道路構造物ジャーナルNET

⑬ RC桁の曲げひび割れと乾燥収縮

次世代の技術者へ

土木学会コンクリート委員会顧問
(JR東日本コンサルタンツ株式会社)

石橋 忠良

公開日:2020.09.01

2.2 奥羽線 馬見ヶ崎橋梁3)
 奥羽線の馬見ヶ崎橋梁(写真-3)は1984(昭和59)年に下り線が、1986(昭和61)年に上り線が開業しています。スパン24.9m、桁長25.8mのRC箱型桁7連からなっています。


写真-3 奥羽線 馬見ケ崎橋梁

 先に営業開始した下り線側のRC桁は通常の支保工での施工を行いました。幅0.25~0.45mmのひび割れが多数発生したので、0.2mm以上のひび割れ幅にはエポキシ樹脂を注入しています。新幹線の移動支保工よりは、支保工の外す時期は遅くなっていますが、それでもひび割れの注入が必要でした。この桁の設計死荷重時では下縁の引張応力度が49kgf/cm2と大きかったことが影響していると思われます。
 なお、この桁のコンクリートは流動化コンクリートを使用し、部材断面の縮小化と、施工性の向上の目的で、引張主鉄筋の多段重ね配筋(5段)も行っています(図-2)。


図-2 桁の断面

 上り線側の施工にあたっては、ひび割れ対策として、膨張剤の使用と、外ケーブルで下縁応力度を制御するPRC構造の2方法を採用しました。7連のうち5連は膨張剤を、2連はPRC構造を採用しています。膨張剤を用いた配合を表-2に示します。何の対策もしない下り線のRC桁には0.3mmを超えるひび割れが多く生じましたが、膨張剤の対策をしたRC桁のひび割れ幅は問題とならない大きさに収まっていました(図-3)。
 外ケーブルを用いて死荷重時にコンクリートの引張応力度が、コンクリートの引張強度程度(30㎏/cm2)以下に抑えたPRC桁には支保工撤去後1カ月時点では、自重のみの載荷ということもありひび割れは見られませんでした。


表-2 コンクリートの配合表

図-3 膨張剤の使用前と使用後のひび割れ3)

3.PRC構造

 PRC構造としては、RC桁に外ケーブルを併用して、応力度を抑えてひび割れ制御をしているものと、断面内にPCケーブルと、鉄筋を併用してひび割れ幅を制御しているものの2種類を使い分けています。比較的短いスパンに前者を採用しています。

3.1 RC桁へ外ケーブル
 PRC桁として、RC桁のひび割れ制御に外ケーブルを用いる構造もあります。表-3はRC桁のひび割れを問題のない程度に抑えるために、国鉄時代に定めた基準です。スパンの長いRC桁は、桁高を大きくするか、外ケーブルを追加するかなどでこの程度の応力度に抑えると、ひび割れ幅が問題とならない程度に抑えることができるというルールです。これは、実構造物で、ひび割れが問題となったRC桁と問題とならなかったRC桁を調査して定めた値です。応力度の計算は全断面で算定し、外ケーブルの効果を加えています。奥羽線の馬見ヶ崎橋梁のPRC桁の設計はこの考えによっています。


表-3 死荷重作用時コンクリート許容引張応力度(構設資料No.89より)

3.2 PC鋼材と鉄筋を併用したPRC桁
 PC鋼材と鉄筋を、コンクリート断面内に併用するPRC桁も、鉄道では今は多く使われています。主な目的は、ひび割れ制御よりも高速鉄道のために、クリープ変形の少ない構造とするためです。この構造は、ある程度のひび割れを認めたPC桁です。これも、早期にひび割れを入れるとひび割れ幅が大きくなります。死荷重程度まではひび割れを入れないようにすることが実用的です。
 PRC桁の縁応力の計算でのプレストレスによる応力は、鉄筋の拘束力などを適切に評価しないと過大評価になります。プレストレスで鉄筋と、コンクリートに圧縮応力が生じます。このコンクリートの圧縮応力も、時間とともにクリープで、鉄筋に移っていき、コンクリートへのプレストレス力は減っていきます。
 さらにコンクリートは乾燥収縮で縮まろうとしますが、これを鉄筋が拘束することで、コンクリートに引っ張りが生じます。これらを正しく評価することが必要です。乾燥収縮をラーメンなどの不静定力の計算に用いる150μmとして、鉄筋拘束によるコンクリートの引っ張り応力度を計算すると、引っ張り応力度を過小評価します。PC構造は鉄筋が少ないのであまり影響はないので、150μmとして、鉄筋拘束によるコンクリートの引っ張り応力の影響は無視して計算しますが、PRC構造は鉄筋が多いので、この鉄筋の反力でコンクリートにプレストレスがあまり入らないことになります。実橋の応力度と合わせるには、箱型桁等部材が薄いと、乾燥収縮度を800μm程度に仮定し計算することが必要です。4)

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