道路構造物ジャーナルNET

㊴技術力の研鑽

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監

植野 芳彦 氏

公開日:2019.02.16

3.役割分担を忘れていない?

 仕事のやり方をみていると一番気になるのが、協議不足である。3回の協議で、ものができるはずがない。コンサルさんは、市、町を甘く見ていないか? 勘違いしていないか?
 官側は、自分達に背負わされている「責任」というものを考えていないのか? ということである。現在の私の立場では、民側のことをあれこれは言わない。どうしようが勝手であるし、正直、疲れた。官側のことを記述すれば、何で、わかった振りで仕事を進めるの? あなたの使命は何なのでしょう? 日頃から「市民のため」と言っているのと違うことをしていないか? ということである。

 市役所では、「まちづくり」が花形である。都市整備やまちづくりをやりたいという職員は多い。できれば、一人ひとりの職員に、自分のやりたいことをやらせてやりたい。しかし、そうはいかない。橋梁や構造物の世界は厳しいところがある。学科で言うと、社会や国語と数学や理科の違いであろうか?
 社会や国語では、不確定な要素も多いが、数学や理科では明確な答えが要求される。「まちづくり」やデザインでは、個人の感性などもあり、批判もあるが、評価の高い場合もある。明らかな失敗というのは、評価されることはあるが、致命傷とはならない。
 しかし、構造物の世界は違う。明確な基準類があり、基準を無視するわけにはいかない。個々のものを実施するために、評価しやすく、間違いが見つけられやすい。
 結局、役割分担が重要である。自分の与えられた役割をきっちりやれば問題はない。学・民・官が、それぞれの役割を果たしていけば問題はない。官で重要なのは、責任があるということである。社会や市民に対する責任があるから公務員なのである。

 点検を人任せにして、診断も任せているのはかなり問題である。最終判断は官でやるべきである。民や学にはこれが少ない。しかし、ないとは言えない。今後、社会が進み、公共工事でも契約行為がさらに明確化されるようになれば、責任は増す。
 ここで、学生ならば単なる間違いですむのだが、これが社会人でひとつの事業となると、それではすまない。官側であれば、国民や市民の税金を使って仕事を進めるので、間違いを犯せば、「責任」が発生することを意識しなければならない。だから、「業者の選定は重要だよ」ということである。できない者に業務を任せる。資格もない業者に業務を任せるということは、自分の首をかけてまでそうする価値があるのか? ということだと思うのだが?
 まず日頃から、民間企業で、何処何処の会社はどういう実績があり何が得意か? その企業にはどういう人がいるのか? くらいは調べておくべきである。昔から思っているのだが、企業の名前を聞いて判断できるくらいにならなければプロではない。あとは、業務の協議時に分からないまま、うなずいてしまうから、後で問題が起きる。
 官側の技術力の研鑽は、相当難しいと考えている。しかし、やらなければ、ダメになる。まずは本人の覚悟である。「育とうという意思がなければ育たない」と考えている。これは民側でも同じ。しかし、自分の仕事として選んだからには、やりましょうよ!

4.まとめ

 私事で恐縮であるが、どうも体調が良くない。年末の人間ドックは最悪であった。自己管理ができていないからなのであるが、単身赴任も5年というのは長すぎる。経済的にも、二重生活になり、厳しい。何が言いたいか? 「時間がない」ということを言いたい。みなさん、時間はいくらでもあると思っているかもしれないが、私にとってはないのである。時間切れというものもあることを、考えなければならない。

 一番単純なことでできなかったのは、「業者の技術レベルに合わせた発注」である。点検の一巡目が終了し第二ステージに向かう中、構造物をどこまで診れているのか? ひび割ればかりを気にして、肝心な構造物全体としての判断や下部工の状況を適切に見られているのか? という疑問が残る。しかし、現在の点検要領では仕方がない。しかも、下部工の状況も良くわからないのに「耐震化」という言葉を聞くと笑ってしまう。まあ、これは地域性に絡むので、「今さら勝手にしろ」ということになる。
 無責任なようだが、言っても言うことを聞かないのだから仕方がない。個人の資質、プライドと難しいことも絡むので、あまりきつくは言いたくない。分かる人間だけが分かってくれれば良い。マネジメントには切り捨てるという非情さも必要である。

 もうひとつは、「官民連携の推進」。つまり、包括管理やPPP/PFIの活用である。維持管理の分野に民間資金を導入してもらう時代に今後なってくるものと推察できるが、みなさん「わからない」ということでのんびり構えている。水道法の改正もあり、今後ますます重要な課題である。


新たな事業スキームをどのようにつくるのか

 これは、インフラそのものを投げ出したり、責任逃れをするということではない。維持管理の時代に入り、新たな手法を検討していこうということなのだが、これもなかなか理解されない。障壁は分かっている。なぜ、マネジメントが進まないか?
 これのほとんどは、“人”にからむ“感情”や“プライド”なのである。これらは解決が無理である。残りの時間でどこまでできるか? であるが、ここでダメならば他所でやるだけである。2月8日に土木学会会長の小林先生をお呼びしてセミナーを実施したが、思ったよりは聴講者は多かった。しかし、まだまだである。危機感がないのである。


社会の変化にあわせてどのように維持管理をしていくのか

 私は2000年に、韓国で高速道路のPFI事業(橋梁105、トンネル13)に関して実際に経験してきた。日本ではまだまだである。日本でのこの議論は、実際に経験したことのない、シンクタンクやコンサル、評論家の話が主体であるが、教科書的な話はどうでも良くて、どう実行するかである。今後は法務や金融の専門家の方々との議論も重要となってくる。
 戦略上のさまざまな要素も重要であるが、戦況の変化というのも重要である。臨機応変に対応できなければ負ける。与えられた状況でやっていくだけであるので、ここでは無理はしないつもりである。
(2019年2月16日掲載。次回は3月中旬に掲載予定です)

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