道路構造物ジャーナルNET

-分かっていますか?何が問題なのか- ㉘遊具が壊れ子供が落ちた! 管理責任を問われるのか? その2

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員

髙木 千太郎 氏

公開日:2017.08.01

2.吊り篭遊具取付金具の破壊した箇所の調査

 今回破壊したロープ取付部は、写真‐2の左側に一部映っている木製の門型支柱それぞれに固定されているロープ両端の取付部のうち、鋼製ロープカバー金具(写真‐3参照)が取り付けられた側である。取付金具は、すみ肉溶接により鋼横梁に取付けられており、破断面を調査すると鋼横梁側の溶接止端に沿って亀裂が進展し、最終的に破断したものと考えられる。未破壊側のロープ取付金具の状況を写真‐3 に示したが、取付方法は破断した側と同様に、鋼鉄製の金具がすみ肉溶接によって鋼横梁平面部に取付けられている。破壊した側と破壊しなかった側の差異は、ロープ取付金具の有無である。また、抜け出るように破壊した取付金具の側面側には、横梁軸方向に数か所の亀裂が確認されただけでなく、写真‐5で明らかなように引きちぎったような傷跡の残る鋼横梁の変形も確認できた。

 破壊した部分は、全体的に腐食が著しく、破断面の大半は錆で覆われている状況であった。破断は鋼横梁に溶接された取付金具の溶接止端部に沿って生じ、回し溶接に沿った破断に加え、破断面から西南および西北方向に横に進展した亀裂が数本観察された。確認できる横方向の亀裂長さは最大20mm 程度であった。問題の溶接部には塗膜割れと、塗膜割れの内部に錆が確認され、溶接止端部には亀裂が発生していると推定される。以上が、吊り篭遊具の破断箇所を目視外観調査した結果を取り纏めて説明した。今回事故を起こした吊り篭遊具は、似たような遊具を良く見かけるが鋼横梁に直接溶接のみで結合させるタイプは少ないような気がする。また、破断箇所を観察すると、そもそも遊具取付構造の耐力不足も疑うような破壊形態だ。依頼はされたが、建設後約5年しか経過していない遊具の取付部が突然破壊し、落下することがあるのか、結果が読めない調査がいよいよ始まった。

(1)破壊した鋼横梁の破面調査結果
 写真‐6に示す破断箇所に発生している錆を超音波洗浄によって落とし、破面の観察を行った。酸洗いを行った後の取付金具が抜け出た鋼横梁上側の破面を写真‐7に示す。破断した箇所を詳細に調べると、全体的には疲労損傷破面の特徴といえるラチェットマークやビーチマークが見られ、鋼材破断面が疲労破面であることが見て取れた。次に破断した部分の走査型電子顕微鏡(SEM)による拡大写真である写真‐8を見てほしい。A、B、C部いずれも外面側が破断起点の可能性が高いと予想したが、腐食が著しく破面の形態を確認することができなかった。破面全体的に言えることは、平滑な破面であり、部分的に疲労損傷の特徴と言えるストライエーション縞模様が見られ、破断の原因が疲労であると判断される。また、ストライエーションの方向から、疲労亀裂は外面から内面に向かって進行したと考えられ、ストライエーションの間隔が約0.4μmであることから、同速度で進行したとの条件下ではあるが約8,000回(3.2mm/0.4μm)の繰り返し変形で板厚を亀裂が貫通したと想定できる。以上が、鋼横梁取付金具取付箇所の破面調査結果である。次に、先にも話したように、破壊形態や使用後5年の短期間で破壊した等から材料的な不良によるとも考えられたので確認試験を行った。

(2)使用鋼材の材料分析及び力学的試験結果
 鋼横梁に使われている鋼材は、一般的に使われているSTKR400であった。鋼横梁から試験片をとって分析したところ、Cは0.15、Pは0.014、Sは0.008、Cuは0.009といずれもSTKR400のJIS規格値を満足する値であった。また、引張試験結果も、3試験片の平均値が0.2%耐力364N/㎟、引張強さ456 N/㎟、伸び25%といずれもSTKR400の規格を満足する値であった。以上の結果から明らかなことは、使用鋼材として規格値を満足する材料を使い、不良材料では無いことである。なお、成分分析結果のP及びS等の不純物元素含有量から言えることは、再生材の電炉材ではなく、じん性値の低下や溶接割れを起こしにくい高炉材であると推定した。次に、吊り篭遊具の構造的な耐力を求めて結果が以下である。

(3)対象遊具の耐力計算
 子供が乗った吊り篭に発生する静的なロープ張力に対し、遊具を構成する鋼横梁及び木製支柱に十分な耐力があるのかを検証することとした。検証内容は、子供3人が吊り篭に乗ってロープ中央に位置した時に作用するロープ張力を計算し、張力によって発生する横梁及び支柱各部の曲げ応力を算出することで鋼横梁の降伏応力と対比し、構造安全性を確認することとした。
①ロープ張力の計算結果
 子供の体重を公表資料から全国平均の体重約34㎏/人を基本とし、3人乗車時に事故が起こったことから約110㎏と仮定、再現実験には110㎏の1.06倍にあたる117kg(再現実験時に吊り篭に乗った人の重量)と吊り篭本体重量32kgの合計149kgを中央部に載荷させると、ロープのたわみ値が48cm となった。このたわみ値を使って作用力とロープのたわみ量の釣り合い状態から張力算出すると、ロープ張力は6,576N(N=F/(2×cosθ)=149/(2×cosθ)=6,576)となる。
②鋼横梁の曲げ応力算出結果
 鋼横梁に作用する応力は、横梁を柱で支持する単純支持梁として算出することとした。また、先に求めたロープ張力は、実際には斜め下方向に作用するが、簡易計算として水平に作用するとして算出した。その結果、鋼横梁に発生する曲げ応力は57MPa となった。
 以上の算出結果から明らかとなったことは、鋼横梁STKR400の降伏強度245Mpaに対し、曲げ応力は57Mpaと23.3%と、一般的な構造物の安全率1.5~2.5に対比して鋼横梁の安全率が4を超え十分な耐荷力があるとの結論となった。
③遊具に作用する実応力の測定結果
 先も示したが鋼横梁の破断破面を調べた結果から、取付金具は疲労によって破壊に至った可能性が極めて高く、問題の疲労亀裂起点は取付金具を鋼横梁に溶接している上下端の溶接止端部と推定した。そこで、子供が乗った吊り篭がどの位置にあると、どのような応力値となり、それが疲労損傷発生応力となるかの検証実験も併せて行ってみた。図‐1が破断した側から2.4mに吊り篭が位置した状態、図‐2は中央部に位置した状態、今回は省略するが逆に未破壊側から2.1mに位置した状態において応力値計測を行った。その結果、図‐1に示す状態において取付金具上部溶接ビード近傍の応力値は最大130Mpaとなっていた。ここに図を2つ掲載したが、荷重の載荷位置によって応力値の差異はあるものの全般的に取付金具を溶接しているビード上部に高い応力が発生していることが明らかで、溶接ビード上部に繰り返し滑り変形が蓄積、発生した疲労亀裂の起点から亀裂が伝播、進展して破壊に至ったものと判断した。以上が、遊具取付部を破壊に至らせた疲労亀裂の発生、進展過程の説明である。


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