道路構造物ジャーナルNET

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」⑲

福島河川国道編① 南三陸での成功事例を糧に桑折高架橋の施工に挑む

横浜国立大学
大学院 都市イノベーション研究院
准教授 

細田 暁

公開日:2017.05.24

品質管理の取り組み継続のため
 現場の若い人たちにも直接指導

 ――私が気になったのは、以前に東北技術事務所にデータを見せてもらったときに、福島河川国道事務所さんの構造物の目視評価の点数がほかの事務所と比べてすごく高かったことです。目視評価の点数は評価者によるばらつきも生じ得ます。本当に高ければそれでいいのですけれど
 佐藤 たしかに私の現場だけでいうと点数はけっこう高いです。沈みひび割れはほとんど見たことがないですし、打重ね線も3点は下回らない感じです。型枠継ぎ目からのノロ漏れ)は若干ありますが、様々な現場で改善をしています。気泡もほとんど3から3.5で、4点のところもたくさんあります。
 ――その意味ではだいぶ浸透してきていますね
 佐藤 逆に浸透したことで、最近気をつけていることもあります。たとえば、50cm間隔でバイブレータを入れるときに、型枠に50cmピッチで印をつけることはほとんどの現場がやっています。しかし、実際にそのピッチでバイブレータを入れているのか。最初のころは、みなさん50cmピッチの印を見ながら作業を行ってくれていたのですが、私も頻繁に現場に行けなくなってきているので、本当に実践されているのかを確認しています。
 ――チェックのための準備をしているだけでは意味がないですよね
 佐藤 また、バイブの10cm挿入で、マーキングは当たり前でも層厚管理をきちんとやって挿入をしているか、というところまできちんと見て欲しいと、技術員やPPP職員さんに話をしています。
 ――当然、できあがりもチェックしますから、手は抜けないと思いますが
 佐藤 技術の継承という意味で、この取組みをずっと継続していくことが重要だと思っています。最近、私の現場には、若い元請職員さんが何名かいます。管理技術者や現場代理人よりもその若い人たちに、取組みの意義を直接伝えるようにしています。
 勉強会になると、管理技術者や代理人の出席で、実際に打設される協力会社の人が来ることはほとんどありません。ゼネコンさんも地元企業の人も平成生まれの方が現場にたくさん来ているので、そういう方になるべく指導することが、取組みの継続につながると思っています。


取組みをずっと続けること、継承していくことが大事

 ――いいことですね。先日、釜石の復興支援道路の小佐野高架橋を施工したテラさんと話をしたのですが、南三陸国道事務所の手間本監督官との仕事はとてもスムーズでしたと話をしていました。橋台のひび割れ抑制も一緒に考えてくれたし、別の現場だと見てくれないところが多い追加鉄筋の費用も見てくれた、と。この例のように、全国の状況を見ていると、かなり変わってきているみたいですけど、福島ではどうですか
 佐藤 私は施工者と直接協議をする立場です。施工者からの提案に対し、内容を精査して必要な費用について設計変更の対象としますとの回答を書面で出す。その協議書面で事務所は変更に必要な経費を計上しています。
 ――技術的に必要と判断すれば、設計変更は当たり前ですか
 佐藤 当たり前です。標準設計で0.2mm以上のクラックが確実に出て、温度応力解析をすると0.5mmクラスまで出るのはよくないので、最低限必要になるレベルまでは、費用を出します。さらに、追加対策も必要性等の理由があれば費用を出すようにしています。
 ――(編集部)手間本監督官にインタビューしたときに、ひび割れが出るとわかっているのだから、最初から追加鉄筋の経費を100万円くらい見て、温度応力解析は実施しない、という話を聞きました。今回、桑折高架橋では温度応力解析を行うとのことですが、これもお金を見ているのですか
 佐藤 見ています。ただし、手間本監督官と同じですべてやっているわけではありません。桑折高架橋の何十基かあるなかで、代表的なところと条件が似たようなところで行って、それ以外のところは施工時期や気温などに応じて、温度応力解析が必要かどうか、勉強会で線引きをする予定です。
 ――手間本監督官の例で言えば、既往の実績もあるので温度応力解析をしなくても答えは出せると思います。今回は橋台ではなくて、橋脚なので形や構造も違って、なかなか既往のデータを使いにくく、よくわからないので、温度応力解析を使うということでしょうね
 佐藤 鉄筋ではなくH鋼を使用する点や、門型橋脚では、まだデータが少ないという意味もあります。

高架橋の床版耐久性については設計段階から検討する必要

 ――先ほど、取組みは継続しなければならないと仰っていました。続けることだけが目的ではなく、少しずつ改良しながら、不要になったことはつぶしながら、持続的に発展していけばいいと、私も思います。その意味で、少しでも発展していくためにはどのようなことが大事だと思いますか。たとえば、私はデータベースがきちんとあって、取組みの効果や行った工夫の効果が検証できることが必要だと考えています。そのために私も頑張りますが、佐藤さんのいまの立場ではいかがでしょうか
 佐藤 すぐに答えるのが難しい質問ですね。
 ――それでは質問を変えますが、高架橋の上部工においての耐久性は本当に大丈夫でしょうか。佐藤和徳さんは上部工の高耐久化は、費用の面もありみんなが賛同してくれず、夢途中で終わった、と言っています。結局、フライアッシュ床版(エポキシ樹脂塗装鉄筋を使用した)などの高耐久床版も5、6箇所でいまのところ終わってしまっています。桑折高架橋でも塩分を含んだ凍結防止剤を散布するため、普通セメントで施工するとなると怖いと思います
 佐藤 床版自体の発注はまだなので、床版をどのようにするか議論はできていません。ただ、小山田課長も耐久性についてはかなり気にしています。JRの線路を跨ぐので縦断が4%ときつい。風もかなり強い場所なので冬場は相当凍結する可能性が高く、凍結抑制剤を散布することになると思います。そのため塩害対策は設計段階からある程度考えておかなければなりません。最初、PC床版を想定していましたが、現在はRC床版に変更しています。RC床版で高耐久のものをどのようにつくっていくかについては、小山田課長に案があると思います。しかし、私はまだそこまで考えられていません。まずは平成32年度末までに目の前の下部工を全力で良いものにすることで手一杯です。

やらされるのではなくチャレンジして楽しむ
 注目されること、褒められることの嬉しさ

 ――たぶんそれが先ほどの質問の答えの一つとして、持続的発展のためにはチャレンジすべき課題があることが重要だと思います。やらされ仕事になった時点で終わりです。どんな小さなことでもいいから、みんなで本気でやって改善をしていく。いまは、桑折高架橋の下部工のことで精一杯ですよね
 佐藤 それでもチャレンジできているのは、唐丹第2高架橋の施工が楽しいと思えたからです。それでいまの私がある。あそこで流されていたら、言われたことしかやっていなかったと思います。先生方の熱い思いを聞いて、業者さんともいろいろと議論して行った結果、完成したものが誉められて、局長表彰もいただいた。
 ――みなさん、工事が注目されるとがんばるし、見られていると張り合いがありますよね
 佐藤 そうですね。三陸、南三陸と、工事が進んできて、今度は福島だ、という思いでやっています。
 ――ありがとうございました

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