道路構造物ジャーナルNET

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」㊷

北海道におけるコンクリートの品質確保の取組み

国立研究開発法人 土木研究所
寒地土木研究所
寒地保全技術研究グループ 耐寒材料チーム
主任研究員

吉田 行 氏

公開日:2021.02.24

5.試行後のアンケート調査

 試行工事後に発注者と受注者に対して、チェックシートによる施工状況把握および目視評価による出来ばえ確認の効果と、試行における意見や要望に関するアンケート調査が行われているので紹介します。
 図-12は試行3年分のアンケート調査結果の一例ですが、本取組みにおける「チェックシートによる施工状況把握の効果」や「目視評価による出来ばえ確認の効果」については、効果があったもしくは現時点では効果は明確でないが可能性は認められたとする回答であり、一定程度の効果が受・発注者ともに確認されています。具体的な意見として、施工状況把握については、役割が明確になり作業の見落としが減少し丁寧な作業を行えた、チェック行為自体が意識改革につながった、項目が明確で作業員全員に正しい施工方法を周知できる等が、目視評価については、次回打設への改善点が把握でき改善につながった、受・発注者間で問題意識を共有できた(改善意識の向上)、評価を直ぐに次施工に反映でき施工のPDCAにつながった、等の建設的な意見が多く挙げられています。また、品質向上以外の効果に関しては、項目の事前確認による安全意識の向上や安全対策の実施につながった、現場に行く機会が少ない若手監督員の技術力(施工知識)の向上につながった、生コン製造者や圧送作業者含め全員で共通意識をもって施工を実施できた、等が挙げられています。なお、施工状況把握についてはセントル内の閉所空間でのチェックが困難との意見が、目視評価については、色むらの判定は脱型直後ではなく色調が落ち着いた時期に再評価すべきとの意見や、複数名でばらつきがあり評価が困難、一部が極端に悪い場合に評価・改善指示が難しいとの意見もありました。

 一方、今後の取組みについては図-12に示すように、全工事で実施すべきという積極的な意見もありますが、多くは限定的に実施すべきという回答でした。その背景には、受・発注者ともに負担が増加するということがあり、効果が高い大規模で打設回数の多い工事(長大トンネル、長大橋)、重要構造物、低入札工事等に限定したり、チェック時間の短縮や回数を少なくして実施、受・発注者の意識改革につながるため全工事で実施すべきだが負担軽減の観点から、施工状況、目視評価については状況に応じて品質証明員で対応や第三者に依頼するなどの措置も必要(取組みの「行為」だけでも少なからず品質向上に繋がる)、改善前に施工が完了してしまう多工種・小規模工事であっても品質向上の取組みは重要なため意識向上としての説明会などの実施も良い、等の意見が挙げられています。
 以上、試行後のアンケートから、受・発注者とも本試行によるコンクリートの品質向上効果はあるものの、目視評価の判定が難しく、試行の対応についても少なからず負担を感じているなど、運用上の課題があることが確認できました。

6.おわりに

 平成29年度から始まった試行工事は3年目を終えました。それまでは意識すること無く施工されていたコンクリートの品質について、少なくとも試行した現場においては品質を意識する機会ができただけでも大きな意義があったと言えますが、試行した多くの現場において、実際に品質の向上を実感していることが目視評価の結果やアンケート調査からも明らかで、施工状況のチェックや表層目視評価の有効性については発注者も受注者も確認しているところです。一方、運用面からの課題として、対応するための負担の増加が受・発注者双方から挙げられ、特に発注者からは現場立会に対する負担の声が大きい状況でした。北海道においては、現場と事務所の距離が遠く、冬季の早朝工事になれば更に対応は困難となります。しかし、発注者の現場立会については、チェック効果だけでなく現場に行くだけで施工者の意識が変わり、安全性向上等の副次効果があることも多数報告されています。このため、現場条件に応じて事前チェックで当日のチェック項目を減らしたり、ウェアラブルカメラ等による映像と音声の双方向通信を使用した「遠隔臨場」を活用するなど、負担軽減を図りながらチェックや評価する方法について考えていくことも重要です。また、表層目視の評価基準がわからないとの意見も多く挙げられていましたが、これについては、山口県で取り組まれているように、良い構造物と悪い構造物を実際に見て点数付けしながら学習するのが最良であり、北海道においても学習会の開催等を検討していく必要があると考えています。

 この原稿の執筆中に、令和2年度における国土交通省の品質向上の試行工事の取組みも始まっています。今年度の取組みにあたっては、試行工事を展開している国土交通省大臣官房技術調査課と連携して、土木学会350委員会と後継の356委員会(養生および混和材料技術に着目したコンクリート構造物の品質・耐久性確保システム研究小委員会)が全面的にサポートしており、コンクリートの品質確保の取組みがさらに発展することが期待されます。北海道においてもこの取組みの継続を念頭に、北海道土木技術会等の場を活用して産官学が議論しながら活動を前進させていきたいと考えています。(2021年2月24日掲載)

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