道路構造物ジャーナルNET

第61回 「甘えの構造」が導き出すリスク

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
政策参与

植野 芳彦 氏

公開日:2021.01.16

1.はじめに

 皆さま、あけましておめでとうございます。本年は、新型コロナウイルス問題が、一刻も早く落ち着き、皆様にとりましても明るい一年となることを祈念いたします。
 昨年12月2日のNHK「クローズアップ現代+」の放映後、様々なご連絡をいただきましたが、思いのほか少ないのと、全く違ったことを言ってくる友人もいて、少々がっかりしています。同じ、土木にかかわる人間でも分野によってとらえ方が違うのだろうと思います。
 私にとって、今回、最大の喜びは、NHKの若い3人のディレクターと1人の記者との出会いです。彼らは彼らなりに、物事をとらえ、考えていました。そういう姿勢がどの世界にも必要であり、将来必ず、世の中のためになるだろうと感じたこと。まずは発信しないことには、世の中変わりません。
 さあ、今年からはより本音を言い、課題提起したい。きれいごとでは、乗り切れないからである。どこから話すべきかでありますが……。

2.これまで気になっていたこと

 富山市では、今年度より橋梁保全対策課を、「道路構造保全対策課」として、15人体制にした。これまでの、橋梁保全を中心とした体制を、「個別施設計画の策定」に合わせた。橋梁の新設を含め、道路構造物全般の保全対策をしていくことを目指している。いまだ、なかなか担当の移管がうまく追いついていないが、現在はトンネル関係を移管しつつある。
 それで、これまでわからなかった問題が明るみに出てきている。もともと、トンネルは非常に難しい。専門家も少ない。笹子トンネルの事件を単に「老朽化」ととらえているが、そんな単純ではない。あのトンネルの詳細の条件も知らないので、何とも言い難いが、あの場合はトンネル本体が崩壊したのではなく、天井板が落下したのである。付帯設備というべきものが、老朽化し落下したわけである。(これも報道などの情報を総合的なおかつ簡便に表現している)そもそもが、構造物本体の問題と付帯設備の問題というものがある。本体に関しては、計画・設計時からかなり気を使って検討を行うのが普通であるが、付帯設備になると、少し気が抜ける。

 さらに、完成当初と経年変化では、様々な強度が変化してくるというのが、わからない方々が居る。維持管理と言うものを計画時から考えられるかどうか? 将来を、新設時とは違って割り引いて考えられるか? というところである。

 かつて、北海道の豊浜トンネルの事故があった。これは、トンネル本体と言うべき岩盤の崩落であった。どうも、私の感じるところでは、「本当にその場所にトンネルを掘ってよかったのか?」と言う疑問のものがある。十分な検討がなされたのか? 今、点検に当たり、点検者(コンサル)は、覆工のひび割れを見つけて喜んで、補修しようと、ひび割れ注入を提案して、さらに覆工板の裏側の空洞を埋めるくらいまでは提案できている。
 しかし、本当にそれで“点検”としてよいのだろうか? と言う疑問がある。トンネルの場合、ひび割れの原因や重要度を確認するために、本来であれば、その山自体や周辺の地質情報などなどが重要だと思うが、地方自治体ではまず、設置当時の情報が残っていない。そこで、調査をするにあたり、本来ならば、この辺も整理しなければならないのであるが、地元コンサルでは思いがそこまで回らない。トンネルはもちろん本来は橋梁などにおいても地質データは重要である。

 どうも、橋梁を見ていて気になるのが、下部工、基礎工である。上部工はまがりなりにも、視ればある程度は分かる。しかし、下部工・基礎工はどうなっているかわからない。ひび割れの出方などで推計するしかない。鉄筋探査法もあるが、現存の技術で判別できるのは表面から20cmくらいまでで、1段目の鉄筋までである。 
 結局今の「点検マニュアル」での点検では表面しか見られていない。近接目視でも打診でも内部までは見られない。つまり「真相は分からない」のである。かなり熟練した十分な知見を持ったものが見れば、「疑わしいので、詳細点検を」となるのだが、なかなかそうはならい。つまり、現状の点検精度では、点検する点検者やそれを管理する官庁の職員の技量により、表面だけしか見れていなく、危険要素を含んでいても、見逃してしまう可能性が大きい。しかし、橋梁技術者はもともと少ない。その中で点検をしろと言われても、なかなか難しい。
 なので、現状では、全国にある橋だけで、約70万を5年に1度点検するにあたり、ある程度の資格を有するコンサルなどに委託できるように、平準化したマニュアルが整備されているわけである。これは、数量の多いものに対し実行するうえで極めて重要な方策である。一応はチェックできる。仮に問題が起こっても、その数は抑えられるであろう。という判断の上で、使用するならば問題はない。しかし、世の中ではすぐに「マニュアル」「マニュアル」と言ってありがたがるが、その先にあるもの、裏にあるものがわからないと、将来的には事故を起こす場合が出てくるであろう。

 ではどうすればよいのか? 問題の無いものは良いとして、管理者が不安なものや、疑問なものは、詳細点検などを行い検討し判断するべきであり、自分たちで判断できなければ、知見のある人に見て意見をうかがう必要がある。この時に重要なのは、「学識者」ではなく、実際の実務経験が豊富な判断のできる方であるということである。その方々の判断ができるように追加の検討も必要かもしれないが、それをやらなければ意味がない。
 ファーストステージが終了し、セカンドステージに移行した今、「とりあえず」点検するという時期は過ぎ、ある程度の課題は抽出できたはずなので、次はその課題をつぶしていく作業となり高度な判断も必要となる。どう対処するかはそれぞれの管理者次第である。

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