道路構造物ジャーナルNET

⑧塩害(海砂、飛来塩分)

次世代の技術者へ

土木学会コンクリート委員会顧問
(JR東日本コンサルタンツ株式会社)

石橋 忠良 氏

公開日:2020.04.01

 今回は鉄筋腐食にかかわる話の続きですが、塩分がかかわる場合の話をします。
 塩分の影響は、日本海近くの飛来塩分を受ける構造物と、西日本で問題となった海砂からの塩分とを区別して話します。コンクリート構造物にとっても、鉄筋コンクリートやプレストレストコンクリートなど補強鋼材がある場合は、この塩分は最大の問題となります。かぶりがあっても、水分がなくても鋼材近くに塩分があると鋼材は錆びてしまいます。コンクリート強度などに塩分は影響しないので、無筋コンクリートは塩分の心配はないのです。

1.日本海からの飛来塩分の影響を受けるPC橋

1.1 道路橋の被害の発見から鉄道も調査
 日本海に近い道路橋で、PC桁のPCケーブルの一部が破断しているという情報が、当時、土木研究所の橋梁研究室のKさんから知らされました。その被害の写真を見るとPC鋼線の素線の一部がさびて破断している様子でした。すぐに、国鉄時代なので、全国の海岸近くの鉄道構造物の調査を行いました。日本海の海岸近くのPC桁に錆汁の出ているものがありました。
 1980年頃、私は国鉄構造物設計事務所にて、設計基準の改定なども担当していました。このころ土木学会のせん断の許容応力度がそれまでの半分となりました。それまでの値が大きすぎるというのは、国鉄の先輩技術者も認識しており、学会が変える前より許容応力度は幾分小さくしていました。それよりも大幅に小さくなったので、その許容応力度で断面の大きさが決まっていた、フーチングや、連続地中壁の壁厚など、せん断補強鉄筋を配置しない構造物がそのままでは倍の大きさになるという問題が生じました。
 そのような部材が大きくなりすぎないような新たな設計ルールとするために各所で実験などが実施されていました。土木研究所ともしばしば意見交換を行っていました。土木研究所は構造物で研究室が分かれているので、コンクリート研究室、橋梁研究室、基礎研究室と意見交換をしていました。そんな関係でもあったので、道路橋の変状の情報もすぐ知らせてもらうことができました。
 日本海沿岸の構造物の塩害は、冬の季節風により海水が波の花として飛散し、構造物に付着することで生じるものです。太平洋側の構造物はこれほどの被害は生じていません。コンクリート構造物も、付着した塩分がコンクリートの内部まで入り込み、鋼材を腐食させます。塩害を受けたPC橋についての2例を以下に紹介します。

1.2 A橋梁(写真-1)
 この橋梁は、最初に塩害による損傷が大きいと判断して、対応したものです。
 羽越本線越後寒川~勝木間に位置する、スパン22.10m 3主桁×2連、31.30m 4主桁×1連のPCI型単純桁構造です。


写真-1 A橋梁全景

 設計荷重はKS-18、使用材料は普通ポルトランドセメント、W/C35%、C;450kg、w;158kg、グラウト強度300kg/cm2です。1968 (昭和43)年3月に竣功していますが、建設当時の海岸線は線路近傍でした。その後、海側に道路が建設されたため、現在は海岸線から100mの位置に存在しています。日本海の冬の激しい海風により、塩分がコンクリート表面に付着し、コンクリート内部に塩化物が浸透拡散したものと考えられます。
 建設後の早い時期からひび割れ、錆汁の滲出という変状が生じました。変状の履歴を表-1に示します。1984年に詳細な調査を行った後に、劣化部分の打ち換えを基本とした補修が行われました。しかしその補修後再劣化が生じました。特に、補修に用いたモルタルと、主桁コンクリートの境界でのひび割れが顕著でした。またひび割れから、錆汁の滲出も認められました。また変状は、海側、山側の両端の桁が激しく、中央部の桁の劣化はさほど進んでいない状況でした。


表-1 変状の履歴

 図-1に1984年と、1995年の桁のコンクリート中の含有塩分量の調査結果を示します。
 桁表面の塩分量は、ほとんど1984年と1995年で変わらないが、桁内部は、時間とともに、含有塩分量が増加しています。


図-1 含有塩化物量調査結果

 1995年に再度、前回と同様の断面修復の補修を行いました。補修に際し、下フランジのコンクリートをはつり、鋼材等を調査しました。前回の補修時に防錆材を塗布した部分は鋼材の腐食は見られず、前回に防錆材の塗布のできなかった、前回の補修時には比較的損傷の少ない箇所の鋼材が、今回は腐食している状況でした。
 この時の補修を電気防食にしようか、錆止めと断面修復をもう一度しようか、どうしようかと考えましたが、当時はまだ電気防食の事例も少なくコストも高いことから、前回と同様の補修で少し延命すれば、いずれ電気防食のコストも下がるだろうという判断でした。
 この時の補修も、シース付近までコンクリートをはつり、鋼材の錆をサンドブラストで落とし、防錆剤を塗布した後、アンカー、およびメッシュ筋を配置してモルタルを施工しました。なおこの補修後も、打ち継ぎ目のひびわれなど再劣化(写真-2)が生じました。
 再劣化のスピードが速いこともあり、断面修復を繰り返しても効果が少ないと判断し、また電気防食もいろいろな工法が出てきてコストも妥当になってきたことから、2002年に電気防食による対策を行いました。


写真-2 補修後のひび割れ

 対策した時点でPC鋼材の素線が何本か破断していましたが(写真-3)、鋼材の断面減少を考慮して耐荷力を計算して、そのままの状況が維持できるなら十分安全と判断して、特に補強はしていません。これはこの橋梁の設計時の荷重が蒸気機関車を想定した荷重で、今の荷重は電気機関車の荷重となっており、設計荷重が小さくなったことも影響しています。


写真-3 PC鋼材の錆びの状況

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