道路構造物ジャーナルNET

㉚ 組織のなかで

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監

植野 芳彦

公開日:2018.05.16

4.今後の展望

 では、私がいなくなればどうなるか? というところであるが、「なるようになる」しかない。元に戻るものもいればそうで無い者もいるであろう。これは仕方が無い。最初から言うことを聞かない者。元に戻るもの。何かを感じて改革してくれる者。この何かを感じて、改革してくれるものができていれば成功だし、そうでなければ無意味である。私の現時点での感覚では、技術職員250名ほどの中で数名できたかな? と感じている。あとは、本人と上司たちが理解を示せるかどうかである。人間は、変化しないのが一番楽である。
 皆さん、簡単に人も組織も代われると思っているかもしれないが、そうではない。国全体を見ても、明治維新から、さほど変わっていないし、第二次世界大戦で敗戦した失敗例を未だに繰り返している。ということで、「変な奴が一時期いて、なんか訳のわからんことをやっていた」でよいのだと思っている。そういうことで、あくまで評価は他人がつけるものである。だから、何も変わらないでも良いのである。技術の伝承だけとっても、口で言っているほど簡単ではない。これを口にする方々は、実際には何もしていない方々が言っている場合が多い。
 組織とは非常に厄介である。個人個人は理解できても組織がそれを許さない場合がある。私は昔から組織はあまり気にしていない(だからダメなんだが)。常に、各個人を見ている。組織全体を見回して、理解してくれそうな人間を見つけ出し、やっている。私が恵まれているのは、何処に行ってもそういう人間にめぐり合えることである。簡単に言うと優秀な部下に会えるのだ。これが幸せである。
 これまでもそうだったし、ここ富山市でもそうである。だから、特に心配は要らないのが現実であるが、彼らが、私がいなくなった時にどうなるか? 上からつぶされるのか? 周りからつぶされるのか? 知人の東大の生物学の先生によると、生物は全て8:2の法則で動いてるとのこと。変われる2割がその後どうなるかというと、また8:2で分かれてしまうと言うのである。納得である。
「マネジメント」とは、何とかすることであり、まとめることであると私は解釈している。インフラ・メンテナンスは、永遠の課題であり、正解が見出し難いと考える。後の世の中の人たちが、「あいつのやったことは間違いだった」と評価すればそれはそれで受け入れなければ成らない。時間とお金を使い申し訳なかったと言わざるを得ない。たとえば、富山で理解されずとも、どこか外で理解されるかもしれない。そうなることが、うれしい。皆さん簡単に、前向きとか後ろ向きとか言われるが、「人間の壁」が一番厄介な障壁である。心の問題なので、全てが味方なわけは無い。そんなことは散々経験してきているので、人間の壁に逆らう、時間も労力も無駄である。
 私がよく言うのは「客車に乗るのは簡単だが、機関車になるのは大変だ。エネルギーが必要だ。しかし、機関車が無ければ物事は動かない」ということだ。何か商売になりそうだったり、世の中のトレンドになりそうなものには、皆さん集まってきて、客車に乗り込む。しかし、これが自分でも不思議なのは、私は意外と注目される以前から今後必要なことに取り組んでいることが多い。それで、皆が集まってきたときには、興味が薄れてしまう。他の人に任せればいいや! となってしまう。自分では、また違うことを考えよう。そのことが、うまく動いてくれることを願いながら。これが、良くないところであるが、どうしょうも無い性格である。
 私が何もかも強く言ってやらせるのではなく、職員に考えてもらうのがいいかな? ということである。そして最近思うのが、毎日いなくても良いのではないか? ということである。最近、多方面からオファーが懸かりだした。それも、これまでの人生から感じると、それは天が示している転機なのかもしれない。そして、「老兵は去るべし」という言葉があるとおり、いつまでもしがみついていてもしかたがないので、後進に譲りたい。受け継ぐ側が、何処まで受け継ぐかであり、まったく違ったことをやってみるのもよいのではないか? あまり、押し付けるのもよくない。私自身は山に篭り、「橋梁 五輪の書」でも書くと考えている。そして依頼されたときに、必要とされる時に出てくるという、むしのよいことを考えている。世の中、なかなか本質を語る人間はいないので、そういう人間がいても良いと考えている。



フィールド提供事例
(2018年5月16日掲載、次回は6月中旬に掲載予定です)

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