道路構造物ジャーナルNET

①愛知県の地方機関における橋梁現場担当の現状

若手・中堅インハウスエンジニアの本音 ~マネジメントしつつ専門的知見を得ていくために~

愛知県豊田工事事務所
工務課(工務・環境グループ)

宮川 洋一 氏

公開日:2017.07.06

最前線で対応できる専門技術職員が足りない

 これまでは我々の先輩のなかには、橋梁ならあの人、河川ならあの人、港湾なら…と、「ミスター〇〇」と言われる人たちが、県庁をはじめ事務所のどこかに必ずいた。また、橋梁担当は別の課にあり、少なくとも課長補佐のラインまでは経験豊富な職員がそろっていたように思う。
 しかし、10年ほど前、現在の形に組織改編が行われ、各建設事務所の道路整備課内に橋梁担当がかろうじて残される形となったが、結果的に専門的技術力は低下する方向となっていると思う。
 また、数年前くらいまでは各事務所に橋梁について技術的にも踏ん張れる担当職員が一人はいたと思う。
 新設橋梁事業が少なくなる中、橋梁の設計や工事を経験する人は限られてくる。新設橋梁を設計することを理解しないままに、既設橋梁の補修・補強事業の設計に対応することは難しい。既設橋梁は構造をはじめ、年代による基準、工法、材料、施工方法、使われ方、環境、状態などの違いによって、千差万別のものを扱うといってよい。
 既に本格的な補修・補強時代を迎え始めた現在、これまで以上に専門技術力が必要とされる難しい案件が増えているのに、橋梁をあまり経験しない職員が対応する事態が生じている。

マネジメントによる確実な事業実施のために

 既設橋梁の補修事業については、県庁を中心として、「アセットマネジメント」の考え方に基づき、「橋梁定期点検」が計画的に行われるよう制度化されてきた。現在は、国が策定した「インフラ長寿命化基本計画(H25.11)」において策定が求められた行動計画としての「愛知県公共施設等総合管理計画(H27.3)」と個別施設計画としての「道路構造物長寿命化修繕計画(H27.3)」が策定されおり、その計画に基づき事業が進められている。
 対策の必要性のもと、計画を立ち上げ、事業化し、継続的に予算確保をしていくために、議会や財政当局、一般県民への説明にも、「アセットマネジメント」に基づく「橋梁定期点検計画」及び「道路構造物長寿命化修繕計画」は欠かせない。そしてそれらが毎年計画通りに着実に進められることによって効果があげられる。
 そのためには、全体計画策定、予算配分を実施し、マネジメントする県庁機関だけでなく、それらの計画の本質を踏まえ、現場にて実橋と対峙し、予算執行する出先機関との双方に専門技術力が必要なのだし、それらの両輪がまわって初めて事業計画の遂行と目的の達成、ひいては県民からの負託に答えることなると思う。

 計画を策定しさえすれば、あとは設計業務発注、工事発注さえすれば設計コンサルタントや施工業者が自動的にやってくれるわけではない。また、予算さえ箇所付けされればすべて解決するわけでもない。

 マネジメントも大事であり、現場対応も大事である。先の両輪が継続的に機能しなくては、「PDCAサイクル」は計画策定時の飾り言葉でしかなくなってしまう。まだ策定されたばかりの計画に手を加え、より良く、充実したものにしていくことが、今後、我々地方自治体の技術職員が行うべきところであり、ここからが正念場であると思う。

より充実した橋梁マネジメントへの転換へ

 当県の「道路構造物長寿命化修繕計画」は現在のところ、メンテナンスに主眼が置かれた修繕計画である。今後は修繕計画だけでなく、橋梁ごとに細かな諸元や過去の補修・補強履歴などを加えた「橋梁版カルテ」を確実に作成し、そのうえ橋梁ごとの今後の補修・補強計画、更新計画までをきめ細かく策定することにより、より総合的に充実させた「橋梁長寿命化・更新計画」へ進化・転換させるべきと考える。
 基本的なデータベース構築が落ち着いてきた今、その時期に来ていると思う。既にそのレベルの計画を策定している自治体もあるようだ。
 この計画をすぐに、所管する橋梁すべてについて作成することよりも、例えば15m以上とか、30m以上の橋梁などに絞ってもよいので、古い年代につくられた橋梁についてから優先的に整備していくべきと思う。考えればわかることだが、そこまで実行に移すことができていない。
 西三河建設事務所では15m以上の橋梁は150橋程度、30m以上の橋梁は80橋程度の数となる。これくらいの橋梁数なら総合的な計画策定をすることは決して不可能ではないと思う。これに橋齡や構造形式、重要路線などの要素を勘案してもよい。まずはこれらの橋梁を対象にして、過去の補修・補強履歴より作成し始めると良いと思う。
 全体数を網羅することや、一つも漏れのないようにすることばかりに注力するのではなく、現場にて本当に役立つものにすべきと思う。西三河建設事務所では橋梁ごとに過去の補修・補強履歴を調べ、データベースを作成したが、とても役に立ったし、これからも役に立つと思う。現在これが更新されているかどうか…。



(通常の橋梁長寿命化修繕計画(上) と 橋梁ごとのカルテ(下))

橋梁補修・補強の設計には十分な検討を

 愛知県では一般的に、橋梁新設設計では、測量、地質調査、予備設計を実施し、さらに詳細設計を実施する。これに対し、補修・補強設計では、調査、検討、詳細設計を一つの業務として実施している場合が多い。発注前にすでに実施工法をほぼ決めていきなり詳細設計を実施する場合もある。
 補修・補強設計についても新設設計のように、調査、予備設計を実施して、より検討や調整の時間を多くとるべきと考える。
 採用される工法に至るまでのプロセスにもっと力を入れ、関係者との調整を含めしっかりとした設計をすることが求められていると思う。


日名橋全景(上)、ゲルバー部の損傷(下)により橋の構造系を変えることに

 橋梁全体系の耐震補強設計をしたり、橋の構造系を変えたりする場合などでは、占用者の対応が追いつかないことも起こる(実際起こった)。市街地にかかる主要な橋梁の場合、占用物も主要幹線であり数も多い。これらに対する調整も必要である。また、河川、港湾、交通管理者、鉄道事業者などとの十分な調整も必要である。さらに限られた施工条件となるため、施工検討をしっかりと行うことが必要となる。
 予算執行すること、工事発注して前に進めることばかりが、我々の仕事中の「認識されやすい成果」として重要視されるあまり、これら当たり前とも思われることにも時間や手間がまわらない状況にある気がする。

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