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㉓インフラメンテナンスにおける「大義」、率か精度か

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監

植野 芳彦

公開日:2017.10.13

1. はじめに
 9月議会も終わった。また、「橋梁トリアージ」の質問が出た。いろいろ考えて下すっているのはよいのだが、結局は自分の住む地域の橋を何とかしてほしいと言う要望であった。これで、建設部内もだいぶ時間を取った。議会で答弁したわけだが、本当の理解者は、市長だけだったような気がする。私自身、担当部局の作成した、答弁書を読んでいたが、なんかしっくり来なかったので、最後は見ないで答弁した。このような状況なので、職員はもちろん、コンサルは理解できないであろう。ましてマスコミや市民は。
 あらためて、書くが、このコラムでは、遠慮なく私の意見を述べさせていただく。反論や苦言もお聞きしたいが、「あの馬鹿、何を言っている。」と言うのでもかまわない。世の中の本質を書こうと思っている。「そんなことは言わないほうがよい。」とも言われるが、そういうことがこの国の悪いところである。きれいごとでは動かない。現に、私に対して、さまざまなことを言って、妨害してくる連中が存在するが、そんなものは気にしていない。与えられた使命を実行するので忙しい。

戦略目標は将来においても持続可能な富山市
 橋梁トリアージはあくまで戦術

2.インフラ・メンテナンス再考
 何度も、同じようなことをここで書いてはいるが、どうも、世の中や官庁の中が、よく理解できていないらしいので、また書いてしまう。最近、「橋梁長寿命化」にはじまり、「予防保全」「老朽化対策」最近では「インフラ・メンテナンス」と、さまざまな呼ばれ方になっているが、やらなければならないことは、一緒であろう。最初に「橋梁長寿命化」と言ったのでさまざまな誤解を生んだのだと思う。かつて「永久橋」と言ったのと同じである。常識(経験、知見)の無い方は、イメージで判断して行ってしまいがちである。
 また、これに対してさまざまなことがなされていて、さまざまな動きがある。各中央省庁も絡んで、国土交通省はもちろん、内閣府や経済産業省など他の省庁もこの課題に取り組まれている。これは、それだけ、大きな国民的課題であると多くの方々が感じているからであろうが、意外と現場が無関心である。民間企業は「維持管理市場、○○兆円」というのに期待感を持ち、ここに参入すれば、カネになると思っているのではないか?しかし、そんな甘いものではない。
 そして、長年の中央集権のおかげで、地方は考えなくなってしまっている。予算、交付金や補助金に頼って、実際にどう動くべきが考えられていない。考えられなくなってしまったのだろうと感じる。しかし、私は、同じ仕事をするにしても、楽しくないだろうと思うのだが、いかがだろうか?自分の考えで動いて初めて、やっている感がある。やらされ感ではない、満足感があるのでは無いだろうか?
 最近「大義」とニュースでよく聞く。我々にも「大義」が必要である。しかし、ビジョンや戦略の無いところには、大義は無い。戦術、作戦レベルの話をしていても、大義は無いのである。先に出した「橋梁トリアージ」は戦術である。「(富山市の)橋梁マネジメント」という戦略のための、一項目である。この戦略としては「現在の市民、将来の市民のために、持続可能な富山市を! そのために、健全なインフラを提供し守り、引き継ぐ」ことである。これのための戦術を、とりあえず、17項目考え、そのひとつが「橋梁トリアージ」なのである。どうもこれが理解できないらしい。


戦略と戦術

 約2,200橋という地方の自治体としては膨大な数の橋梁を管理するための、戦略を実行するための「様々な工夫」を行うことであり、それを実現するための戦術のひとつなわけだ。戦術は失敗すれば、変更していく物であり、戦略は、しばらくはぶれない物である。どうも、これが理解できないらしい。戦術や作戦は、状況を見て変化させる必要が有る。したがって、それが無意味だと判断できれば、変えていく必要が有る。良く皆さん「P・D・C・A」を回すと言うのが其れであろう。言葉では言っているが、せいぜい「P・D」なのである。次の「C・A」が出来ないのが現状である。「P」がなくて「D」だけの場合もある。PDCAを回すのは戦術部分である。戦略はぶれてはいけないもの。「橋梁トリアージ」ということにはもうひとつ別の意味合いがこめられている。それは「もう時間が無い緊急事態だ。」という警鐘である。トリアージは常時には必要ない。常時には、普通に判断をしていけばよい。緊急時であるから、今、緊急に判断し対応しなければ間に合わないと言うこともこめたのだが理解は出来ないらしい。
 ここで、「橋梁長寿命化」の本当の意味は何か?であるが、これが言われだした初期のころ、「荒廃するアメリカ」と言うのが話題になり、日本にもその兆候があるので対策をきちんとしよう。しかし、今後、人口減などに伴い、財政難が見込まれるので残された10年のうちに出来るだけ手を打っておこうというものであった。しかし、すでに5年が経過している。成果は上がったのだろうか? 時間は無い。今は異常時なのだ。そのくらいの認識が必要である。

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