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-分かっていますか?何が問題なのか- ㊽高齢橋梁の性能と健全度推移について(その5) ‐将来に残すべき著名橋になすべきことは‐

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員

髙木 千太郎 氏

公開日:2019.03.31

 平成最後の年から新元号の始まる年にかけて書き続けている、「高齢化橋梁の性能と健全度推移について」シリーズの連載も今回で第5回目となる。長期的なメンテナンスに役立つと保存してある資料、定期点検・健全度診断結果から3回分を抜き出し、①設計基準別(明治、大正から昭和14年)②設計基準別(昭和31年以降)③活荷重(大型車交通量)④環境(都市部、山間部、海岸地区)のそれぞれについて、供用橋梁と健全度推移との関係を分析した結果を使って、持論を基に説明してきた。今回は、構造形式の違いが健全度にどのように影響があるのかを、分析した結果について話を進めよう。まずは、道路橋に使われている材料と採用される構造形式別の構成比を示し、国内の道路橋事情を考えてみよう。

構造形式の違いが健全度にどのように影響があるのか

はじめに.道路橋の構造形式と特徴
 道路橋は、上部構造と下部構造から構成され、今回分析対象としているのは、当然上部工の構造形式との関係についてである。鋼道路橋上部構造の主な形式としては、プレートガーダー(鈑桁・I桁、箱桁)橋、トラス橋、アーチ橋、ラーメン橋、吊り橋、斜張橋に分類される。次に、コンクリート道路橋上部構造の主な形式としては、床板橋、桁橋、箱桁橋、トラス橋、アーチ橋、ラーメン橋、斜張橋、エクストラドーズド橋、吊り橋に分類される。


図-1 道路橋主要材料別構成

 図‐1は、国から公表されている資料(道路統計年報2009年)を基に作成した、国内で供用している道路橋に使用されている主な材料別のグラフである。対象道路橋総数は725,486橋であるが、その内橋長15.0m以上の道路橋を抽出し、全数153,529橋を分類した結果である。年号が変わった平成の初期には、鋼橋が多かったと思うが、現状では、コンクリート系の橋梁が58%と半数を超え、とうとう鋼橋は38%と4割を切ってしまった。この数字を見て、鋼橋を製作・架設している日本橋梁建設協会とPC橋を製作・架設しているプレストレスト・コンクリート建設業協会の力の差が分かるような気がする。この分類結果からも、私が日頃感じている鋼橋の建設数が減って、コンクリート系の橋梁の建設数が増えたことが明らかとなった。私が今回説明する資料も、恒例のように鋼橋を先に記述しているが、これからはコンクリート系道路橋を先に書かなければならない時代となるかもしれない。
 次に図‐2に、図‐1で分類したのと同様に、15.0m以上を対象に、道路橋の上部構造形式別構成グラフを示した。桁橋(鈑桁、プレートガーダー、T桁、I桁など呼称が異なる同様な形式の総称)が76%、床板橋が18%、ラーメン橋が2%、アーチ橋が2%、トラス橋が1%の、吊り橋、斜張橋の順となっている。国内の道路橋は、桁橋が全体の四分の三を占めていること、床板橋が2割弱と側面外観が梁形式と判断される形式が殆どである。今回は供用している道路橋において最も数の多い、プレートガーダー形式について、まずは、私と読者の方々との認識の違いを埋めるために年代別の考え方、詳細構造などを解説しつつ、基本的なおさらいをし、その次に分析結果の説明をする。写真‐1にプレートガーダー橋(鋼橋)、写真‐2に桁橋(PC橋)を示した。写真‐1を、目を凝らして見てほしい。4月掲載号に相応しい、右上に桜が満開の道路橋を私が敢えて選択したので、読者の方々は心豊かにし、感じる風情を楽しんでもらいたい。それでは、プレートガーダー橋について、古き時代から紐解いてみよう。


図-2 道路橋構造形式別構成グラフ

写真-1 プレートガーダー橋(鋼橋):桜が満開状態/写真-2 桁橋(PC橋)

1. プレートガーダー橋(私が得意?とする鋼橋を主に)
 鋼プレートガーダー橋の部材は、鋼板や型鋼をリベット、高力ボルトや溶接によって添接して断面を構成し、上下のフランジが曲げモーメントを、ウェブがせん断力受け持つように組み合わせた梁構造である。プレートガーダー橋は、桁形状によって鈑桁(I桁)と箱桁の2種類に分けられている。鈑桁のウェブ高は、材質や桁間隔によって異なるが一般的に支間長の1/16~1/18であり、支間長が40m~50m程度までの橋梁に採用されている。
 昭和30年以前のプレートガーダー橋の場合は、主桁間に床組を設けて鉄筋コンクリート床板を支える構造が一般的で、支間長も30m以下で支間長が長くなるとゲルバー桁を採用している場合が多い。今や常識の連続桁は、不静定次数が高く、設計計算が複雑となることから、当時は、計算が容易な静定構造物となるように考えた結果がゲルバー構造の採用である。主桁、横桁、対傾構、横構造は、鋼板と形鋼を組み合わせて必要断面を確保する考え方で、部材の組み立て、添接方式はリベットが使われている。


写真-3 プレートガーダー橋(昭和3年・1928年竣工)/写真-4 プレートガーダー橋(平成2年・1990年竣工)

 写真‐3は、昭和3年(1928年)竣工のプレートガーダー橋であるが、当時の標準的な構造である。写真‐4は、平成2年(1990年)竣工の溶接による組み立て、高力ボルト接合のプレートガーダー橋である。二つの建設年次の異なる鋼道路橋の例示写真を対比してみると、溶接による部材製作を採用している道路橋の方が外観上はすっきりして、塵埃や雨水が溜まりにくい構造であることが明らかである。より分かり易い様に単純な主桁を鋼板と山形鋼で造る主桁のポンチ絵を図‐3に示した。
 リベットで鋼材や形鋼を繋いで最終形を造ることは結構難しく、最終断面を頭に描いて組み合わせる能力が問われ、3次元の絵画パズルのようで結構面白い。写真‐5にリベットによる鋼板と山形鋼で、部材の組み立てることが如何に大変かの事例を示したが、読者の皆さんもパズルと思って見て、考えてもらいたい。例えば、主桁で垂直補剛材が必要な箇所で、鉛直力を受ける支承付近と中間部分について考えてみよう。図‐4が垂直補剛材一般区間、図‐5が垂直補剛材支点部付近のイメージを表したポンチ絵である。今回示すポンチ絵は私がフリーハンドで描いたことから、見苦しい点が多々あるとは思う。しかし、私は分かり易いと自画自賛し、読者の批判覚悟で勝手に掲載した。リベットによる部材組み立ての鋼橋を示した写真で分かるように、端部からある程度の区域までは、山形鋼と鋼板を組み合わせて剛性を上げている。支点付近は、垂直補剛材にクリンプを造らず、スプライスプレートをある程度の区間咬ませ、それらをリベットで接合させることから、複雑となる。逆に長期的に考えると、形鋼を組み合わせているので、その隙間に雨水、塵埃、湿気などが滞留し易く、防食機能の低下、腐食、断面欠損となる。

 図‐6は、鋼板と山形鋼を組み合わせた主桁頭部の詳細図であるが、ウェブ鋼板と上フランジ鋼板は密着できずに、実態として3~5mm程度開いているので、当然水が滞留し易い。どの程度断面欠損が進展しているのか比較した状況を写真‐6と写真‐7に示したので対比して見ると分かり易い。当該橋梁は、昭和初期に竣工した道路橋であるが、一部主桁に著しい断面欠損が確認され、端対傾構を断面が殆どない状態となったことから、取り替えた事例である。現在の設計されているような断面に余裕のない構造とは違い、荷重分配効果を考慮しない1-0法による設計であること、リベットによるせん断抵抗力を主とする支圧接合であることなどから、多少の断面が無くなっても構造的に十分な耐力となる場合が多い。支承部の垂直補剛材部分には、十分なせん断耐力を持たせるために、フィラープレート(薄板)が咬ませてあることから、その隙間にも滞水し易いが、これまた、断面計算時にはほとんど考慮していないので、例え、断面が無くなっても問題になるような状態とはならない。

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