道路構造物ジャーナルNET

-分かっていますか?何が問題なのか- ⑳斜め吊による跨線橋補強提案顛末

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員

髙木 千太郎 氏

公開日:2016.12.01

1.幹線鉄道を跨ぐ道路橋

 紹介する道路橋は、首都東京と地方を結ぶ重要な鉄道を跨ぐ鋼、コンクリート混合橋R橋に関連する話である。鉄道によって分断された町を繋ぐには、鉄道を横断する道路が必要で、形式としては地下、地上の跨線橋、鉄道の桁下を通るなどがある。街並みが形成された市街地に鉄道を建設することになると、鉄道事業者の費用で先に示したいずれかの形式を選定することになる。古くから、鉄道は公共交通の代表選手・花形であり、鉄道の駅を設けることは該当する地域住民の悲願である場合がほとんどであった。であるから、列車走行の条件が優先し、道路の線形や鉄道の左右を分断する街区の将来を考えることは、近年は常識であるが過去の事例を見ると優先条件ではない。
 今回紹介するR跨線橋も昔の掘割構造地形を利用して建設したことから、旧市街地に取りつく部分にかなりの無理がある。そのため、鉄道を直角に跨いだ後の処理として、踊り場的な部分を造り、曲線半径が著しく小さい無理な線形で鉄道に並行して急な坂路となって街区に取りついているのである。要は急カーブ、急勾配で街区に取り次ぐ使い勝手としてはあまり好ましくない線形と言える。
 問題は、ここからである。首都東京と全国各地を結ぶ高速鉄道、新幹線計画が当該橋梁にも大きく影響したのである。当該橋梁の位置は、新幹線の起点となる駅でもあり、東北、北陸からの主要鉄道網の要とも言える、歌にも歌われている哀愁のこもる駅が隣接しているのである。R橋の下、直近を高速鉄道の隧道が通過することは、当然、R橋の下部構造にも大きな影響を与えることは誰が見ても判ることである。当然、R橋に対する近接施工による影響分析が行われ、対策方法が決定したようである。ようであるとの推定的な表現を使ったのは、私は当時、R橋よりも北側にある道路路線として重要な橋梁に対する影響分析・対策に関わっていたから、R橋の真実は分からないのである。R橋は、同一年に建設されたにも拘らず、何故か一部のみが架け替えられ、一部は部分的な補強で終わっているから不思議である。推定の域を脱しないが、貨物線等が通る部分は架け替えて、首都東京の最重要幹線鉄道部分は、本線切り替えが必要となる橋脚には一切手を付けずに、PC桁への交換と橋台のみが補強された状態であった。
 今回の話題提供の主たる部分は、同一橋梁において、架け替えと一部補強に留めたことが起因となっている。これも推定の域を脱しないが、同様な事例で鉄道事業者が主体となって行う検討は、当然のごとく鉄道事業者寄りの考えと懐具合等によって決まるのが常識である。それは、対象構造物が基準不適合な状況であっても望ましい構造物に更新する、改善するのは鉄道が主体であって、跨線橋と言えどもお構い無しなのである。ここで紹介しているR橋も、多分、新幹線計画の中で多くの関連する施設の一部として扱われ、最低限の対策を行うことで施設管理者と鉄道事業者の間で合意に達した不幸な橋梁と言える。R橋の新幹線通過に伴う近接施工による対策内容が明らかとなったのは阪神淡路大震災の後に行われた「道路橋の耐震補強事業」である。R橋を管理している道路管理者も情けない。R橋は、自らが管理する施設であるにも関わらず、ポンチ絵程度の図面資料しかなく、詳細な構造が一切分からないのである。後にもっと驚いたのは、本橋を建設した鉄道事業者がR橋に関する種々な資料を保有していたのである。言い方は悪いが、知識の無い、数年ごとに担当者が代わる(良く言われている、橋守がいれば管理も適切に行えるのに・・・そんな話はこのような状態を理解しない限り到底無理な話なのであるが)ような組織に対し、英知を結集した鉄道集団(今でもそうなのかは大きな疑問であるが)は、資料なんか渡してもどうせ理解できないのだから、管理主体に資料を渡すのも構造や設計詳細の説明も行わないと考えている節が見え隠れする。どうせ知識が無い集団なのだから、この程度で留めておいても解りっこない、完璧となっていない現状を・・・と思っているから恐ろしい。鉄道事業者の考え方と道路管理者の考え方、対応の差異など話すことは山ほどあるが、これは次回以降に行うとして本題に戻そう。
 R橋は、跨線橋であるから、当然、現行の基準に適合する構造物に改善する必要があるのは当たり前である。しかし、この当たり前が出来ていないから恐ろしい。耐震補強管理済み橋梁の調査 を行っている時に、不幸にしてこのR橋に出くわすことになった。
 確かに1977年と1999年の2回に渡って、縁端拡幅と下部構造躯体補強の耐震補強工事を行っているとの補強履歴がある。データベースを整備する時は大変であったが、このような時に直ぐに分かるのが素晴らしい、自画自賛ではあるが。でも、図面がポンチ絵程度では情けないが。しかし、R橋を見て何か可笑しな感じがする。新幹線通過箇所付近の鋼製橋脚(今話題のロッキングピア形式の橋脚)と写真-3に示すコンクリート橋脚が混在しているのである。私は、R橋区域を担当していた訳ではないが、確かあの時に対策済みと話していた事を記憶している。でも、現地の橋脚は何故、あの時に対策済みであるはずが、その後に繊維巻き立てによる耐震補強を行ったのかである。遠目からは良くは見えないが、橋脚の外形から見て、PC単純桁が連続している構造に不安を覚えた。そこで、何時ものお決まり、詳細調査を行うぞ!である。
 R橋のRC橋脚調査は、鉄道事業者保線担当の激しい抵抗に遭いながらも強行突破、調査状況とその結果が写真-4である。詳細調査は、電磁波によって内部鉄筋の探査を行ったが、国内にある調査機器では深さ方向の限界値で無理とのことから、米国で使用していた(ここで米国に時々行って得た知識が役に立つ)深さ400㍉程度まで調査可能な機器を持ち込み、
鉄筋位置と詳細構造を調べることになった。その結果を図-4に示すが、驚くことに既設の橋脚とフーチングは、ロッキングピアのようにヒンジ構造となっているのである。私の感も良い時は当たらないが、悪い時は結構確率良く当たるから不思議である。この構造では、首都直下型地震の時に最悪の事態発生の起こる確率は・・・と考えたら、夜も眠られなくなる。
 いよいよ、ここで先に感動したMichel Virlogeux博士の話にようやく関連する私の考え方の紹介である。博士とは、スケールも違うし、経験や使っている知識も違うので、これ以降は読んだら忘れてほしい。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム