道路構造物ジャーナルNET

-分かっていますか?何が問題なのか- ⑯奇妙で可愛そうな道路橋の話 その1

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター 
上席研究員 

髙木 千太郎

公開日:2016.08.01

1.埋め立て地域に架かる道路橋

 今回話題提供する橋梁は、埋め立て地域に架かる橋梁、信じがたい事実である。第一の話となるのは、1968年(昭和43年)に架けられた1期工事の3径間鉄筋コンクリート床版ゲルバー鋼鈑桁橋及び2期工事の1973年(昭和48年)に架けられた3径間連続鉄筋コンクリート床版鋼箱桁橋である。埋め立て地に建設する道路橋であることから、地盤の圧密沈下や下部構造の側方移動等に対し十分に配慮しなければ、架設直後から問題が起こるのは当然である。しかし、信じがたいような事実と起こっている変状を伏せてでも何とか問題を回避しようとする技術集団の話である。
 問題の橋梁は、1期工事の3径間ゲルバー構造の橋梁である。これは推定であるから事実とは反するかもしれないので、私の推論として聞いてもらいたい。1期目の橋梁を建設、供用を開始してしばらくすると、鋼桁が橋台のパラペットに接触していることが判明(昭和50年代であることから、新橋建設が主流の時代、伸縮装置や桁の異常を良く発見したものである。)、2期工事に着手する工程は決められていたことから内部で緊急に打合せ、その結果、可笑しな構造となった。この事実をなぜ私が知っているかである。それは、1期工事と2期工事が完了後、その後の対応に苦慮した組織が当該橋梁の管理引き継ぎを依頼してきたのである。当時、建設した橋梁の管理引継ぎは、異なった組織であることから当時はほとんどなかった。引き継ぎの条件として当時のお金で2億円の支度金を付けるとのことであった。


写真-2  3径間鉄筋コンクリート床版ゲルバー鋼鈑桁橋の外観


表-1、2 1、2期工事及び改修工事の詳細

 管理引継ぎの橋梁は、昭和43年、昭和48年建設であることから建設後10年、5年程度である。私としては、供用している橋梁がほとんど新橋に近いことからに異常が無いものと思いはしたが胸騒ぎがしたので、現地調査を行うこととした。現地に行って驚いた。1期目に建設したゲルバー橋の伸縮装置の遊間は全くなく、雑草の生い茂る取付け部分の護岸を掻き分けて桁の端部を確認すると、パラペットに桁が接触、橋台コンクリートが一部はく離している状態であった。更に驚いたのは、1期目の2橋脚のフーチングが図-2のように2期目橋脚位置と異なった箇所に張り出している状態が明らかとなった。
 現況の写真を十数枚撮り、上司に報告したのは言うまでもない。2億円の支度金はほしいが、「現況の変状があまりにも悪く、今後の改修費が想像以上に高額となる、事実を伏せていましたね。」との説明を加え、丁重にお引き取り願った。その時、上司と私のやり取りは以下である。「髙木君、あの橋は、どうなるのかね?」「あのまま地盤が圧密沈下すれば、桁は座屈、最悪桁が跳ね上がるかもしれませんね。」「どうすれば、変状は止まるかね?」「そうですね、橋台背面の土圧を軽減するために、側径間を増やすか、もしくは、地盤改良か増杭でしょうね。」「あの2億円で対策は可能かね?」「まあ、2億円以上かかると思いますし、改修工事は、かなりの費用と通行規制が伴うので外部への説明が大変でしょうね。そもそも、1期目に築造したフーチングに2期目の躯体を予定通り乗せることもできず、そのフーチングを見捨てて、2期目の橋脚を別位置に築造するとは。普通だったら、現況がこのようになっているとの説明があればまだしも、みっともない橋を2億円で引き取れ、これはないですよ!」「そうだよな。当初の設計が誤っていたと言うことか。これから1期目の尻拭い工事か・・・大変だな、彼らは・・・」である。

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