道路構造物ジャーナルNET

①~ドローン×AIでインフラ点検の効率化・デジタル化を目指す~

「支える人を、支えたい。」

株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク
エンジニアリング部
技師長

春田 健作

公開日:2021.06.17

1.インフラ点検×ドローン

 まずは、掲載の機会を頂きまして感謝しております、ありがとうございます。

 最初に、私がドローンによるインフラ点検に出会ったキッカケについてご紹介させて頂きます。
 これまでの略歴として、建設現場・設計((株)富士ピー・エス)、国交省の研究機関(国土技術政策総合研究所)、2つの地方公務員経験(豊中市・京都府)を経ています。橋梁の架設工事で現場監督員、自治体の長寿命化計画の基礎となる基礎データ収集要領(案)(平成19年)、道路橋点検要領(案)、道路橋示方書の改定作業に携わることができました。地方自治体に転身した際も、その経験を実践する立場で携わることができたのは、よい経験だったと感じております。
 特に、道路施設の定期点検の地域一括発注が全国的に導入される時期に、技術センター(京都府の場合、(一財)京都技術サポートセンター)の設立・配属、実務でも、他府県の職員、多くの市町村職員、(一財)橋梁調査会のアドバイザーの皆様と一緒に施設点検に取り組めたことが、経験の幅を大きく広げてくれました。
 これまで、叱咤、助言頂きました恩師、諸先輩方、意見交換させていただきました、都道府県および市町村職員、市町村ど~ろ会議メンバー、NPO京都ドローン普及・技術研究プラットフォームのメンバーに改めて感謝しています。

 振り返ってみると、インフラを「造る」ことから「守る」方面にライフワークがシフトしてきました。どうやってインフラ点検や地域の維持管理が効率化できるのか、世の中が回るのか、日々、考えるようになり、建設業界へのドローン・新技術・デジタル技術活用にたどり着いたように思います。
 同時に、地方自治体で建設事業の監督職員になって実感したのですが、発注者側職員も地方の建設事業者も、余裕なく働いていました。特に、災害が毎年のように起こるようになると、管理者、建設コンサルタント、建設業者が多忙を極め、本当に高齢化している、頼れる技術者や企業が少ない(少なくなった)、特定のエリアにはそもそもいない、という実状を目の当たりにします。
 この経験と想いがあり、株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(以下JIW)に転身することとなりました。
 JIWは、2019年に西日本電信電話株式会社(NTT西日本)によるドローンを用いたインフラ点検のスタートアップです。通信、電力、ガス、鉄道、道路、ダム、といったインフラ施設の点検業務や開発を行っています。そのため、システム、AI技術開発といった他ジャンルの人材がいます。これまで関わったことがないメンバーと交流し、切磋琢磨しながら、世の中の維持管理に役立つツールを開発しています。

2.点検用ドローン開発の経緯 

 会社が設立した2019年(令和元年度)は、ドローンによる橋梁定期点検の実績も、直轄と自治体の橋併せても十数橋でした。その多くは、従来の点検手法との違いを検証するために、点検車等による点検成果とドローンによる点検成果を対比するといった状況で試行導入段階でした。
 2020年(令和2年度)は、点検支援技術性能カタログも充実し、かつ、定期点検を受注している建設コンサルタント会社の協力が得られたことから、100以上の現場実績を積むに至っております。
 そのドローン(J2:skydio R2 for Japanese Inspection、【BR010009-V0020:全方向衝突回避センサーを有する小型ドローン技術】)の開発に至る経緯を紹介します。
 JIWとして橋梁下の点検のためのドローン開発は、当初、非GPS環境で自動飛行ができ、高性能な画像が取得できる大型のドローンの開発を進めてきましたが、検証、実践を繰り返すことで開発方針を転換することになります。
 ドローンが非GPS環境で安定して自動で飛行すること、かつ、高画質な画像を取得する事を重視したことで、いかにも産業機といった様相でした。

 機体の完成度が上がってきても、一方で課題が多く出てきます。例えば、現地へ運搬するためのコスト、自動航行のために事前にプログラムを組む作業が必要であったり、組み立てるため時間も1時間程度は必要であったりと、実践に不向きだと解ってきました。
 そもそも、従前の定期点検では、1日に複数橋点検をこなす必要があります。それに、連日の現場を想定すると、機体台数も確保が必要であること、操縦者の人材育成と、そのトレーニングコストが課題となります。

 ちょうど、そのころ、使用する部品の制約もあり、衝突回避機能を有する機体を橋梁点検に利用するという事に着想しました。もともとは、自撮り用のドローンで森林の中で木々を交わしながら、バイクや自転車に乗った自身を追いかける目的で開発されており、橋梁のような対象物を撮影することを想定していない機体だったため、数カ月間、米国メーカーとトライアル繰り返すことになります。
 まず、メーカー側のエンジニアを点検の現場に同行して、どんな部位を撮影する必要があるのか、理解してもらうのに時間を要します。桁橋の内部(桁間)から下を見たい(フランジ面)、添接部に接近しボルトの頭の腐食程度を確認したい、支承部を撮影したい等、点検時に重視して観察する事項を説明していきました。
 メーカーとしては、そもそも、ドローンは上空から下を撮影するものなので、「上方を撮影する必要性がわからない」、「わざわざ近接できるようにすると危ない」、「外から見えているのに、わざわざ、桁部材の桁間から撮影しなければならないのか」といった意見があがってきましたが、わざわざ、近接点検している理由を説明してくことで、一つ一つの機能が付加され改良に至ります。そこで、桁内の対傾構を潜り抜けたり、耐候性鋼材の初期の発錆まで確認できるよう近接したりすることが可能となりました。
 ドローンをはじめとする新技術開発に携わることができ、その中で得た教訓があります。機体やソフトウェア性能、AI技術等の革新は日進月歩で、極めて早いため、新技術の活用や開発に重要なのは、利用する側の、何のために、どの程度の精度でよいとするかを、反映することにあります。ここに、利用しようとする側の経験や知識が必要となるわけです。
橋梁点検以外にも、この機体改良時の経験が活かされ、I-Constructionの推進のため、建設現場へドローンを導入する事業や、水中を計測する技術開発、鉄道の検査事業へ展開していく基礎的な考え方となっています。

参考:国土交通省HP 点検支援技術性能カタログhttps://www.mlit.go.jp/road/sisaku/inspection-support/



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