道路構造物ジャーナルNET

㊾新技術の導入(その3)

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監

植野 芳彦

公開日:2019.12.16

1.はじめに 

 最近、災害が多数発生している。これに対してインフラのあるべき姿も問われているが、どう感じているでしょうか?災害は、いつどこにやってくるかわからない。しかし、老朽化は必ず、確実に静かにひたひたとやってくる。災害に対抗するにも、常時においては健全なことが望ましい。それがリスクマネジメントである。

2.設計と施工

 「老朽化」が問題になって、もうだいぶ経過した。しかし、そもそもだが実際のものを見ていると「老朽化」ではなくて、当初からの欠陥(設計・施工不良)があるものが相当数あると感じられる。初期不都合が年数を経てより劣化スピードが増大している状態である。以前これをある現場で言ったら「言うな」と言われた。なぜ言えないか?「先輩方のやったものを、けなせない」というのである。やはり皆さん優しい気持ちをもっているんだ。そんなことを言っていたら、今後ますます、不都合は増えていく。悪いものは悪いのである。優しい気持ちではこれからの厳しい状況は、対応できない。

 今作っているものも、厳しくチェックしないと問題は大きくなる一方である。現在のものも、大きな問題を抱えて設計施工されている。強靭化や耐震補強、ちゃんちゃらおかしい。だれも、間違った設計や、施工不良をわざとやろうというものは、居ないだろう。しかしそういうものが現実にできている。できてしまう。いわゆる失敗というものもある。失敗ならばやり直せるはずなのだが・・・。手抜きということもある。さらに、技術力がそぐわない場合もある。物事の道理、構造物の本質をわきまえていない企業も多々ある。これを防ぐために、発注時に資格の縛りや、実績が必要なわけである。ここをいい加減に、決めてしまうと、十分な能力があるかどうかはわからない。しかし、経験がないというのが一番大きな原因である。
 設計用の「ソフト」の普及というものが、大きく原因していると感じている。入力すれば答えが出てきて何となくわかったような気がする。デザインがもてはやされて、構造は二の次。細部構造などはわかっていない。こういう人たちが、「設計」をしている。

 結局は税金の無駄遣いをしているのである。それを言うと強硬に抵抗する方々がいる。何が目的なのか?私にとっては非常に疑問なのであるが、「地元優先」という正義の旗を掲げてくる。こんなことは、数十年前に談合などの問題で、提起されているはずであるがいまだにやっている。地元企業にそれだけの実力があれば、それは構わないが、どうも疑問である。
設計の思想や考え方を訊ねたときに、「ソフトでやりました」というのが多く聞かれる。これではね!設計というのは計算だけではない。細部構造のディテールも重要であり、維持管理における耐久性や管理性を増すにはディテールに配慮しなければならない。実際の政策や施工も考え、維持管理までを考える。ここが重要なのだがよくわかっていないようだ。
 さらに、いわゆる「設計図」では、製作・施工はできない。これも事実である。メタルの場合は特にそうである。以前、東北地方で、新興の橋梁メーカーがノウハウがなく設計図とおり、製作し架設したら、橋梁がゆがんでしまったことがある。アーチ橋で比較的大きかったので問題が大きくなり、その修正をどうするか?ということが検討対象になったが、あまり世の中では取り上げられなかった。結局はコンサルの図面通りでは物はできないのである。
 私もメーカー時代には、細部構造に非常に配慮したものであるが、工場で工数が上がるのか下がるのか?溶接は可能なのか?材料の手配はうまくいくのか?今のコンサルさん方は、この辺お分かりだろうか?鋼材を1辺カットするにも工数が発生する、ましてや、デザインということで安易に円や曲率をつけたがるが、これは場合によるが極力避けるのが、望ましいだろう。こういったことも、経験値であるということを言いたいのだが、そもそも経験不足の方には、おそらく理解できないだろう。

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