道路構造物ジャーナルNET

-分かっていますか?何が問題なのか- ⑰奇妙で可哀そうな道路橋の話 その2

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター 
上席研究員 

髙木 千太郎 氏

公開日:2016.09.01

1.建設と管理、縦割り行政の弊害

 道路、特に橋梁を中心に地方自治体における建設と管理の縦割り組織について説明する。地方自治体の場合、道路管理者である首長の基、道路を建設する組織と管理する組織は異なっているのが一般的である。例えば、道路建設部と道路管理部、道路建設課と道路管理課、道路維持課などと分けられているのである。高度経済成長期においては、道路や橋梁等社会基盤施設の建設が主たる事業であることから、建設組織の中に管理部門が小さく置かれていた時代もあった。このように建設部門と管理部門を組織的に分ける大きな理由として、一つは、事業費目の違い(投資的経費と義務的経費と分けている)もあるが、建設部門を構成する人員のほとんどが技術系職員であるのに対し、管理部門を構成するのは、事務系職員と技術系職員が混在しているのである。

 細かく述べると、道路の場合、道路の路線認定、道路監察、道路占用に関する業務は事務系職員の範疇であり、維持補修や占用工事の指導等に関する業務は技術系職員の範疇と分けられている場合が多い。要は、法規に関係する業務を主とする場合、法律等に専門的な知識を持つ事務系職員が中心とならざるを得ないのである。当然、管理部門の中では、技術系職員よりも事務系職員の意見が強くなる、強くなったのである。これも聞いた話で裏付けはどこにあるのかと問われると非常に困るが、戦前から戦後、高度経済成長期前半までは構造物を造ることが主であったことから、事務系職員に向かって技術系職員が「君達を食べさせているのは我々だ!」と言って、事務系職員の業務への「要らぬお節介」と口出しを止め、種々の問題を解決してきたと。

 私の経験では、今や立場は逆転、事務系職員の力の方が強い場合が多い。要は、財務、組織、人事をしっかり握っているのは事務系職員であり、技術系職員では無いからである。技術系職員自ら構造物の設計を行い、施工監督(中には、施工も職員が行っていた)から竣工検査、会計検査をこなしてきた時代と、設計全て外部発注(積算までも外部の場合もある)、工事は請負業者の責任施工、会計検査までも外部の専門技術者が説明する時代と昔とは大きく違うのである。であるから、事務系職員の技術系職員に対する目は厳しく、管理部門の業務判断の多くは事務系職員が行う時代となったのである。事務系職員曰く、「これからの時代、必要の無くなった技術系職員の定数は限りなく抑えるべきである。極論を言えば、技術系職員は必要ない時代だ。」「分りもしない技術論を御託のように並べる技術系職員には、ほとほと呆れるし、愛想を尽かすよ!」とまで言われる技術職冬の時代となったのである。何とも情けない話である。

 二つ目は、構造物の建設には高度な技術と専門職が必要で、管理はあくまで補助的な仕事であることから技術は必要ないとの判断を行ってきた過去がある。新設や更新が多かった時代にはこれで通用したかもしれないが、新設が大きく減少し、構造物を長期間使い続けることが必要となった昨今、事態は大きく変わったのである。過去は、建設で仕事が出来なくなった職員(身体も、頭も、心も疲れ切っている?)が管理の仕事に移って退職までのんびりする時代であったのかもしれない。

 しかし、管理の仕事も近年は大きく変わったのである。事業費や事業規模を算定基準に、組織の人員定数を決める時代から、頭を切り替えて、業務の質と効果を基に決める時代にならなければ適切な管理を行う時代は永遠に来ないのである。話は、脇道にそれたので本題である施設の管理引き継ぎに戻すとしよう。新たに建設した道路、特に構造が複雑な橋梁やトンネルなどの構造物は、建設部門から管理部門に引き継ぐとなると種々な条件が付されるのが一般的である。具体的な事例として、引継ぎの前に行う実査は、まるで会計検査のごとく対象施設ごとに細部にわたって行われ、数多くの指摘(舗装の不陸、道路排水勾配、防護柵や高欄の目違い、・・・)がなされる。同一組織の中であることから互いに相手を尊重し、良い構造物を将来に残そうと十分に配慮して互いの業務を遂行していれば良いが、実態は、建設する部門は自らに甘く、設計、施工、監督を行って構造物を造り、管理する部門は受け取る構造物に対し、無理難題とも思える情け容赦ない指摘を繰り返し、建設部門に対応させるのが実態である。工事が竣工すれば、該当する予算は無いのである。
 今回お話する橋梁の場合も同様であった。同じ首長の基であっても組織が異なれば、同じ組織よりも数段厳しい対応がなされ、当然のごとく種々な引き継ぎ条件が付された。最も重かったのが、現行基準との適合した構造物へ全て改善を行うことの指示であった。

 ここで、前回お話しした対象道路橋の整理をしよう。橋梁は、第1期と第2期の並列した 2橋からなる。第1期の橋梁は、3径間ゲルバー鋼鈑桁橋で1966年(昭和 41 年)に竣工し、供用していたが大きな変状が発生、12年後の1978年(昭和 53 年)に既設橋台をピアアバット化、土圧を軽減する目的で側径間を両方向に増設する工事が実施された。第2期橋は、第1期に建設している運河内の橋脚を第1期橋に発生した変状から使えず、隣接位置に新たな橋脚を築造、3径間連続鋼箱桁橋で1973年(昭和48年)に竣工した橋梁である。当該橋梁の基礎形式は杭基礎でAP-50㍍付近の東京層を支持層としている。当該橋梁が位置する地盤は、フーチング床付け面から約 5㍍は N 値=5 程度の砂質土層 (液状化層)、その下に N 値=2 程度の軟弱な粘性土層が15㍍程度続き、その下に比較的硬質なN値=5~15 程度の粘性土層が15㍍程度、その下に支持層となる砂礫主体の支持層である東京層がAP-45.0㍍付近から続いている。

2.並列する第1橋、第2期橋の変状(損傷と劣化)

 当該橋梁は、供用開始から約30年経過はしているが、上部構造に大きな変状は無く、飛来塩分等による腐食、高力六角ボルトがF11Tボルトを使用しているものの脱落しているボルトは見られず、当然ではあるが疲労き裂は該当する箇所に発生してはいなかった。また、大型車交通量等が多くは無いこともあり、鉄筋コンクリート床版においても、大きな問題となるような損傷は発生していない状況である。また、上部構造の各部材は、応力照査を行ったがいずれも超過程度が概ね1~2割程度であった。また、下部構造は大きな変状は無いものの、第2期橋の橋脚においてやや注意判定となるひび割れと鉄筋露出損傷が発生しており、これは飛来塩分によるものと推定される。


鉄筋露出、腐食が発生した橋脚躯体

豆板、ひび割れが発生した橋台躯体

 当該橋梁橋脚のコンクリートは運河内に建設されていることから、中性化及び塩化物イオン濃度の確認試験を行った。中性化を照査すると、第1期橋がW/C=0.60:中性化深さ=21㍉、W/C=0.75:中性化深さ=37㍉といずれも鋼材の腐食発生限界である40㍉以下であり問題ない結果となった。しかし、第2期橋は、A1橋台及びP2橋脚が既に鋼材の腐食発生限界に達しており、鋼材の断面減少が想定される結果となった。


第1期、第2期橋の中性化試験結果/第1期橋の塩化物イオン試験結果

 問題は、第1期橋が中性化による鉄筋腐食開始年が120年となったのと比較して、第2期橋は、95年と25年も短い結果となったことである。ここでも、コンクリート施工の差異が耐久性に影響を与えることが明らかとなった。塩化物イオン試験の結果は、第1期橋及び第2期橋の運河中橋脚は、塩化物イオン濃度が21.14kg/立方㍍、24.17kg/立方㍍と高く、鋼材の腐食発生限界濃度1.2kg/立方㍍を大きく上回っている。現状で確認された鉄筋露出損傷は、塩化物イオン濃度が非常に高いことからコンクリートかぶり部分をはつり、新たにコンクリート打設するなど何らかの対策が必要な状況であった。

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