道路構造物ジャーナルNET

土木研究所集中連載①

道路橋桁端部の腐食対策に向けて -既設コンクリート道路橋の桁端部用排水装置の開発-

国立研究開発法人土木研究所
構造物メンテナンス研究センター(CAESAR) 
主任研究員

田中 良樹

公開日:2016.06.16

3.桁端部用排水装置の開発

 共同研究では、このような桁端部の腐食環境改善を目的として、桁端部用排水装置の開発を行い、現在、その実用化に向けた活動を続けている。桁端部用の排水装置とは、図-2のように、既設橋の側面から遊間に樋状のものを挿入して、伸縮装置を通じて流れる路面の水を受けて、橋の側面に排水するものを想定している。桁端部用排水装置の開発にあたっては、次の点に留意するとともに、開発の方針として目標遊間長と排水装置自体の耐久性の考え方を定めた。


図-2 桁端部用排水装置の概念図

3.1 開発にあたっての留意点
(1) 止水性
 排水装置とコンクリートの境界部及び同装置の継手部(継手を設ける場合)は、その部分から漏水することなく、水を受け止められるように止水を行う。温度の影響や活荷重たわみなどの常時の遊間長の変化に対して、止水性が確保されるように配慮する。
(2) 排水性
 塩水が遊間に滞水しないように、また、非排水型でない伸縮装置のときは、土砂等が容易に堆積しないように、排水勾配を十分に大きくする。排水先の二次損傷を防ぐため、流末処理に配慮する。
(3) 位置、形状の保持(耐荷性、耐変形性)
 設置した排水装置が、排水や土砂によって容易に沈下、変形することがないように固定、支持する。
(4) 凍結対策
 排水装置の低温時の特性や、排水装置の周囲の水の凍結によって、上記(1)~(3)の機能が直ちに損なわれないようにする。また、排水装置の設置によって、周囲のコンクリートの劣化を促進させないように配慮する。
(5) 耐久性
 排水装置、固定治具及び止水材の素材自体の劣化やリラクセーションによって上記機能が早期に損なわれないようにする。
(6) 施工性
 多くの橋を対象に、腐食環境の改善を早期に実現するためには、排水装置の設置、撤去(取り換え)が比較的容易である必要がある。また、適時に漏水対策を行うには、一般供用しながら側面から施工できることが有利である。

3.2 開発の方針
(1) 適用の対象とする遊間長
 適用可能な遊間長について、共同研究では、現存する数が多いと考えられる支間20~40m程度の単純PC橋を対象として、まず50㍉を目標とした。当然ながら、遊間長に応じたさまざまな排水装置等の具体策が用意される必要がある。
(2) 排水装置の耐久性の考え方
排水装置の長期間の性能保持について、現時点では未知数の面がある。このことから、桁端部用排水装置は、恒久対策に至るまでの桁端部の劣化進行を当面抑えるための応急対策として適用することを想定している。後述する実橋での試験的な設置等を通じて、排水装置の耐久性についても検討していく。

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