点検は「率」ではなく、「精度」を追求すべき
点検手法の実証試験もどんどんやるべき
3.懸念する物
最近の傾向を見ていると、「点検率」が問題視されている。確かに決められたルールに基づき点検を実施し其の率を上げていくことは、管理手法としては有効である。しかし私は「率」よりも「精度」のほうが、後工程を考慮した場合重要であると思う。点検はしたが、中身がいい加減では意味が無いからである。これは、我が富山市で散々苦労している。点検する者が分かっていないのか?見落としなのか? 手抜きなのか? ここが問題であるが、精度が悪いのは致命的である。後行程の補修の工法や補修範囲を決めるに当たっても、点検の精度と言うのは重要である。ここを懸念している。
このへんで、様々な面で真実に目覚めたらいかがだろうか? 真実に目覚めなければ、有効な管理は出来ない。潤沢な予算があるところは問題ないが、限られた予算の富山市のようなところは非常に苦しい。この辺も、真実の議論が必要であろう。誰がどのように点検を行ったほうが効率的で正確なのか? を検証する必要が有るだろう。かなり無理をして点検しているモノもある。そして、点検フィーに関しても適切なのか?(下げろと言う意味ではない)
もうひとつ、現状で足りないのが、「実証試験」である。様々な点検手法や補修材料などの実証試験が、あまり行われていない。私のところでは、やりたいと言えばオープンにしている。そのせいか、最近は実証試験をやりたいという企業や研究者がだいぶ増えてきた。大学の先生方も注目し始めた。正直、遅い。しかし希望があれば、フィールド提供の協力をする。
京都大学 塩谷研究室の実証試験(例)
富山市の管理する、「八尾大橋」などは、実証フィールドとして人気である。少し前までは「神通大橋」もそうであった。今後、様々な維持管理の場面では、これまで以上に「実証されているかどうか?」が重要な局面を持ってくる。我々も、知りたいところである。なぜかと言うと、維持管理はリアリズムだからである。フィクションである設計とは別物なのだ。富山市ではフィールドは極力お貸しするので、試して欲しい。相談に応じる。ただ、費用面での協力は出来ない。これも、早くやら無いと、手遅れになる。もう遅いくらいなのだ。
先取の気概で仕事をした方が面白い
私は、これまでの仕事人生で、先進的なテーマに関して一貫して取り組んできた。世の中の流行に流されること無く、橋梁や構造物をベースに今後必要と思われることに取り組んできた。20代では、橋梁そのものを学びながら、自動設計システムやCAD/CAM、データベースのシステム開発、標準化など。30代では、コスト縮減や耐震設計、積算基準、自動化施工、3D化、AI。40代では木質材料、PFI。50代では、維持管理、モニタリングシステム――などである。
どちらかと言うと当時は主流ではないが、先取りしてきた形である。こういうことをしていると、周囲からは「馬鹿じゃないの」とか「暇だね」とか言われてきたが、他人が思うほど暇ではない。まあ、世の中の多くの人間は自分は忙しいと思っている。私は、どうしても本流になりたがる人たちと争う気は無いので、本流は避けてきた。私の性格として、先進性のあるもの、他人がやろうとしないモノに関しては取り組むが、多くの方々が参入してくれば、面白くないので撤退するのが常である。軋轢がおきるからである。維持管理は机上論では動かない。アインシュタインの言葉に何かを学ぶのに、自分で体験する以上に良い方法は無い。というのがある。これが重要である。だから、現実を見極め、実証していく必要が有るのだ。あくまで、評価は第三者がするものだ。しかし、この第三者もだまされる場合が多々ある。
カリスマ・サムライ・ボス
聞けばいい、尋ねてほしい
4.まとめ
全国の橋梁の70%以上は自治体で管理しているので、自治体のほうが悩みが深いはずである。先日、議員さんから呼び止められた。地元業者が「植野はひどい奴。何とかしろと」と言っているようである。これは3年前から言われているし悪口は言われるくらいでないと影響力が無いと思っている。信念を持ってやっている。情けない連中だと感じてしまう。滑稽である。まず、業務の難易度により4段階に分けた。高度な業務は、大手コンサル、簡単な業務は地元と。そしてさらに、業務の成果内容に関して担当者に評価点を付けさせている。それを持って次年度の指名件数を決めている。つまり、前年度の評価が悪いと次年度の指名件数は減る仕組みだ。もっというと、今年怠けていると来年は無いという、当たり前の結果なのだ。最近、100点満点で30点台の業者が数社ある。担当者に確認したところ、「自分の気持ちだ」という事である。どういうことか想像が付くだろう。長年培われた、官民双方の甘えの構造が、悪い影響を与えてしまっている。
つまり、「かえるの王国」なのである。「かえるの王国」の最後がどうなったか皆さんご存知だと思う。「ゆで蛙」の話も有名である。そんな、甘えたゆるい世の中と言うのは必ず崩壊する。まあ、職員にしても周囲の官庁や民間企業にしても、「突然、他所から来て、いろいろやかいな事を言っている、どうしょうも無い奴」と思われても仕方が無いが、韓国に赴任した際には、ほぼ3週間で関係者を制圧した。「ボス」と言われ、皆、良く仕事をしてくれた。これは、欧米の仕事の力関係だ。最後には「カリスマ・サムライ・ボス」と言われた。私にとって、最高の敬称だった。しかし、ここでは違う、個人のプライドが邪魔をしているのだ。私は、大学受験に失敗し2流大学に行き挫折を味わっているのでプライドは無い。内心「聞けばいいのに」と思いつつも、静観している。基本的に意地が悪いところもある。
聞いて欲しい
話がそれたが、官民を問わず同じ悩みを持つことが多々あると思う。そういうところとの連携も今後重要だと考えている。悩むよりも相談したほうが解決の糸口はつかめるし、無駄は少ないと思う。意外と、自治体の実態やニーズは知られていない。隠しているからだ。相談にはいつでも応じるので気楽に尋ねて欲しい。(次回は11月16日に掲載予定です)