道路構造物ジャーナルNET

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」㉞

養生と品質確保 ―橋梁下部工のスケーリング抵抗性―

八戸工業大学
工学部 土木建築工学科
教授

阿波 稔

公開日:2019.11.16

3.スケーリング抵抗性を確保するための養生期間の目安5)

 表層透気係数と脱型後の追加養生も含めた養生日数との関係を図-5(左)に示します。この図は調査した構造物の中から高炉セメントB種、W/C:50~55%、一般型枠の条件のコンクリートの結果をもとに整理したものです。なお、追加養生は封緘養生(型枠存置期間の延長、シート養生)を行っているケースとしました。これより脱型後の追加養生も含めた養生日数の増加に伴い表層透気係数も大きく低下する傾向が認められました。特に養生日数が10日以下の構造物では、表層透気係数も増大し部位による変動が大きいです。これは型枠脱型にともないコンクリート表面が乾燥し、水和反応の低下や面的な微細ひび割れの発生によって緻密性が低下したものと考えられます。このことは、本稿で調査した実構造物の調査時の材齢に数年の幅があることから、養生日数の短い構造物であるほど養生終了後の暴露環境の影響を受けやすいことが示唆されます。しかし、養生日数が3週間以上の構造物では、表層透気係数が1×10-16m2以下となり品質の面的なバラツキもある一定の範囲に低減される傾向にありました。


図-5 表層透気係数と養生日数、累積のスケーリング量の関係(参考文献6)を基に作成)

 図-5(右)は、寒中コンクリートを対象として温度制御の方法(給熱養生、保温養生)、追加養生の方法(型枠存置、保水シート)、気中養生および期間(7日、21日)、使用型枠(一般型枠、透水型枠)を変化させて実施した表層透気試験とスケーリング試験(JSCE-K 572(6.10))の結果を整理したものです。本実験では、24-12-25(W/C=50~55%)の生コンクリートを使用しました。空気量は5.0~5.5%とし、使用するセメントは、高炉セメントB種(BB)としました。また型枠は、一般型枠と透水型枠の2種類としました。これより、温度制御の方法、追加養生の方法・期間の違いによらず、表層透気係数が高いものほど、累積スケーリング量が多く発生する傾向にあることが分かります。また、表層透気係数が1×10-16m2以下であれば軽微なスケーリング量となることが認められました。
 以上のことから、塩分環境下においてコンクリートのスケーリングを軽微な範囲に抑制するためには、追加養生も含めた養生日数の目安を3週間程度とすることが望ましいと判断されます。特に橋台(竪壁や沓座面、胸壁)、橋脚(梁部)などのような水掛かりが多く凍害環境の厳しい部位は、コンクリート工事の最終段階となることがほとんどであるため、工期や施工工程の制約から十分な養生期間が確保できない計画となりがちです。そのため、上述のような部位のコンクリート施工において十分な養生期間を確保するために余裕のある施工計画を立案することが大切であると考えます。

4.今後の課題7)

 本稿では実構造物の表層品質調査結果を踏まえて、塩分環境下におけるコンクリートのスケーリング抵抗性を確保するための養生期間の目安を検討するための基本的な考え方について述べました。しかしながら、これらはあくまで初期養生の視点から材料性能の期待値を示すものであり、供用期間中の環境要因を考慮して耐久性を論じることは困難です。橋梁下部工においては、それなりのかぶり厚さが確保されていることを前提とすれば、供用期間中においてかぶりコンクリートの機能が維持されることを目的とし、ひび割れも含めたその劣化抵抗性を発揮するための養生方法・期間を示すことが必要です。そのためには、環境作用の程度に応じて要求される材料の劣化抵抗性を明確にするとともに、その上で初期養生の在り方を検討することが望まれます。

 近年、橋梁等においては膨大な点検データが蓄積されてきています。一方で震災以降に建設された東北地方の道路構造物では初期養生の方法・期間等の施工情報や品質情報が明らかな構造物が少なからず存在します。そこで、これら初期のコンクリート品質や施工情報が集約されている構造物の経年変化を長期的にモニタリングすることによって、コンクリートの初期養生がひび割れも含めた劣化抵抗性、さらに耐久性に及ぼす影響について本質的な議論が展開される素地が整うものと期待しています。

参考文献 1) 国土交通省東北地方整備局:コンクリート構造物の品質確保の手引き(案)(橋脚、橋台、函渠、擁壁編),2019.3 2) 国土交通省東北地方整備局:土木工事共通仕様書,2018 3) 川邊清伸、阿波 稔、須藤昌二、大森祐一:寒中コンクリート用施工状況把握チェックシートを活用したコンクリート構造物の品質確保の取組、コンクリート工学年次論文集,Vol.37,No.1,pp.1285-1290,2015.7 4) 阿波 稔、迫井裕樹、金濱巨晃、音道 薫:函渠工・橋梁下部工におけるコンクリート構造物の品質確保の取組とその検証、コンクリート工学年次論文集,Vol.38,No.1,pp.1611-1616,2016.7 5) JCI東北支部:寒中コンクリートの品質確保に関する研究委員会報告書,2018.4 6) Meng Zhang, Yuki Sakoi, Minoru Aba and Yoichi Tsukinaga, Effect of initial curing conditions on air permeability and de-icing salt scaling resistance of surface concrete, Journal of Asian Concrete Federation, Vol.5, No.1, pp.56-64, 2019.6 7)土木学会:コンクリート構造物の養生効果の定量的評価と各種養生技術に関する研究小委員会(356委員会)成果報告書およびシンポジウム論文集、コンクリート技術シリーズ122,2019.9 (2019年11月16日掲載。次回は12月に掲載する予定です)

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