道路構造物ジャーナルNET

-分かってますか?何が問題なのか- ⑩「橋梁形式選定についての私見と担当技術者への願い」

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター 
上席研究員

髙木 千太郎

公開日:2016.02.01

3.形式選定の魅力と行政技術者のあるべき姿

 橋梁は、建設後100年以上使われ、多くの人々に愛されることを求められる高価な社会基盤施設である。近年建設される多くの橋梁は、標準的な橋梁形式選定作業でさえも行政側で形式を絞り込む作業を行える技術者がほとんどいないような気がする。逆に、景観上必要もない周辺環境にもかかわらず稀有を求めた構造形式や外観を採用し、周辺環境に全く馴染まない橋梁となりその説明に行政技術者が苦慮している事例を数多く耳にする。PCエキストラドーズド形式、バタフライウェブを使う複合橋梁形式、長大径間の吊り橋や斜張橋を選定する状況の場合は、デザイン性や特殊な架設環境等を求められることが多く、高度な検討が行えるコンサルタントの出番であるかもしれない。しかし、一般的な市街地や田園地帯に建設されるごく普通の橋梁の場合は、どの形式が経済的であるのか行政側が種々な実績や資料等から考え、基本設計(概略設計)を外注でなく自前で形式を決定し、詳細設計から外注する方式も考えるべきである。よくあることだが、単純桁や擁壁の設計計算法を机上で学ばせ、簡単な構造計算を行わせることがあたかも優秀な技術者育成につながると考えている研修カリキュラムを目にするが、コンサルタントの技術者ではあるまいし意味がない。このような無駄な技術を学ばせる研修機会が若手技術者に必要と考えるよりも、自らの技術力と創造力を養う機会となる形式選定の実践の場を与えることの方が必要でないのかと考える。学生が建築デザインに多くの興味を持ちその分野に進む事例が多いのに比較し、橋梁デザインを手掛ける機会が少ないことから土木分野に進まない現状を変える意味からも、ここらで魅力あるデザインを自らが手がける環境に転換が必要と考えるが如何であろう。  基本設計を行政側が行うことに抵抗感のある方も多いかもしれないが、先に示す二つ目の事例のような場合、ほとんどが決まりきった第一次選定比較案がコンサルタントから示され、考える力のない行政技術者がお決まりの流れで形式決定したことにする。今回事例でも示したような方法で行政技術者側が主となって橋梁形式を考え、ステークホルダーである住民に分かり易く(自分が選定したのであるから、当然責任と自信を持って説明する姿がある)説明ができる環境と決定する仕組みを創るべきである。夢ある若手行政技術者の芽と才能を伸ばす、魅力ある技術者の育成方針への大転換を是非実現してもらいたいものである。(次回は3月1日に掲載予定です)

これでよいのか専門技術者シリーズ ⑨「私見 勝鬨橋再跳開の可能性とその効果」 ⑧点検はこれからが勝負 ⑦PC桁の欠け落ち損傷 ⑥溶接構造の品質保証について ⑤橋と景観 ④独創のコツ、なぜ研修制度は機能しないのか ③「道路メンテナンス会議」は本当に機能し始めたのか ②「道路橋の変状と架け替え」について大きな疑問 -分かってますか?何が問題なのか-①

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