民間と行政の双方を経験し、何が見えるか?書いてほしいとの話があった。執筆を引き受けたのは良いが全く書く内容に困った。しかし、これから大きく変化する、社会情勢の中で特に、何が今問題なのか?我々は何をするべきなのかを考える一助になればと思い書くことにする。技術的内容よりも、一般論に近いものとなる。書くに当たっては、批判も罵声も大いに結構である。さまざまな考えの方が居て当然であり、私の考えが間違っているかもしれない。大いに批判していただきたい。
1. 「メンテナンス・レジリエンスTOKYO」に行きました
維持管理は、新設設計よりも難易度が高いということを皆さん忘れているのではないだろうか?「点検くらいできる。」とか、「点検は仕事になる。」と、安易な気持ちで取り組んでいるのでは?役所側は「とりあえず点検をしておけば。」「国がやれといっているから」と真剣に考えている人間は少ないのではないかと改めて思う。たかが点検、されど点検である。本来、点検を行うには、材料、設計、施行、点検方法(非破壊検査技術)がわかっていないと本来は無理である。まあこれは、いつもの話なので置いておいておく。
先日開催された「メンテナンス・レジリエンスTOKYO」の展示会に行ってきた。私のところには、案内も招待も無かった(笑い)なので、会場に行き受付をして、(わざと)「10.その他」というグレーの名札をつけて、会場に侵入した。実は最近、数年間はそうしている。そうすると、声もかけられないし、わずらわしくない。自分の見たい物だけ見れる。
まず、なぜ行ったか?であるが、「世の中の動向を展示物から探ろう」と考えている(これは毎年のことである)。これに関しては、残念ながら、少し時代が戻ってしまったか?と感じてしまった。期待したのは、さらに発展した「モニタリングシステム」と「もっと、トータル的に考えられた点検方法」であったが、残念ながらあまり進化はしていない。
さらに感じたのは、皆さん「勉強していない」ということを、説明者と話していて感じた。特に、「上司」と言われる方々、ダメですよ!真剣みが感じられません。うわべの話で通用すると思っている。これでは信頼できません。皆さん、SIPを極度にありがたがっていて、「SIPでやっています。」と自慢げに言う。だからなんなのだ?使い物にならなければ。そこまではいわなくても、実際使えなければなんいもならない。“虚”の世界でやっているから進歩が遅れてしまっている。大学の先生方や、コンサル、メーカーを頼っているので、本来、必要とされるニーズにこたえられない。「どうぞ研究、頑張ってください」と感じてしまったのは、私だけだろうか?
今、私が考えて居るのは、2順目移行の点検の手法をどうするか?である。「どうしたら、(良い意味で)手が抜けるか?」「ローコスト化できるか?」である。1順目で、劣化の状況が、明らかになってくれば、補修箇所も明確になってくる。この時、点検に関わる費用と、補修工事の費用とは一桁以上違ってくる。点検で、アップアップしていたのでは、補修工事はとても無理である。
つまり、私が求めたかったのは、
① モニタリングシステムのうちでも、安価に設置でき、有効に働く物。
② 見えない部分(たとえば土中部分)を有効に探索できる機器、探査方法
③ 補修後の経年劣化がある程度保障できる、補修方法(ひび割れ、断面修復)
等である。
試験的なモニタリングシステム(富山市内)
改めて言うが、これまで2年と少し、こちら側から、コンサルを見てきて、最近感じていることだが、やはり、日本のコンサルタントは、現場を知らないし、知ろうとしていない。世の中の実情を見れてない。勉強不足。という事を強く感じている。これは、大手、地元に限らず全体的にいえる。本来は、もうこの辺で「点検」の議論はやめたいが、そうもいかない。点検時に手を抜いているとしか思えない事象が多すぎる。現在、富山市では、「セカンドオピニオン」と称し、前年度の点検結果を検証し、怪しい物をピックアップし、職員と確認している。そうすると、大丈夫のはずの橋梁で問題が見つかる。「問題の無い」はずのものが問題があったりするのである。これは、職員も悪い、コンサルの成果をそのまま疑問視しないで受け取っている。それで、補修設計を行い、これもまた、疑いもせず、工事を発注しているのである。場合に寄れば、工事を請け負われた企業から、「数量が足りない。」とか「補修すべきなのに、もれているのでは?」と言った声が聞こえる。最近、これが出てきているがおそらく、昔からそのようにやられてきているのだと考えられる。他人の、あらを拾うことはけして愉快なことではない。さらに、補修方法が、適切ではなく、のちのち厄介なことになるケースも有る。