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-分かってますか?何が問題なのか- ⑫「モニタリングの現状と課題―持続力と議論が必要―」

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター 
上席研究員

髙木 千太郎 氏

公開日:2016.04.01

ポストイベントとヘルスモニタリング
 米国ではヘルスモニタリングに研究費が付き辛い現状

1.モニタリングとは?
 そもそもモニタリングとは、現地から離れた場所(監視センター等)において、リアルタイムで対象施設の現況を定量的に評価し、適切なメンテナンス及び地震等の自然災害発生時において安全性や使用性の判断を定量的に支援する目的で開発された仕組みである。対象をインフラと考えるならば、安全性を確保するために対象構造物の健全度(損傷度)を監視することである。モニタリングは、大きく分けると2種類あると考えている。
 一つは、地震、豪雨、台風等ポストイベントを対象として計測するもので、目的は、被災の軽減や速やかな復旧に役立つように定量的に判定することである。
 もう一つは、長期計測が柱となるヘルスモニタリングである。前述のポストイベント時に機能することとは異なって計測の目的は、効率的・効果的な維持管理を行うためで戦略的な資産管理(マネジメント)に活かすための長期計測である。モニタリング先進国である米国においても、イベントへの活用モニタリングには多額の研究費が与えられるが、維持管理・効率的な資産管理に活用するヘルスモニタリングには完成度を疑問視し、研究費がつきずらい状態と米国の研究者の多くから聞いている。日本の現状は、イベント時に対する活用はさておいて、ヘルスモニタリングが直ぐにでもできるかのような風潮となっているが、本当に大丈夫なのかと私は疑問視している。これまでモニタリングについて基本的な考え方を説明したので、次に具体的な事例を紹介し、解説することとする。

常時モニタリングを行っている東京ゲートブリッジ
 Weigh-In-Motionなどを採用

2.東京ゲートブリッジのモニタリングシステム
 東京ゲートブリッジは、江東区若洲と大田区城南島間を結ぶ東京港臨海道路約8㌔の一部に位置し、主径間部分の橋長が約760㍍、最大支間長約440㍍の3径間鋼製トラスボックス構造(鋼重約20,000㌧)の道路橋である。この橋は、今から25年ほど前に私が基本設計に関係していたことから思いで深く、財政状況等から国土交通省が東京都に代わって建設した橋梁である。さらに、工事竣工時に点検計画を含む維持管理要領や計測要領の取り纏めなどに委員として加わったことも本橋に関して意見を述べる要因の一つとなっている。
 常時モニタリングを行っている東京ゲートブリッジの特徴としては以下が挙げられる。
1) 全長2,993㍍の長大橋
2) 世界最大規模であるBHS鋼材を使用したトラス・ボックス一体化構造
3) 負反力対策(アップリフト量:1,526kN/本平均値)のタイダウンケーブル(PCケーブル)
4) 機能分離型大型免震ゴム支承
 東京ゲートブリッジは、首都東京へ流入する自動車交通を分散化すると同時に、神奈川から千葉へ抜ける時間短縮効果もある重要な橋梁である。橋梁の特徴にも示した各要素は、種々な構造的、材料的にも特異な橋梁との判断となり、橋梁の挙動に大きく影響する因子でもある。そこで、東京ゲートブリッジは、FEM 解析を用いた挙動シミュレーション等を行い、その結果を参考にモニタリングプランの検討を行い、種々な装置を設置し、計測している。
 モニタリングシステムに求められる平時の機能(ヘルスモニタリング機能)としては、第一には、車両等の活荷重、温度等の変化とその応答に対する動的なデータ測定を行うことである。第二には、対象となる主要部材等の健全性評価を定量的な数値を基に行うことである。第三には、周期的かつ連続的に変化する温度変形や床版・桁の挙動等の静的なデータ測定から橋梁の保有する機能の評価を行うことである。また、本橋に採用したWeigh-In-Motion(※編注:車両重量計測システム) は交通車両が橋梁を通過したときに生じるひずみから、逆解析によって通過車両重量を算定する方法である。
 Weigh-In-Motionの特徴はシステムが比較的簡便である上に、瞬時に車両重量が得られることで、海外では過積載の違反車両の取締りに使っている事例もある。本橋の鋼床版や構造詳細は、疲労損傷が発生しにくい構造ではあるものの、大型車両の走行量や荷重実態の把握も可能であることから、同一路線上の他の橋梁への疲労環境情報の適用や予想できない疲労損傷発生に対する工学的な対応も可能となると考える。長大橋であることから、温度は橋梁挙動に与える重要な因子の一つである。躯体の温度は天候や日照条件によって大幅に変化し、橋梁はそれらの条件によって3次元的な挙動を示す。温度変化と応答の関係は、1日もしくは1年といった期間で周期的かつ連続的に変動するためにモニタリングに適用しやすい。また、長大橋では活荷重による応答と比べて温度変化に対する応答は大きく、温度変形挙動モニタリングが橋梁の機能健全性評価に有効となる。温度とその相関が高い応答を常時、長期間に渡ってモニタリングすることによって保有する機能の健全性評価を適切に行うことが可能となる。
 次に、本橋に採用されている国内最大の機能分散型免震ゴム支承に関する計測についてである。本来支承は、橋梁の上部工から受ける荷重を下部工へ伝達するとともに、荷重を解放、減衰させる重要な機能を有している。すなわち、支承が円滑にその機能を発揮することによって、上部構造と下部構造が有効に耐荷力を維持するものである。しかしながら、国内の大きな課題として橋梁の損傷事例に支承の異常等が報告されており、支承の固結を原因とする疲労損傷なども報告されている。また、海上橋におけるゴムの変状等の事例も耳にする。ここに示したこれらの要因に対応する目的で本橋の機能分散型大型ゴム支承のモニタリングを行うものである。以上が平時(長期ヘルスモニタリング)のモニタリングシステム導入の必要性とそのポイントである。

予測部位/部材を特定しリアルタイム計測
 ポストイベント・モニタリングで規制などを容易に判断

 有事の機能(ポストイベント機能)としては、地震、台風及び豪雨時等の自然災害発災時において、当初設計で求めた重大損傷が発生する可能性が高いと予測した部位(ホットスポット)や予想を超える挙動を示す部材を特定し、損傷のモード等をリアルタイムで計測することによって、橋梁の健全度判定(安全性及び供用性判定)、安全性確保を支援することである。発災時となれば道路管理者(東京都港湾局)は、設置したモニタリングシステムから得られた定量的な種々なデータを基に、交通規制及び規制解除についてリアルタイムで容易に判断が可能となる。

 さらに、このように種々な工夫がなされた長大橋の挙動を数値で捉えることは今後の設計、施工に有益な情報となる。本橋梁に採用した先に示した構造、部材、構造詳細等が種々作用荷重や環境変化にどのように挙動するかを詳細に計測することによって、今後の新たな橋梁構造の設計、維持管理にフィードバックすることができる。
 また、今話題の点検・診断に関するモニタリングの有効性がある。東京ゲートブリッジは長大なスパンで点検補助治具が少ない構造であることから点検に長時間を要するため、専門技術者による点検には多額の人件費や検査費用が必要となる。さらに、近年では構造物全般にわたって精通する専門技術者の不足や技量不足も深刻化している。これらの問題に対し、モニタリングシステムの採用は、供用環境の評価によって点検頻度や点検のレベルを変えるといった維持管理計画等の合理化等に機能することも期待されている。

全て光系センサを使用
 信頼性の高いFBG系センサを選択

 東京ゲートブリッジに採用したモニタリングシステムは、全て光系センサを使用している。よって先に示した重要な温度測定も光ファイバーを利用したセンシングを行っている。採用した光ファイバセンサには一般的に使用例の多いひずみ分布を基本とするFBG(Fiber Bragg Grating) 系センサと光損失分布を基本とするOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)系センサの2 種類があるが、常時のシステムであることから使用例が多く信頼性?の高いFBG 系センサを選択した。FBG系センサにはFBG 温度計があり、これを利用することが可能である。しかし、FBG温度計は価格高いので比較的安価なFBG ひずみセンサを温度測定に採用している。本橋で重要なセンシングとなる支承変位計測は、支承周囲の上部工に当て板を設置し、下部工に固定したFBG 変位計によって上部工と下部工の相対変位を計測している。また掛け違い部においても同様に当て板と変位計の組み合わせを採用している。
 センサの設置位置は、メインスパンの中央部に車両重量測定用センサと、温度用ダミーセンサ、下フランジひずみデータ用センサを配置している。速度・軸位置検知用センサはB点を挟むように橋軸方向へ2000㍉ 離した位置、つまりダイアフラム同士の中間に配置している。以上が東京ゲートブリッジモニタリングシステム及びセンサの概要である。


表‐1 東京ゲートブリッジモニタリングシステムセンサ別個数と目的

正規稼働状態まで丸2年を要した
 データ処理の再検討やセンサの交換 

 東京ゲートブリッジのモニタリングシステムは、供用開始後常時稼働し、設置当初検討して必要と判断した種々なデータを計測・収集している。しかし、供用後2年経過した時点で日々得られる膨大なデータ量の処理の再検討や機能が十分でないセンサ類の交換を余儀なくされた。モニタリングシステムから得られる計測データの内容及び分析結果等については、機会を改めて説明するが機器交換は耐久性等から1軸加速度計及び桁内温度計の全数を交換、システムの一部改修等を行い、現在はほぼ正常に稼働する状態となった。また、排出される測定データは、設置目的や構造特性を十分理解して再確認することが重要である。それは、測定されたデータがどのような意味を持ち、基本的な考え方、橋梁の挙動に会わないようなデータ取得となっている可能性が高いからである。東京ゲートブリッジもまさにここに示した問題を抱え、正規稼働状態となるのに丸2年を要した。設置したモニタリングシステムは、過去の事例を参照して構築したとしているが、橋梁(構造物)のモニタリングに関する種々な知識と計測装置の正しい理解がなければうまくはいかないものである。

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