道路構造物ジャーナルNET

㊱「(地元)コンサルの能力=発注者の能力」である

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監

植野 芳彦

公開日:2018.11.16

3.再劣化の恐怖を感じないの?

 少し前の日経コンストラクションの特集で書いたが、「再劣化」は恐ろしい物である。前述のように、役所が判断できず、甘えた発注をしていれば、再劣化は、起きて当たり前である。耐久性を考えておらず、その実証もできていないものを、よく使うな! コンサルの成果を鵜呑みにして採用しても良いのだが、技術者として疑問を感じないのだろうか? また、コンサル側は、どういうつもりで、それを評価しているのか?


ASRへの対応

 日経コンストラクションが出た直後に、地元コンサルが「あれは補修前の写真だろう」という事を陰で言っていると言う話を聞いて、情けなくなった。怒るよりも情けない!技術者として恥である。「現場に行き確かめてみれば、あきらかである。」橋梁の伸縮装置の交換は、ほぼ20年をめどと考えている。それが2年で壊れたらどうなるのか? お金持ちのコンサルさんい、そろそろペナルティを課そうかな?そうでもしないと、甘えが振興し、ますます「蛙の王国」になってしまう。
 伸縮継ぎ手は昔から厄介な物である。散々、製作伸縮装置の図面を書かされたし、標準化なども取り組んできたが、安易に使用されればなにもならない。維持管理の時代となれば、これまでと違った、考え方で、計画しなければならない。最近は、止水性と耐久性だと考えている。これを安易にやられると、数年で壊れてしまうわけである。では、実際に伸縮装置の交換があった場合に、コンサルタントがどうやって設計しているか? という事であるが、皆さんご存知だろうか?あえて書かない。既製品の伸縮装置のメーカーの方々も、どうも向いている方向が違うのではないだろうか?


維持管理の課題

 コンクリートの補修方法に関しても、現在、ひび割れを一生懸命拾い、ひび割れ注入を盛んにやろうとしているが、どれだけの効果が期待できるのか?床版には防水層を施工することが提案されているが、排水計画も無しに何処まで期待できるのか?防水層は完璧なのか?私は、あの施工を見ていると疑ってしまう。やはり皆さんは、素直で美しい心の持ち主なんであろう。
 私のように皮肉れていて、悪逆非道の人間は、疑り深くなかなか認めない。しかし、維持管理の時代にはそういう心が管理者には必要だ。さらに、悪く言われる覚悟。再劣化を感じない方々は、おめでたいと言うしかない。
 ということで、「補修オリンピック」を実施したいと、近隣の先生方と相談している。11月19日に、北陸SIPの若手教授グループによる展示会を、富山市民ホールで実施するが、その時に募集をかけてみることに成った。さて、どういう企業が応募するのか?どうなるのか?楽しみである。

4.まとめ

 私は、コンサルに対して厳しすぎると言う意見を良く聞く。議員さんからも言われていたが、最近理解していただいている。これは、ここが今後のポイントだからである。キチントやらないと、インフラのメンテナンスは、大変なことになる。ではなぜそうなってしまったのかは、責任の一端は役所側に有る。甘やかしである。自分達のプライドのために甘やかしているのかもしれない。
 今後、インフラメンテナンスで必要なのは、
① 「しくみ」と「ツール」
② 「ハード」と「ソフト」
 であると考える。この両輪がそろって、おそらくうまく行く。さらに人材である。これまで、橋などをほとんど見てこなかった、官と民とで、適当に判断していくと恐ろしい結果になる。
 橋梁の世界は奥が深い。材料だけ部材だけ分かっていてもダメであるし、複数の数多くの構造物を同時に考えられなければ、マネジメントはできない。
 中国などのパクリ問題を笑うが、形だけ真似して構造の根本がわかってないものがある。どうしてそういう構造なのか? 基準は決まっているのか? が分かれば、さほどひどい間違いや、施工不良は起きない。うまく施工できない場合はどうするのか? 基準に出てないものはどう考えるのか?施工精度、出来形の精度などをどうして行くのか? 何のためにそうなっているのか?設計と施工の双方を考える上で重要である。


29日に富山市で開催する建設技術研修会

 再劣化は、今のままでは相当数起きてくる。これをどうするのか?予防保全とは言うけれど、さほど簡単な物ではない。理想論と現実、机上と現場の違いは、理解できない物には到底理解できない。うまく使っていくためには「実装のための実証」が必要である。
(2018年11月16日掲載。次回は12月中旬に掲載予定です)

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