道路構造物ジャーナルNET

-分かっていますか?何が問題なのか- ㊼高齢橋梁の性能と健全度推移について(その4) ‐将来に残すべき著名橋になすべきことは‐

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員

髙木 千太郎

公開日:2019.03.01

2)歴史的ピントラスはトラックと共に川の中

『Dale Bend Bridge』は、なぜ落ちたのか? 写真-22を見れば分かるように制限荷重を超えた重車両が通行したからである。

 


写真-22 落橋した『Dale Bend Bridge』・Yell County

『Dale Bend Bridge』落橋の過程を考えてみると、セミトレーラーが通行したことで耐荷力の限界値を超え、部材が破断、もしくは格点を止めているピンが破断したのであろう。当然と言えば当然の結果である。
『Dale Bend Bridge』の2016年の6月に行った定期点検結果を見てみよう。公表された資料によれば、全体的な状態は、悪い(Poor)との評価である。上部構造状態は悪い(4ランク)、下部構造状態は悪い(4ランク)、床版の状態は満足する状態(6ランク)と診断されている。満足度評価が17.6(17.6/100)と診断していることは、架け替えに値する道路橋とのことである。
 ここに示す健全度評価であっても、架け替えは行わない、行えないのだ。『Dale Bend Bridge』のような古式豊かな外観は、二度と造れないからであろう。
 表-1にアメリカ合衆国の道路橋評価基準・NBI(National Bridge Inventory)を示したので、上記評価がどの程度であるか確認されると分かりやすい。


表-1 道路橋健全度評価基準:NBI

 当該橋梁の建設年次、使用状態、健全度評価等から考えると、管理者が荷重制限するのは当然で、写真-23のようにトラック3t、セミトレーラー4t、フルトレーラー6tの規制がなされていた。要するに、この橋を利用している人の多くは、重たい車は通れないと分かっていた。でも、周辺を散策したり、狩りに行ったりするには便利な、愛すべき、由緒ある地元の橋だったのである。


写真-23 『Dale Bend Bridge』の前後にある重量規制標識

 それではなぜ、制限荷重を超える約40tのセミトレーラーが当該橋梁を通行しようとしたかである。
 当事者には申し訳ないが、私が紹介するここからが段違いに面白い。国内外の急速なICT社会への流れ、AI搭載自動運転への信頼など、近い将来に警告を鳴らすような“反面教師”と私は思う。
 セミトレーラーの運転手は、当該橋梁の近くの農場で、鳥加工品を積み目的地に向かっていたが、それもGPSナビゲーションシステムに頼ってDale Bend Road(CR 49)を走行、夜道でもあり規制看板に気づかず『Dale Bend Bridge』に侵入、冬の冷たいPetit Jean Riverに橋もろとも落下した。幸いに、運転手はトレーラーから脱出し、無事であったから大ニュースとはならなかった。
 今回話題として提供した米国・アーカンソー州の『Dale Bend Bridge』落橋事故の教訓はふたつある。ひとつ目は、道路管理者が設定した制限荷重を甘く見て走行すれば、橋は落ちる。制限荷重には多少の安全率はあるが、設定した技術者の技術力とそれを信頼し遵守する利用者のモラルが必要なのである。ここにも、技術者の技術力、想像力、倫理観がある。
 ふたつ目は、便利な機器、ICT機器を信用することは、時代の流れであるから当然と言えば当然ではある。しかし、最終的な判断は操作する人の注意力と判断力であり、機器を疑ってみる、五感を働かせて行動しないと自らの命も失うことになる。
 それとともに、安全・安心を提供する機器開発に携わる技術者は、100%保証、いや120%保証できる機器やシステム開発が急務であり、それが技術者の責務である。技術に無知な一般国民からの絶大の信頼を得ることこそ、技術者冥利に尽きることだからだ。
 我々は、2月22日に『小惑星リュウグウ』に着陸した『探査機はやぶさ2』に関係する技術者の熱意と日々の努力が、どのような成果を生んだのか、今一度考えてみようではないか。

 ここで最後に、私からのいつもの苦言を呈することしよう。
 写真-24は、とある田園地域にある、どこにでもある道路橋である。見てお分かりのように、6tの規制看板が両サイドに設置されている。私は、当該橋梁の管理者(行政技術者)に設置看板の意図と、どのように耐荷力(規制重量)を算定したかを聞いてみた。


写真-24 総重量6t規制のPC道路橋

 すると、「この橋は、以前から荷重規制看板がありますが、その経緯は分かりません。老朽化からではないですか。荷重規制値6tを設定した理由や耐荷力の計算を行ったとも聞いてはいませんが、髙木さんが必要であれば調べますが」であった。
 私は少なくとも、当該橋梁を管理する行政技術者であれば荷重制限している橋梁の位置、規制の理由、規制値の根拠等を自らが確認し、勉強するのが本来の姿であると思う。橋梁長寿命化修繕計画等の計画づくりに没頭し、予算の獲得に走り、ICTを使ったマネジメントの遂行に精力を傾けるより、自らの足元を固めるのが先ではないだろうか?
 社会基盤に関連する技術者は、私の言葉を肝に銘じてほしい。防災・減災に関連する技術者、宇宙探査技術に関連する技術者、医学生理学に関連する技術者、車両の自動走行に関連する技術者……国内外から脚光を浴び、実績を着々とあげる分野から、ここにあげた技術者群の基盤を支える我々が、大きく後れ取らないように、浮ついた心を抑え、今日から地に足をつけ頑張りましょうよ。
(2019年3月1日掲載。次回は4月1日に掲載する予定です)

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