道路構造物ジャーナルNET

⑮インフラ・メンテナンスの地方の状況

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術管理監

植野 芳彦 氏

公開日:2017.02.16

5.まとめ

 最近各所から相談を受けるのが、「地方自治体のインフラメンテナンスの実態が知りたい」という相談である。地方の状態は、中央ではわからない。だれも、経験していないからである。インフラの管理は国・県・市町村ではさまざまな問題が有る。JRやNEXCOも状態は違って当たり前と言える。
 そもそも管理の方針が、管理者によって違って当たり前だと思う。特にJRさんとNEXCOさんは違いが明確なはず。国・県と自治体もまた大きく違う。そこにヒト・モノ・カネが大きく違うので、しっかりしたマネジメントが必要であり、安易に他の組織の方針を入れようとしてもうまく行かないはずである。日本人はこういう技術が絡む問題になると、技術にこだわりすぎる。「技術、技術」というが、まず判断する人間にどれだけの技術力があるのか? さらに、地方では情報量が圧倒的に少ないと言う事実である。

 「マネジメント」とはなにか? 非常に難しいことを言う方々が居るが、課題を「まとめ」ることである。「限られたヒト・モノ・カネで維持管理を実施していく。」事である。「戦略」である。戦略で大事なのは、「情報を得ること」と「考えること」である。
 武道や芸事の修行の段階を表す「守・破・離」というのがある。最初は、師の教えを忠実に学ぶ。熟練するにしたがって、其れを破っていく。さらに、離れ、自分の流儀を作るまでになる。この「守」 もできないのに、わかったふりは危険である。なぜ素直に自分の未経験やわからないことを話し、教えを請わないのか?
 現場で施工管理をしていたころ、上司は「下請けさんより早く来て事務所を開けておけ。職人さんが現場に入る前に、現場を掃除しておけ」と言われた。そうすることによって、職人さんと顔をあわせいろいろ教えてもらった。工場で生産管理をしていた時は、「1日に3回は工場を回れ」と言われた。工場を回っていると、またここでも職人さん達が、いろいろ教えてくれた。溶接や矯正の仕方など、図面だけではわからないことまで。
 実物を見て、さまざまなことをやっていると、設計に反映できるのだ。計算だけでなくディテールを工夫できるのである。実際にやっていれば、工夫したくなるのが技術者だと思う。地方の物件を見ているとそれが感じられないし、やっつけ仕事感が有り、如実に設計者・施工者の技術力も見えてくる。

 そして、特に国土交通省の方々には、散々いろいろ教えていただいた。なによりカルチャーショックを受け、世の中はこういう風に回っているんだと感じた。物事の考え方がガラッと変わった。おそらく人生最大の師匠と言える工藤さんに出会った時期でもある。工藤さんは、構造物の基準類を担当しており、私はその下についた。標準設計や最適化の大家として知られていた。限られた期間では有ったが、一緒に仕事し吸収できた。その後、工藤さんが退官されたので、私が基準類を受け継ぐ形となった。新たな課題として、当時盛んに言われていた、省力化構造やコスト縮減という課題をやることになった。標準設計は、基準や積算を厳格に遵守していることはもちろん、コスト縮減や施工性、維持管理を検討した集大成なのである。維持管理においてはもっと積極的に「標準化」を推進していれば、もっと容易になっていたと思われる。
 先日、ある方から「維持管理のロボット化を推進するために構造の標準化を行ったほうが良い。」と言われた。私は「そんなことは数十年前から考えてやっていたんです。コンサル協会が標準化に反対して、一部工種を残して、止めたんです。私はその犠牲者」と反論し、さらに「もし、真剣に標準化を復活するならば、今しかない。標準化をきちんと理解して、やれる者は数名しか居なくなっている。その後は、育っていない。」これも、「実」を知らない方々が、標準化に反対し標準化を縮小してしまったからである。


今は見なくった標準設計。馬鹿にしていた方々の技術力は本物?

 声が大きい、地位が高いから、世の中を見通せていて、正しい判断が出来るか?と言うと、そうでは無い。(次回は3月16日に掲載予定です)

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