じ手法を継続していくのは限界があると考えています。
インフラ施設では道路や鉄道施設が経験として先行しているため、その現場で養われたノウハウを、橋梁以外にある膨大なインフラを守るために上手く使いたいと考えています。
ドローンについても、法整備が今後整ってくるため、施設の維持管理を効率化していくための手段として適切な使い方、技術開発を提案したいと努力しています。
(次回は2021年7月中旬に掲載予定です)