道路構造物ジャーナルNET

-分かっていますか?何が問題なのか-㉔予想しなかったプレストレストコンクリート橋の欠陥と業界の体質(その3)

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員

髙木 千太郎 氏

公開日:2017.04.01

3.優れた技術者とは?

 本来であれば、今回がPCT桁橋の間詰床版抜け落ち事故の最終回とする予定であった。私もそのつもりで室内実験編を取り纏め、最後のフレーズは何を語るべきかについても考えが纏まっていた。ところが、である。執筆をしている過程で、そうだあれも説明すべきだ、これにも着目して考えたはずだなど色気がでて、書くべきことが予想を超える結果となってしまった。読者の皆様にはお詫びしなければならない。次回の最終回を取り纏めるのに少し時間を頂きたい。
 そのお詫びといってもそれに値しないかもしれないが、優れた技術者とはに触れて少し私の戯言を聞いていただきたい。以前にも私が登壇させた高島春生氏のことである。私は、時々時間があると『道路橋の実用診断学』現代理工学出版株式会社、昭和63年5月30日発行を読む。今から約30年も前に出版された書籍であるが、高島氏が執筆された内容は現代に十分通用する。中でも今回のPC道路橋に関係する記述があるので紹介する。それは、第1章総論の(4)PC桁の診断にある。「ポストテンションPCT桁橋の桁下に重機車が衝突して外桁を破壊し、・・・PC橋が架設され始めてより20年以上経過している橋もあり、次第に診断の必要性がでてくると考える。ぜひ資料完備を心掛けてもらいたいし、今後は破壊工学的な研究が必要であろう。例えば横締めPCケーブルを切断したとき、グラウトによる摩擦力がどの程度残り、再びプレストレスを入れると、どの程度有効となるかなどの試験データが必要となろう。」と書いている。私は、当時この書籍を読む機会が無かったのでPC構造に関する知識もほとんどなく、今回説明している事故に会わなければ、読んだとしてもこの部分は素通りしていたと思う。ここ数回に渡ってPCT桁間詰床版抜け落ち事故について私が説明していることは、昭和60年代、いやもっと以前から高島氏は予測していて真実を理解していたのかもしれない。優れた技術者とは、並外れた想像力に優れる人なのである。先にも話したが、成果主義が第一との考え方もアセットマネジメント、NPMを齧ったことから理解はできる。しかし、技術者には、余裕が無ければ豊かな想像力は生まれない、豊かな想像力があるからこそ技術が進歩することを忘れてはならない。人も車のハンドルもあそびがあることこそ重要と真剣に思っている。
 さて、いよいよ次回がPCT桁間詰床版抜け落ち事故編の最終回となる。読者が読みたかった実橋のプレストレス測定、A社の誇り高き技術営業者の顛末、新設道路橋でプレストレス量を測定した結果などを含めて最終章とする考えである。オオカミ少年ではないが二度目はない、今度こそ乞うご期待願いたい。(次回は5月1日に掲載予定です)

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