道路構造物ジャーナルNET

⑲設計の再評価と維持管理

現場力=技術力(技術者とは何だ?)

株式会社日本インシーク
技術本部 技師長

角 和夫 氏

公開日:2021.04.01

(6)「維持管理の時代に強い会社」とは

①必要な3要素
「維持管理の時代に強い会社」とは、何を満足すればよいのだろうか? いろいろな組織で仕事をするたびに考えさせられる。私が思うに「組織・人財・費用」というところだろうか。

②組織
 組織とは、やるべきことをやる・やれる組織であり、お飾りの組織ではないことは皆さん、重々ご承知のことだろう。管理者側には何でこんなに仕事をしない、できない組織が多いのか。人の顔(上級官庁)ばかり気にし、自分の見識・経験知もなく、技術力を磨かず、風見鶏で生きてきた人間だけが生き残る、こういう組織は近い将来淘汰されることを期待している。
 終焉に近づく組織の中には部署の名称をしきりに変更するところがある。はっきり言って、何をするために、どのようなスキルが必要なのか、何人必要か、を構築できない会社である。仕事をするための組織を作るのが当たり前であるが、人が多過ぎて個人の技術力や力量も分からないまま、五月雨的に組織を作っては、人を動かす。社員にとってはいい迷惑だ。

③人財
 第二・第三の「ヤネフさん」育成計画である。大規模構造物を管理する道路会社にあっては、ニューヨーク州のヤネフさん*1)ではないが、第二、第三のヤネフさんを育てるべきだと思う。
「人財」は「人材」ではない。「人は即ち会社の財産」である。貴重な財産を1人前に育てあげる必要がある。それができない組織では人財は育たない。
 とある道路会社のことである。出先の技術者を本社に集めて研修をするという。研修の講師を頼まれたが即座に断った。いかにも「研修やっています」という上級官庁へのポーズである。
 維持管理で人が足りないというのなら、出先の事務所の所長なり、副所長なり、課長なり、が実橋を使って講義をすれば良いではないかと主張した。当事者が知識不足ならば子会社の技術者(子会社の中には建設時代から施工管理をしていて、そのまま点検や維持工事に携わっている「橋守」のような知恵袋がいる)に頼めば良いではないか。
 本物の教材が各事務所に転がっているわけである。人事異動で他の事務所に移ろうが、「橋」という教材は厳然とある。如何せん、講師となるべく経験者が稀有な状況の昨今では無理なことではあるが、そういう会社にした責任は会社にある。
 阪神高速技術に転職した時のことである。親会社、子会社、協力会社を含めた研修施設(カリキュラムを含めて)の計画を当時の南荘社長に頼まれた。社長は交代されたが3年後、研修室を発足。4年後、無事階層別、職種別研修をスタートさせることができた。現在は、当時の優秀な部下達が引き継いで進めてくれていることを願うばかりである。
※1;ヤネフさん Dr.Bojidar S.YANEV、ニューヨーク州交通局(NYCDOT)
    著書;「橋梁マネジメント-技術・経済・政策・現場の統合」

④資金
道路会社で言えば、通行料収入からどれだけ維持管理費に充当できるか、である。国・地方公共団体ではどれだけ税金を投入することに社会のコンセンサスが得られるか。ライフサイクルコスト(LCC)の概念は特に重要である。
 本四橋は、世界初の・・・、世界最長の・・・、というフレーズで完成されたビッグプロジェクトである。世界に誇れる技術力を手にしたのである。私自身、長大橋の建設にお金を掛け過ぎた感が否めない。だからこそ、維持管理段階において積極的に設計検証を行い、仮定である「アンノンファクター」を取り除いて身軽な維持管理をして欲しいものである。

(7)最後に

 前人未到の長大橋の設計を行う場合、様々な調査・試験・実験・研究・解析等が行われる。この中には、風荷重による動的挙動の把握や巨大地震等の想定や挙動の把握、がある。昔、設計検証という言葉が公団内に流行った。動態観測機器を使って、貴重なデータを取得し、設計や解析の妥当性を検証するものである。
 今回の話題もこれらの動態観測データを有効活用したことと、ダンパーの性能試験データをきめ細かく分析したこと、により維持管理費の縮減、つまりメンテナンスサイクルの延長が可能なことを証明した。
 連載第18回(2021年3月1日掲載)でも紹介したが、東神戸大橋のベーンダンパーは長年の間、油漏れを起こしていた。点検で気付いているはずなのに放置されていた。重要なのはデバイスが設置されたことではない。必要な機能が発揮できるのか、を定期的に調査・診断することである。明石のように5年ごとのオーバーホールをメーカーに言われたからするのではなく、必要な性能を検証・確認し、潰さないまでもメンテナンスサイクルを伸ばせばいい。
 世の中に制振装置が出回っている。斜張橋の主塔(荒津大橋)やケーブル(荒津大橋、天保山大橋、幸魂大橋、湘南銀河大橋他多数)、鋼床版連続箱桁橋(関空連絡橋や東京湾アクアライン)等。今回の検討時に各管理者にメンテナンス方法をヒアリングしたことがある。まともな回答はほとんどなかった。各管理者の方、「巨大地震や台風が来た時、枕を高くして眠れますか?」 真剣に悩んで下さい。
(次回は5月1日掲載予定です)

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