道路構造物ジャーナルNET

-分かっていますか?何が問題なのか- 第52回 一巡した定期点検結果の公表資料を読み解く ‐私が意図した点検・診断は適切に行われたか?‐

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員

髙木 千太郎 氏

公開日:2019.12.01

4.国内外の道路橋崩落事故と定期点検結果を見て心配なこと

 ここまで、この3か月間に道路橋崩落事故が4件あったが、その中で教訓になると思われる箇所、隣国台湾とヨーロッパのフランスで発生した崩落事故の詳細をまずは解説した。最初に崩落事故説明を持ってきたのは、国内のメンテナンス、崩落事故を起こさないためには何をすればよいのかを考える材料を、読者の方々に是非提供したいとの強い思いであった。また、令和元年8月に公表された、私が待ち望んでいた『平成30年度・一巡目道路メンテナンス年報』を道路橋に着目して分析し、持論も交えて解説した。さて、ここで考えなければいけないのは、『最後の警告-今すぐ本格的なメンテナンスに舵を切れ』と国を挙げて国内が目標に向かった当時の熱意はまだ熱くあるのかということである。

 図-22に革新的な技術を駆使して、リッカルド・モランディが設計し、供用していたイタリア・ジェノバのプレストレストコンクリート斜張橋・モランディ橋の在りし日の外観を示した。3連の斜張橋、V型橋脚の斬新なデザインの取付け部とともに、建設当初の当該橋への期待度が感じられると思い敢えて掲載した。モランディ橋もイタリア政府が民間会社に管理委託し、供用していたが図-23に示すように斜張橋や取付け部分の主構造に致命的な変状が発生していたのは事実である。当然、当該橋梁を管理している会社もイタリア政府も危機感を持ち、図-24に示すようにリダンダンシー確保の観点から、モランディ橋の構造的な弱点であるコンクリートで被覆された吊ケーブルに対してアウトケーブル補強と点検通路設置等の補強工事を行っていた。

 全スパン同時に補強工事を行っていれば、今回の悲惨な崩落事故は無かったかもしれないし、43名の貴重な命も奪われることが無かったことは確実である。しかし、対策が追い付かずに、図-25に示すように2018年8月14日午前11時30分ごろ上部構造も下部構造も一気に崩壊する非常に珍しい状況で最後に至った。私は、今回国から公表された資料を何度も読み返したが、頭から離れないのは、今すぐ舵を切れ!で少し舵を切ったが、その後また同じ方向、メンテナンス放棄、メンテナンスより安易な架け替えへの道をたどっているのではとの思いである。道路橋を架け替えることは、多額の費用と長期の期間を要する。熱しやすく冷めやすい日本の国民感情特性、それも多くの技術者がその呪縛から逃れられずに、新設と架け替え優先で道を突き進むのは止めてもらいたい。先日、テレビでジェノバのモランディ橋を短期に架け替えるために、一気に爆発撤去する画面が放映されたが、日本もそうだが海外も同様なんだと落胆した。

 今回はこれで終わりとするが、3か月前の最後に約束した、清州橋と葛西橋の貴重な話しには一つも触れずに書き終えることになったことを、読者の方々にお詫びする。書き残したこの橋の話題提供については、年明けの3月号をお楽しみにと締めて今月号のエンドにする。それでは、かなり早いが『良いお年を』。
(2019年12月1日掲載、次回は2020年3月1日に掲載予定です)

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