道路構造物ジャーナルNET

-分かっていますか?何が問題なのか- 第52回 一巡した定期点検結果の公表資料を読み解く ‐私が意図した点検・診断は適切に行われたか?‐

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員

髙木 千太郎

公開日:2019.12.01

落橋ケース②フランス Pont de Mirepoix の崩落

 11月18日(月曜日)午前8時ころ、図‐2に示す、フランスのトゥールーズの北、オートガロンヌとタルンの国境にあるミレポワシュルタルンの吊り橋、写真‐7、写真-8に示す主塔の外観や飾りに歴史を感じるPont de Mirepoix が崩落した。長さ152メートル、幅5メートルで車道の両側に80㎝の歩道がある、1935年建設の国内でも数多く見る、何処にでもありそうな鋼製吊り橋である。写真-9が、Pont de Mirepoix崩落後の状況であるが、吊橋のメインケーブルは破断せずに、補剛桁と床を吊っていたハンガーロープが破断していることが見て取れる。




 崩落の原因は、過荷重である。私が以前本連載でも紹介したアメリカ合衆国で起こった崩落事故、今年の1月30日のDale Bend Bridgeと同じような状況である。重量制限している橋に、こともあろうに地元の車両が、それも制限荷重を大きく超えた車両が、地域に愛されているPont de Mirepoixを通過しようとして崩落事故に至ったのである。これまた、情けないと言うかモラルの欠如というか、技術者として考えさせられる事故であった。

 フランスの報道を読むと、検察官が「事故原因は、重車両の通行が直接的原因で、制限荷重19トンであるPont de Mirepoixに、積載量50トンを超えるトラックが通行しようとしたことが問題である」(写真‐10参照)と書かれていた。悲しいことに、トラックが侵入してきた逆方向から入った、白い乗用車が崩落事故に巻き込まれ、15歳の少女が亡くなったとのことであった。乗用車を運転していた母親も巻き込まれたが、何とか岸に泳ぎ着き助かったようであるが、愛する娘を失った母親の悲しみは計り知れない。Pont de Mirepoixを崩落させた主原因であるトラック運転手は、当該橋の近隣にある井戸掘削会社の経営者であり、橋の状況を十分、分かっていて渡ろうとしていたようである。

 Pont de Mirepoix に関連する情報を見ると、1995年、今から24年前、構造の再計算によって以前の12トン制限から、19トン制限に変更されたようである。さらに、Pont de Mirepoixは、コンクリートデッキの一部交換、吊り下げ垂直ハンガーロープの定着治具や鋳鉄製キャップ、留め金等を交換し、供用していたとの記事もある。吊橋のメインケーブルは点検時に注視してみるが、ハンガーロープの定着部は、狭隘な箇所であり、数が多いことから見過ごしやすい個所である。今回、過荷重によって破断したのは、メインケーブルでは無くハンガーロープもしくは垂直ハンガーロープの定着部であったことは、吊り橋本来の設計理論が関係しているような気がする。吊り橋は、一般的な桁構造の橋梁と比較すると剛性が弱く、補剛桁及び床版の死荷重はメインケーブルが負担しているが、補剛桁及び床版の支配荷重は活荷重である。ここに示した理由から、Pont de Mirepoixの場合、過荷重が直接床組構造やハンガーロープ定着部等に影響を与え、崩落に至ったと私は考えている。

 さて、地元の建設業に関係する業者の経営者がなぜ、分かっているのに荷重規制しているPont de Mirepoixを通ろうとしたかである。管理者が制限荷重を変更したことや、対策工事を行っていたことを知っていたのであろう運転手(地元の会社経営者)は、Pont de Mirepoixを通行することに何ら不安を感じていなかったと私は考える。Pont de Mirepoixが、一度に1台のトラックしか使用でき無いことは分かっていて、自分の重量が19トンをはるかに超えていても、以前対策したのだから大丈夫、これまでも何度も通行しているのだからと、全く不安なく通過しようとしたのである。それがなぜ分かるかと言えば、2台連行していたトラックがPont de Mirepoixの直前で停止し、その後、経営者が運転する1台が先行して橋に侵入した事実から、私が勝手に想像したのであるが。悲劇は、それを知らない逆方向から橋に入った乗用車である。まさかと思うこと、これまで何度も通っていた安全・安心の吊橋が自分の車と可愛い娘と共に冷たい水の中に・・・何とも言えない悲しい出来事であった。

 今年は、残り1カ月となったが2019年は、これまで7橋もの多くの橋が崩落事故を起こしている。次回の連載、年明け2010年の3月1日に橋梁崩落事故の解説は書きたくないと思っているが、さてどうであろう?私もそのようなことが無いように願っているが、読者の方々も是非願ってもらいたい。それでは、今回の連載の主題、今年公開された道路橋定期点検結果について、持論を含めてコメントするとしよう。

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